海外での安全配慮義務を履行するために(前編)

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海外での安全配慮義務を満たせるか?

日本での安全配慮義務は多くの皆さんもご存じと思います。

では、海外に進出した企業/団体も同じような対策を講じていれば安全配慮義務を履行していたと言えるでしょうか?

 

先ほどのページでご紹介した日本国内での安全配慮義務違反の辞令を大雑把に分類すれば2つのパターンとしてしまってもよいかもしれません。

 

 1)工場や建築現場など物理的な危険が予見されているにも関わらず、安全対策を怠った場合

 2)オフィスワークなど物理的な危険がなくても長時間労働や嫌がらせなどによる悪影響が顕在化した場合

 

世界的にみても治安が比較的安定しており、一般的な衛生状態も良好、かつ大規模な政治集会や反政府デモがほとんど発生しない日本では上記二つの対応が最優先でしょう。では、海外進出先に関係者を派遣する際も同じ対応でよいのでしょうか?そう、海外ではこれ以外にも想定しうるリスクがありますので、日本国内と同じ対応ではマズいのです。

 

海外に特有のリスクとは例えば

 

 ・テロや襲撃

 ・誘拐(身代金や政治的な目的等)

 ・銃器を用いた凶悪犯罪

 ・(日本では一般的ではない)感染症

 ・大規模な政治集会等による生活用品不足、移動不能

 ・現地特有の法規による関係者の拘束

 ・異なる生活、文化環境への不適応

 

などが挙げられます。

 

ホテル入り口では厳重な警備体制が当然とされる国もある

 

企業/団体が日本国内でこうしたリスクに備えていなかったとしても、安全配慮義務違反とまでは言えないのではないでしょうか?それは、日本国内でこうしたリスクが一般的ではなく、「想定外だった」「やむを得なかった」とされてしまうためです。

 

極端ではありますが、イメージしやすい比喩を。

室内で働く人に対して、「定期的に水分を取りましょう」、「定期的に日陰で休憩してください」と呼び掛けていなかったからと言って体調不良に対する安全配慮義務に問われることはまずないと思われます。他方で、炎天下の屋外で働く人に対してこうした呼びかけをしなければ安全配慮義務に問われるかもしれません。

 

日本と、海外のリスク環境は全く違います。日本政府外務省はもちろんのこと、各種ニュース等で各地のリスクは紹介されていますよね。労働環境が全く違う以上雇用主である企業/団体が信義則上講じておかなければならない対応策も全く異なる、そのため日本国内とは求められる安全配慮は異なる、と判断される可能性は極めて高い、ということは想像していただけるのではないでしょうか?

 

 

【次ページでは・・・海外での安全配慮義務を満たすための具体的な取り組み項目をご説明します】