「自衛の意識」を持つということ

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北朝鮮のミサイル発射

代表の尾崎です。皆様の記憶にも強く残っているでしょうし、尾崎自身もびっくりする出来事が発生しました。

2023年4月13日、北朝鮮が日本に向けて弾道ミサイルと思われる飛翔体を発射しました。レーダーで捕捉可能な高度を超えて上昇したこともあり、北海道南西部への着弾可能性もあり得るとしてJアラート(全国瞬時警報システム)が発動、北海道全域で一時避難指示が発表される事態に至りました。

結果的にはミサイルと思われる物体は日本の排他的経済水域に落下し、地上には特段の被害はありませんでした。ただし、今回を含め北朝鮮による核実験・弾道ミサイル等の発射は昨年、今年と急激に増えていることは事実です。

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防衛省が発表する資料からキャプチャ

 

今回結果的には日本の領土への有事は発生しなかったものの、もしミサイルが地上、すなわち日本の領土に着弾していたらどうなっていたのでしょうか?自衛隊の制服組トップ(防衛軍事行動の現場最高司令官)である吉田統合幕僚長は「日本の領土にミサイルが着弾する恐れがあると判断したのは今回が第二次世界大戦後初」という趣旨の発言を行っています。つまり、現在日本にいる大多数の日本人が経験したことがない事態になってもおかしくなかったと言えるでしょう。

 

国と国との直接的な軍事衝突は個人や一企業で対応できる範囲を超越したリスクの一つです。このため戦争/軍事衝突が身近なところで発生しそうな場合、いかに自分自身の身を守る行動が素早くできるか、そしてどのようにして戦争/軍事衝突現場から迅速かつ効率的に避難するかを考えるしかない、というのが我々のスタンス。今回のようなミサイル飛来に対しても、我々ができることはまずなによりもどのように生き残るかを考えるしかないのです。

特に北朝鮮が日本に向けてミサイルを本格的に(日本の陸地をめがけて)発射した場合、発射がが確認されてから日本国内のどこかに着弾するまで約10分程度と言われています。このため、今回一部SNS等で声が上がっていたような

 「北海道のどこに着弾するか、確認してから警報だせよ」

 「地下ってどこだよ」

といった書き込みをしている間にもミサイルは着弾してしまう、ということになりかねません。

今皆さんがお住いの地域や働いている場所で国民保護方針に基づく避難警報が出た場合、どう行動するのか決めておかなければ避難そのものが間に合わないのです。

ミサイル対応だと思うといかんせん経験がないので、どうしていいかわからない、となるかもしれません。イメージしやすいのは例えば日本人の多くがその怖さを実感し、毎年のように訓練を積んでいる地震への対応です。揺れている間はむやみに動かず、机などの下に身を隠して揺れが収まるのを待つ、海岸沿いでは高台に速やかに避難する、等適切な行動を無意識のうちに行える方が多いのではないでしょうか?具体的にミサイルの危険性が感知され警報が出た際にどのように動くべきなのか、は日本政府内閣官房のホームページに詳しく掲載されています。せっかくの機会ですので、ぜひともこちらのページも参考にして身を守るための適切な初動を確認下さい。

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内閣官房国民保護ポータルのトップ画面よりキャプチャ
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国民に戦争や危機に備えるよう呼びかけるスウェーデン

さて、日本だけでなく現在世界各地で他国からの侵略を受けるリスクに危機感をもって対応している国がいくつもあります。二カ国例を挙げて、日本以外の国ではどのような対応を講じているのかをご紹介してみましょう。

 

北欧のスウェーデンでは国民に対し、戦争に備えるためのマニュアルを配布その背景をコラムとして公開しました。冊子は全20ページ程度で2018年には1980年代以降約30年ぶりに改訂され配布されたとのことです。

具体的な脅威として他国から攻撃を受けた場合、すなわち戦争になった場合にいかなる手段をとってでも抵抗するよう記載されているようです。実際にスウェーデンでは、自宅に戦争が起こった際も自宅で生命を維持できるよう食料品を備蓄している家庭が多いことが動画からも推測されます。また、「電気がなくても動くラジオの存在を忘れがちだ」とも書かれており、緊急時の情報収集源を確保し、国民一人一人が危機的状況下で自分の命を守るために行動するべく、呼びかけている様子も伺えますね。

 

さらに、スウェーデン政府はロシアを念頭に置いて、外国からの武力行使がなされた場合も想定し、1960年代に設置された核シェルターの復旧や新設もマニュアルに記載しています。実際に民間企業や個人により核シェルターが設置されたという話は聞いていませんが、核シェルターでさえ、国家だけでなく国民の間の自助努力の一環で作成するという意識があることがうかがえます。

なお、スウェーデン政府作成の冊子は戦争だけではなく、テロを含むその他の「危機」も対象として記載されているようです。一部では不安を無用にあおっているとの声もあるようですが、政府は全480万世帯に配布を完了し、国民にいざという時に備えるよう強く呼び掛けています。

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スイスも古くから同様の取り組みをしている

永世中立国として有名なスイスも国家ではなく、民間人一人一人が自分の身を守るためのマニュアルを配布しています。こちらはスウェーデン政府が作成したパンフレットと比較してもより網羅的かつ詳細であり、300ページを超える内容です。スイス政府が民間向けに配布しているマニュアルは日本語版も出版されており、大変参考になります。

戦争やテロのようなインパクトの強い事例を念頭に、身を守るために備えておけ、と国家が半ば「指示」することに対し、賛否両論あるかもしれません。特に日本では第二次世界大戦時の経験もあり、国家が国民を統制し、戦時体制を維持することへの警戒は強いでしょう。

しかしながら、いざというとき、国家は国民一人一人を具体的に守ることはできない、ということは想像できるはず。生き残るために最後に頼れるのはのは自分自身です。また家族や大切な人を守るために自分なりにベストと思える準備をすることも重要ではないでしょうか?(少なくとも尾崎自身は死ななくて済むのであれば死なないように備えておきたいと考えています)

上で事例として挙げたスウェーデンの場合、ロシアが「仮想敵」として取り上げられています。個人的に戦争をやりたいとはもちろん思っていませんし、当然そういった事態に巻き込まれるのもまっぴらです。しかしながら、日本も北朝鮮や中国等からの攻撃を受けてもおかしくない状況だと認識しており、「万が一」に備えて自分が生き残る確率を高めたい、または家族を守るためにやれることはやっておきたい、という気持ちを強く持っています。

 

海外における安全管理も大前提は「自分の身は自分で守る」です。パスポートに記載されている通り、日本国政府や相手国政府は「本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助を与えられる」ように努力することが求められます。また、実際に海外では大使館や総領事館からも支援を得られるでしょう。

しかしながら、個別具体的な犯罪やテロ、襲撃、暴動等から生き残れるかどうか、は「国が責任を果たせばいいのだ」「誰かが守ってくれる」という意識を捨て、「自分の力だけでもなんとかして生き残る!」という考えを持つことから出発する必要があるのではないか、と思います。スウェーデンやスイスの取り組みから、感じたことをご紹介しました。

この項終わり