実用的な安全対策マニュアルの要件

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世の中に「マニュアル」はたくさんある

家電やIT機器はもちろんのこと、医薬品やポイントカードに至るまで、この世の中には「マニュアル」「取扱説明書」「利用方法説明書」といったものに溢れていますよね。

また、仕事の上では、「業務手順書」「作業マニュアル」、前任者からの「引き継ぎ書」といった文書もよく活用されていると思います。最近話題になっている新型コロナウイルスの対応でも厚生労働省が所管する研究所の「病原体検出マニュアル」が日々更新されています。

さて、では皆さんにお伺いしますが、こうしたマニュアルや説明書を丁寧に読んでおられる方はどのくらいいらっしゃるでしょうか?

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パソコンなどの取扱説明書の場合、付属品の確認あたりでギブアップする方が多いのでは・・・

前者の各種道具、機器、医薬品などの説明書はそもそも一行も読まずに捨てています、という人もいるのではないでしょうか?かくいう私どもも人のことを言えた義理ではありませんが。弊社が購入した家電やパソコン等の取扱説明書や保証書はとりあえず一か所に保管しているだけで、じっくり読んでいることは稀です。

後者の仕事関係のマニュアルはさすがに見向きもされずに捨てられることはないと思います。それでも、

 業務が忙しくて熟読している暇がない、

 わからなければ誰かに聞けばいいから読まなくていいや、

 時間短縮のために一部マニュアルの記載を無視しよう、

 緊急時マニュアルはいざ使いたいときに広げている暇がない

 

といった事実上マニュアルが機能しない、という事態はどの職場にもあり得るのではないでしょうか?大半の業務はそれでもなんとか処理できるのかもしれませんが、最悪の場合人の命がかかってくる安全対策の場合、「読まれないマニュアル」はいくらなんでも好ましくありません。

 

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読まれないマニュアル、使えないマニュアルは無意味

海外で活動されている御社内あるいは組織内に「安全対策マニュアル」が既に存在しているという場合はそれだけでも安全対策がある程度整っていると言えます。安全対策マニュアルや緊急事態対応手順書などがないにもかかわらず海外で組織的に活動するのは、あまりにも準備が足りていないと言えるでしょう。(とはいえ、準備が足りていない組織のほうが多いかもしれない、という実感を持っていますが)

では、せっかく作った「安全対策マニュアル」が世の中に溢れているマニュアルや取扱説明書と似たような扱いーほとんど読まれないまま放置されているーケースはないでしょうか?せっかく「マニュアル」が存在していても、読まれないマニュアル、使えないマニュアルは存在しないのと同じではありませんか?

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パキスタン北部の村で決まり事を大勢の村民が確認し合う会議の様子。決まり事は関係者全員が認識して初めて意味がある

 

こうした存在しているだけの「安全対策マニュアル」になりがちなのは次のようなものです。一部「こんなマニュアルは嫌だ!」のようになっていますが、実例もありますので、ぜひご参考になさって下さい。

 

・マニュアル作成部署が安全対策マニュアルの存在を公開していない

・マニュアル作成部署が安全対策マニュアルの存在を告知していない

・マニュアル作成部署がマニュアルの最初の完成後リバイズをしていない

・安全対策マニュアルが大作すぎて一度読むだけで数日かかる

・安全対策マニュアルが分厚すぎて、今発生している緊急事態の場合どこを見ればいいかわからない

・安全対策マニュアルが更新されておらず、退職済みの人や廃止されたポストが連絡責任者になっている

・安全対策マニュアルが漠然としすぎていて、誰がいつ、具体的に何をするのか読み取れない

 

もし、皆さんの作成されたもしくは、手元に配られた「安全対策マニュアル」が上記のような要素を含んでいるのであれば、それは使えないマニュアルかもしれません。

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実用的な安全対策マニュアルの要素

ここまで「安全対策マニュアル」あるあるをご紹介しました。

海外での安全対策の第一歩目として「安全対策マニュアル」を作りましょう!というのはよくある話。でもそのマニュアルを読まれないマニュアル、使えないマニュアルにしないこと、これが望ましい安全対策の第一歩です。安全対策マニュアルはあるけれども、埃をかぶってどこかにあります、では全く役に立たないのは言うまでもありません。

では、望ましい安全対策に必要な実用的な安全対策マニュアルはどのような要素を備えているべきでしょうか?その答えは思いのほか簡単。これまで挙げてきたを一つ一つ裏返していけばよいのです。

 

・マニュアル作成部署は安全対策マニュアルの存在を公開する

・マニュアル作成部署は安全対策マニュアルの存在を繰り返し周知し、マニュアルに基づく訓練も行う

・一般の関係者が使う安全対策マニュアルはシンプルに作成する

(安全対策やメディア対応を担う部門のマニュアルは別に設ける)

・一般の関係者が使う安全対策マニュアルは想定されるケース毎に対応を明記する

・安全対策マニュアルは(理想的には訓練を踏まえて)定期的に更新する

・安全対策マニュアルの記載は個人名を特定し、どのタイミングで具体的に何をするか記載する

 

上記の要件を満たしていないマニュアルは作り手だけが理解できるマニュアル、作ることそのものが目的になってしまったマニュアルと言えるかもしれません。読まれないマニュアルにしないために、読まざるを得ないマニュアルを作る。そして、読んだ以上はいざという時に、参照しやすく使い勝手の良いマニュアルになるよう関係者全員が関与する。これが本当の意味での実用的な安全対策マニュアルの要素ではないかと考えています。

 

【参考コラム】「マニュアル、業務手順書はなぜ無視されるのか」

 

 この項終わり