安全対策マニュアルに記載すべき項目

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実用的な安全対策マニュアルは「既製品」ではない

前回実用的な安全対策マニュアルの要素をお伝えしました。今回のコラムでは具体的に各企業や組織で安全対策マニュアルを作成される際、含めるとよい項目をご説明したいと思います。

 

「そうそう、能書きはいいので、何を書けばいいのか教えて」

「よくあるマニュアルなのだからテンプレートがあるはずでしょ」

「個別の連絡先や責任者名などここだけ埋めればOKというデータが欲しい」

 

といったご希望をお持ちの方もおられるので、このコラムは期待が大きいかもしれません。ただし、形式的に安全対策マニュアルを作りたいというのであればともかく、実用的な安全対策マニュアルを作成されるのであれば、一部だけを書き換えればOKです、というわけにはいきません。

繰り返しになるのですが、作ったはよいけれど、読まれない、使われない(使えない)安全対策マニュアルは意味がありません。読まれない、使われないマニュアルパターンでもう一つよくあるのは全ての要素を詰め込みすぎて、超大作になりすぎてしまうこと。広辞苑のようなマニュアルを緊急事態の際に読み解くことも実用的ではありませんよね。

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マニュアルはある。がどこに何が書いてあるかは別の話…では困ります

 

緊急事態の安全対策マニュアルは文字通り「危機」の際に使うのですから、関係する誰もが必要な時に必要な情報を得られるように作成しておく必要があります。つまり各企業もしくは組織が海外で行う活動実態を踏まえ、現地で活躍される方が使いやすいマニュアルを作ることが理想なのです。そういったマニュアルを作るためには、「既製服」を買って名前だけ付け足すようなやり方ではなく、現場の実態を反映した「オーダーメイド」のマニュアルが必要となるのです。

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自分たちで作り、修正するからこそ実用性が高まる

もちろん、服がそうであるように、安全対策マニュアルについても「既製品」に近いひな形を提供することは可能です。ただ、当社の経験に基づけば、そういったひな形を基にした安全対策マニュアルは使われづらい、形だけのマニュアルになりがちです。前回お伝えしたように、この世の中で準備されたマニュアルや取り扱い説明書の一部はあまり使われることなく眠っています。が、自社の従業員/関係者の命を守るマニュアルがそうであってはいけません。

そのため、当社ではそういった

 

「安全対策マニュアルは存在します(使えるかどうかはさておき。。。)」

 

と言うためのマニュアル作成支援は行っておりません。誰かが用意した「既製服」のような安全対策マニュアルではなく、実際に海外で危険な目に遭う可能性のある方々の行動を踏まえ、また現場の方が使いやすいように工夫された「オーダーメイド」安全対策マニュアルこそが実用的な安全対策マニュアルだと考えているからです。そして、もし既存のマニュアルが実態と乖離しているのであればその修正も必要不可欠です。

もし「既製服」のような安全対策マニュアルを用意した場合、どうなるでしょうか?当社にご相談をいただいた方のいくつかのお話を簡単にご紹介するとこんなことが起こります。

 

・テンプレートで記載されている内容がそもそも自社の海外活動実態と違っていた

・マニュアルを作成してから数年間誰も読まずにキャビネの奥に眠っていた

・いざ緊急時が発生した時に見ると緊急連絡先の方は退職していた

・緊急時にマニュアルを広げたが、よくわからなかったので数年前に似たような事例を対応した社内の先輩に聞きながら対応した

 

おわかりでしょうか?自分たちで作る、もしくは修正するというプロセスを飛ばしてしまった場合たとえ「安全対策マニュアル」が存在していたとしても、そのマニュアルは実用的ではありません。つまり、せっかく導入した安全対策も機能しないのです。このコラムでは詳しく触れませんが、もしこういった状況を企業や組織が放置したまま、海外に関係者を派遣し続けていた場合「安全配慮義務」を十分に満たしていなかったと評価されてしまう可能性もありますね。

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当社が考える「安全配慮義務」を満たすための要素。形だけマニュアルがあっても「運用できる体制」になっていなければ不十分
海外安全セミナー

安全対策マニュアルに記載すべき項目

長々と能書きを記載してきました。

このページでは実用的な安全対策マニュアルを作るために必要な情報を羅列していきます。以下に並べた項目を記載すれば安全対策マニュアルとしては形は整います。ただし、それだけでは実用的なものになりませんのであしからず。

 

・緊急時の連絡先

・企業/組織の海外における安全対策に関する基本的考え方

・当該国の治安情勢(日本政府外務省や他国政府アドバイザリー等)

・住居やオフィスの安全対策(選定基準)

・日常生活、行動上の注意事項

・テロや犯罪、交通事故被害に遭った際の対応

・緊急時の対応原則

・自宅やオフィスで待機する際の決まり事

・国外に退避する際の決まり事

・緊急時の国内対応体制

・過去の緊急事態対応事例、犯罪や交通事故被害事例

・マニュアルに記載のない事態が発生した際の対応方法

(今回の新型コロナウイルス対策など、人類の誰もが想像しなかった事態への対応が必要になることもあります。この場合は判断主体、連絡方法等を決めておくことになります)

 

この他にも緊急事態が発生し大きな被害を受けてしまった際に、外部にどうやって発表するか、日本国政府(特に外務省)との関係はどうなるのか、等まで準備しておくことも可能です。上記を参考にしつつ、皆さんの所属する企業/団体/法人の実態に即した「オーダーメイド」に取り組んでいただければ嬉しく思います。

もし、「オーダーメイド」作業の中で疑問が浮かんだり、プロフェッショナルの視点でアドバイスが必要であれば遠慮なくコチラからお問い合わせをいただければ幸いです。

 

この項終わり