待ち伏せ攻撃/強盗被害を防ぐために

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待ち伏せ攻撃/強盗に遭ったら逃げる術はない

2023年に入って、日本人が海外で強盗被害に遭う事例が相次いでいます。特に9月は国を問わずあちこちで日本人が鞄やスマートフォンを強奪される事案が相次いでおり、中には意識不明の重体に至るほど暴行を受けた事例もありました。加えて今年6月には世界全体から見ればかなり治安がいいとされるルクセンブルクでも日本人の強盗被害が報告されています。

日本人が被害に遭ったという報告がない国でも例えばフィンランドでは首都ヘルシンキ市内で例年をはるかに超えるペースで強盗事案が発生しているとの報告もあります。

 

強盗犯のパターンは大まかに分類して1)手っ取り早く隙のある人の金品を奪って逃げる、2)富裕層や企業の現金輸送等に標的を定め効率よく稼ぐ、の二パターンがあります。1)は犯人ですら思い付きで犯罪を実行していますのでその予兆として定まったルールはあまりありません。強いて言うなら「隙のある」人が沢山いる場所で起こりやすい強盗犯罪と言えるでしょう。他方、2)については周辺のコミュニティで平均以上にお金を持っている人、あるいは普段よりも多く現金があるタイミングを狙って準備をしますので犯行手法や犯罪発生前の予兆には一定のパターンがあります。

 

少し古い事件ですが印象的な事案を取り上げたいと思います。2019年2月7日、中米のベリーズでレストランを経営する日本人の親子が自宅付近で銃撃され死傷しました。本事件について各種報道によると銃を持った二人組の犯人が親子を自宅付近で待ち伏せし、強盗に及んだとのこと。事前に下見をした上で、武器を準備し、日本人親子だけを狙って強盗を実行した模様です。

ベリーズは中南米諸国の中では比較的安全な国とされており、この事件が起きるまで日本政府外務省の危険情報は設定がありませんでした。(「レベル1:十分気を付けてください」よりも安全との評価)この事件以後、首都ベリーズシティは危険情報がレベル1に引き上げられましたがそれでも世界全体から見れば想定的に安全度が高い国と言えます。(現在の日・米・英・豪4か国の治安情報はこちらでまとめています

 

一般犯罪や銃を用いた強盗はそれなりに発生しているとは言え、日本人が直接標的となった事件がなかっただけに、驚きすら覚えます。この事件では不幸にして父親を守ろうとした息子さんが銃撃を受け死亡し、父親も意識不明の重体のままとのこと。大変に残念な事件です。なんとかこの惨事を防げなかったのか、当HPでもいろいろと考えてみたのですが、実行犯側に十分下調べされた上で、用意周到に待ち伏せされてしまうとそれ以上襲撃や強盗被害を防ぐ方法はないのではない、という結論に達しました。

 

ビジネスの場面で考えてみましょう。

プレゼンテーション前日に突然参加が決まったコンペでいきなり結果が出せるでしょうか?もし、一か月前から十分に準備されたプレゼンを用意してきた競合企業がいれば、なす術なく敗れてしまってもさすがに致し方ないでしょう。この場合、「プレゼンテーションの前日に参加する」という状況に陥ってしまった時点で負けがほぼ決まっています。よほど突出した技術力があるか、もしくは競合企業の準備が不十分でない限り、プレゼン当日だけで大逆転することは不可能と言っても過言ではありません。

 

同じように襲撃や強盗被害も「相手側が十分準備をし、待ち伏せする」というシチュエーションになってしまった場合、被害を防ぐ方法はほぼないのです。

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待ち伏せ攻撃を防ぐ=行動を読まれないリスク管理

待ち伏せをされてしまった場合、その準備度合いを考えれば、実行犯側に分があるのは明白であることをご説明しました。つまり待ち伏せされて襲撃や強盗をされた場合その時点から被害を回避することはほぼ不可能です。

 

そのため、待ち伏せ襲撃/強盗による被害を回避する唯一の方法は待ち伏せ攻撃を受けないよう工夫すること。

 

え、そんなことできますか?

 

とお感じになるかたもおられるでしょうか。100%待ち伏せを防げる保証はありませんが、それでもかなりの確率で狙われにくくなる方法はあります。それは行動パターンを読まれないようにすること。

待ち伏せは文字通り、標的の行動を先読みし、標的がやってきたところで襲撃/強盗を実行する行為。そのため、標的の行動が読めない場合や標的がそもそも待ち伏せ地点に来なかった場合は犯罪が実行できません。

 

もし、同じくらいの金銭を持っているであろう二人がいたとしましょう。

 

・行動パターンが常に一定で高精度で行動が予測できる

・行動パターンが不規則で予測困難

 

の違いがあるとすれば、犯人は確実に前者を狙うでしょう。なぜなら待ち伏せのための準備が容易だからです。そして、いざ実行のタイミングで逃走車両を長く駐車する必要もなく、武器を持って不用意に出歩く必要もありません。つまり、前者は周辺住民に通報されたり、治安当局の取り調べリスクを極小化して、成功確率の高い待ち伏せ犯罪が可能な標的と言えるのです。

 

待ち伏せ攻撃を受けないためには、待ち伏せされない行動の工夫が必要不可欠なのです。

待ち伏せ襲撃/強盗に直面した際の対応訓練も実施可能だが・・・。こうした状況にならないよう行動を工夫することが大事
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移動ルートを先読みされない工夫

待ち伏せ襲撃/強盗被害に遭わないためには待ち伏せされないような行動の工夫が必要であることをご説明しました。でも、待ち伏せされない行動の工夫、行動パターンが読まれない工夫とは具体的にどういうことでしょうか?

 

 

まず工夫できるのは、移動ルートを複数設定することです。海外に展開されている皆様の目的地には、よほどの農村地帯でない限り、少なくとも二つかそれ以上のルートで到達できるようになっているはず。特に首都であれば途上国と言えど、通過する道路を替えながら職場や自宅に迎えるのではないかと思います。

 

 

通過するルートが読めないということは待ち伏せしづらいということ。たとえ皆さんが襲撃や強盗の標的候補に挙がったとしても、行動パターンが読みづらいということがわかれば前頁で説明した通り、標的から外れる可能性が高まります。

 

加えて、日本と違って

 

 「〇日に××に行くんです」

 

という移動情報を不用意に公の場で発言しないことも重要ですね。出勤や帰宅のルートには気を使っていても、めったに行かない場所に行くという情報があると、実行犯グループはこの機会を使えないか、と考える傾向にあります。

 

移動ルートを固定しない、移動情報を公開しない、この二つを工夫するだけでも、行動パターンはかなり読みづらくなります。そして行動パターンが読めないということは・・・、そう待ち伏せ襲撃/強盗被害に遭いづらい、ということです。

出勤、帰宅の際最低二つのルートを設定することが行動を読まれないための第一歩

 

【参考コラム】(時間調整)×(ルート変更)で移動時の安全度を高める

この項終わり