「戦争」とテロは別物

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二国間関係が緊張すると・・・

代表の尾崎です。

 

先週世界で大きく報道されたニュースの中に、二国間関係の緊張に関連するものが二つありました。

一つはインドとパキスタンの緊張の高まり。もう一つはアメリカトランプ大統領と北朝鮮金正恩総書記の交渉決裂です。いずれも核兵器を用いた攻撃が可能と思われる国同士の対立につながりかねない出来事でした。

 

特に前者、インドとパキスタンの間ではインド側がパキスタンが実効支配する領域で爆発物を投下したり、パキスタン側がインドの戦闘機を撃墜し、一時的にインド軍パイロットを拘束したり、といった状況にもなりました。大々的な「戦争」とは言えないものの、局所的な「戦争」があったと表現しても言い過ぎではなかったのかもしれません。

 

パキスタン側は首相からインド側に対話を呼びかけたほか、一時拘束したインド軍パイロットを解放するなど徐々に関係改善の兆しもうかがえます。インド側からのさらなる戦闘機の侵入に備えてパキスタン国内を発着する航空便が約4日間にわたり全面的に運航停止していましたが、こちらも運航が再開されています。

EURO NEWSで公開されている地元TV局の放送キャプチャ

 

米朝首脳会談の決裂も一瞬、

 

「本当に大丈夫なのか??」

 

と感じましたが、その後現時点ではミサイル発射や核実験等「戦争」の危機に近づくような状況にはなっていません。今後どのような展開になるかはわかりませんが、当面多くの人が命の危険にさらされる状況は避けられたのではないでしょうか?

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国家と国家の武力衝突はテロではない

このホームページでは日本人が海外で直面しうる様々なリスクを取り上げてきています。取り上げてきたリスクすべてではないかもしれませんが、以下のようなリスクについてはその存在と対応策について明記してきたと思います。

 

 テロ

 強盗

 誘拐

 スリや置き引き

 交通事故

 自然災害

 

ただし、あえてこれまで触れてこなかったリスクが一つ。それは二つあるいはそれ以上の国家が武力を用いる状態、すなわち「戦争」です。なぜ「戦争」をリスクとして取り上げてこなかったかというと、「戦争」は国家安全保障の問題だからです。テロでも多くの一般人が死傷することがあり、こうした事態は避けなければなりませんが、ゲリラ戦術を用いる過激派武装勢力のロジックと国家間の「戦争」のロジックは全く別もの。使われる武器も手製の爆弾やライフル銃、拳銃などとは比較にならないミサイルや高性能爆弾です。

 

 

世界中の内戦や隣国との局所的な戦闘行為による被害を各種報道で見ていても、普段私尾崎がチェックしているテロや凶悪犯罪等とはレベルの違う絶望が漂っていることを痛感させられます。幸いにして日本では第二次世界対戦以後約75年間も「戦争」を経験せずにすみました。インドとパキスタンによる「戦争」も、アメリカと北朝鮮の間の「戦争」も尾崎がなんとかできる問題ではありませんが、とにかく最悪の事態に至らないことを祈るばかりです。

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テロから身を守る手段も「戦争」では無効

 

それでも万が一「戦争」が起こってしまったらどうなるのでしょうか?

 

正直に申し上げて「戦争」に巻き込まれてしまった場合、これまでお伝えしてきたテロからご自身の身を守る手段はあまり有効とは言えません。なぜならテロの場合、武装した過激派の勢力は多くても十数名であり、時間が経てば治安当局がなんとかして制圧することができるもの。過去お伝えした緊急事態の三原則である「RUN、HIDE、FIGHT」で時間を稼いでいれば、そのうち治安当局が救出してくれる可能性があるのです。

他方で、「戦争」の場合助けに来てくれる誰かはいないかもしれません。想像してみてください。敵国からミサイルが撃ち込まれている状況下で、もしくは敵国の戦闘機に空爆されている間、警察や自衛隊が皆さんを助けられる状態でしょうか?

 

もう一つ、テロと「戦争」の大きな違いは事前に正確な攻撃情報を得ることの難しさ。テロの場合、どんなに厳重に情報管理を行ったとしても、ゲリラ戦術をとる武装過激派組織の動きは、さまざまなルートで漏れてしまうもの。テロを実行する側のヒト・モノ・カネ・情報の動きを完全に秘匿することはほぼ不可能です。(だからこそ、ある程度のレベルまではテロの発生が予測できますし、テロに巻き込まれない工夫もできます)

これに対して、「戦争」は外交の延長線上で、議論による交渉が破綻した際に発生します。外交交渉の正確な情報がタイムリーに漏れてくることはないと言っても過言ではありません。万が一漏れているのだとしたら、それは一方の政府の意図的なリークもしくは、虚偽の情報の可能性が高いでしょう。つまり、「戦争」状態では相手国がいつ、どこで、どのような攻撃を仕掛けてくるのか、テロに比べて極めて予測しづらいのです。

 

ここまで書いてきた通り、「戦争」とテロは全く別次元の現象です。そして、テロからは身を守る方法があるといえますが、「戦争」ではその身の守り方はほぼ無意味です。ですので、万が一皆さんが海外で「戦争」に巻き込まれてしまった場合にはいち早くその場を離れるが唯一の選択肢。できれば「戦争」状態が深刻になる前にその国・地域を脱出するように心がけてください。

 

 

最後にyoutubeに存在する古い動画をご紹介します。第二次世界大戦以降、日本人が「戦争」に巻き込まれたケースがどのように推移したのか、貴重な資料です。

 

この項終わり