開発途上国で選挙が行われる際の対応(後編)

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投票日前後、結果発表前後は一時帰国も要検討

選挙に向けての混乱度合いがある程度イメージできましたでしょうか?

 

では、最後に具体的にどのような対策を講じることができるか考えていきましょう。選挙関連の脅威は外国人を標的としたり、日本人/日本企業を狙い撃ちにするようなものではありません。つまり、日本人の皆さんは、選挙に伴う混乱や、テロ・襲撃等に巻き込まれないことが最大の対策になるということを理解してください。

そのための代表的な安全対策項目を列記しておきます。

(1)移動制限に関連する対策項目

・政治活動(集会、投票所)には近づかないよう移動制限をかける

・投票日前後数日間は拠点での勤務は取りやめ、自宅待機とする

・混乱の収拾にめどがつかなくなりそうな場合に備え緊急一時帰国の準備を進める

巻き込まれ被害を防止するには、リスクのありそうな時間帯や場所に関係者を立ち寄らせないことが最重要ポイントです。いかに地元に根付いて活動している企業・団体でも日本人が現地で選挙活動する必要性はまずありません。ですので、脅威が高まり始めた後は「政治活動(集会、投票所)には一切近づかない!」を原則とすることをおススメします。

 

また、現地での混乱が拡大し、空港や港、隣国への道路が通行できなくなっては逃げることもできません。本当に混乱が拡大しそうな場合は、現地の日本大使館や日本人会の関係者とも連携して一時的な国外への退避、つまり緊急一時帰国も想定しておくことがおすすめです。この場合はパスポートや最低限の現金、着替え、食料を一つの鞄に入れて準備しておくと便利です。

 

なお、ここでご注意いただきたいのは、日本とは違い、選挙結果が判明した後に混乱がどんどん広がってしまう、というケースがあることです。結果発表後に与野党が批判の応酬を行い、支持者同士も衝突、広範囲な交通規制や場合によっては民族間の大規模暴動に発展するケースもあります(参考⇒ケニア危機(2007~08年))。投票が終わればOK、ではなく、完全に事態が鎮静化した後に移動制限の解除、緊急一時帰国への備えを解除するようおススメします。

 

(2)混乱が収まるまで自宅や拠点で乗り切るための対策項目

・混乱が拡大した場合に備え、自宅および拠点に飲食物、生活必需品を一週間分程度買いだめする

・携帯電話とインターネット通話アプリ、衛星携帯電話等複数の連絡手段を確保する

・タイミングを見計らって移動するためのガソリンを自宅・拠点車両に満タンにしておく

 

一時帰国までの対応を取らない場合でも、市内の路上で混乱が続き移動が危険な場合、(標的となっていない)自宅や事務所等拠点内で事態の収拾を待つというケースが考えられます。その場合は上記のような対応を取っておくと、不必要に買い出しをせずにすみます。

 

あくまで大規模災害に備えた備蓄の事例ですが、首相官邸のHP記載内容もご参考まで紹介しておきます。想定している事態に違いはありますが、自宅で引きこもって生活するという点では途上国選挙に伴う混乱も同じです。

大規模災害発生時家庭での備え(首相官邸HPより)

 

 

なお、本コラムの内容はあくまで選挙を迎える途上国に滞在している日本人を想定して記載しています。現地で雇用されている方の選挙活動や投票を禁止することはオススメできません。現地の方がそれぞれの考えで政治に参加することは民主主義の根幹ですので、企業・団体としては安全には十分注意してもらいつつ、業務以外で被害を被った場合の責任所在を明確にしておく、という対応が一般的です。