「グローバル人材」の条件とは?
当サイトで改めて言及するまでもなく、日本の人口は当面の間減少傾向が確実です。新型コロナウイルス感染症による行動制限等の影響もあったのでしょうか?2021年の合計特殊出生率は過去4番目に低い1.30、出生数は過去最低であったと報じられています。次の世代を担う子どもがあまり生まれていない、という事実は今すぐ大きな問題が起こることを意味しません。むしろ少し先の未来、20-50年のスパンで日本社会に大きな影響を与えることが確定的になっているという点でより根深い問題と言えるでしょう。
最近ではテスラやスペースXの経営者として、またTwitterの買収候補者として名前が知られているイーロン・マスク氏も「当たり前のことをあえて言うが、死亡率よりも出生率が低い状態が続くなら日本はいずれ存在しなくなる」として日本の人口問題を指摘したことは複数の日本語メディアでも取り上げられていました。
At risk of stating the obvious, unless something changes to cause the birth rate to exceed the death rate, Japan will eventually cease to exist. This would be a great loss for the world.
— Elon Musk (@elonmusk) May 7, 2022
当面の間、日本人の人口が減少し続けることはほぼ確実です。そしてこの流れ自体は一人の努力、あるいは一企業/団体の行動変革だけでは変えることは難しいでしょう。よほどの政策変更や制度改善がなければ日本国内で暮らす人口がどんどん減っていくわけですから、1950年以降2010年頃まで続いてきたビジネスのやり方は通用しません。必然的にマーケット拡大のためには海外に進出していく必要があると感じています。
当然のことながら海外で事業展開を行うには海外で活躍できる人材が必要です。既に海外で事業を行っている企業・団体はもちろんのこと、生き残りをかけてこれから海外に進出しようとしている企業も海外で活躍できる人材はのどから手が出るほど欲しいに違いありません。では、どうすればそのような人材になれるのでしょうか?どんな能力、個性を磨けば海外で活躍できる人材として多くの企業・団体から必要とされるのでしょうか?そして、どうすれば新型コロナウイルスやロシア・ウクライナ問題等不安定な世の中でも仕事をし続けられるのでしょうか?
一つの参考資料をご紹介しましょう。日本政府文部科学省の「グローバル人材育成について」という資料をはじめとして国際的に活躍されている方のご意見などを踏まえてまとめられた「グローバル人材」に必要な能力というのはコチラです。
10年前の2011年に発表された報告書ということで少し古いかもしれません。ただ、今後日本企業が生き残っていくためには海外での事業展開を成功に導けるような人材を育てていかなければならないこと、また個人としても上記に挙げられている能力は最低限身に着けておきたいと言えるのではないでしょうか?
活躍の舞台となる世界は広い
世界を舞台に活躍できる方が増えてほしい、という思いは我々も同じです。ただし、「国際的に活躍できる人材」「グローバル人材」といった短い言葉とは裏腹にそのカバーする範囲は非常に広いというのが率直な思いです。当然のことながら日本ではまず経験しないようなトラブルや文化的な違い、あるいは思ってもいないようなリスクに見舞われるのが広い世界を舞台にした業務なのです。
ここでは詳しく述べませんが、海外に駐在し、日々厳しい現状・制約に直面する方と日本国内で生活し、日本の現状を前提に指示する本社との間に意識の乖離が広がることもよくあります。大手の人事サイトにも「OKY=お前、ここに来て、やってみろ」という言葉が解説されているのはなかなか興味深い現象ですよね。
こうしたことを踏まえ、外務省と並び最も多くの国で業務を行っている組織の一つであろうJICA(国際協力機構)での経験を持つ代表を筆頭に海外で実際のビジネスに携わってきた弊社メンバーの経験上海外で活躍できる人材に必要な能力は例えば以下のような項目だと感じています。
語学力・コミュニケーション能力
異文化に対する理解・適応力
日本人としてのアイデンティティ
主体性・積極性
協調性
柔軟性
責任感・使命感
宗教や民族、文化、歴史等の幅広い教養
深い専門性
知識・ノウハウの言語化能力
課題発見・解決能力
チームワークとリーダーシップ
(仮説に基づく)決断力
現地に溶け込み、そして生き残るための適応力
自身の活動を継続させることができるリスク管理力
先ほどご紹介した「グローバル人材育成推進会議」の資料を基に、2020年参議院の常任委員会調査室・特別調査室が改めてグローバル人材の構成要素として整理した図がこちらです。我々の経験知から導き出した能力はこれよりも少し幅が広くなっていますね。人材開発や就職活動のノウハウといった分野は我々の専門ではありません。文部科学省や経済産業省が中心になって有識者の意見をとりまとめた報告書にケチをつけるつもりはありません。しかしながら、本当の意味で国際的に活躍できるためには、以下のような3項目では収まらないように思うのです。
特に弊社が重要だと思うのは、生活するだけでも難しい異国で、業務を継続し続けられる心身のタフさ、生き残るための能力です。語学力や責任感・使命感、チャレンジ精神、その上で異文化への理解力や日本への造詣の深さがあったとしても、現地で心身のバランスを崩してしまってはそうした能力を活かすことができないと考えるからです。
個人レベルでも、不用意に犯罪やテロ・襲撃に巻き込まれてしまい志半ばで業務をやめなければならないのは非常に不本意でしょう。また、精神的に参ってしまって業務が継続できなくなってしまう、というのも同じです。一人一人の人生を考えれば、場合によっては仕事ができなくなること以上に深刻な影響が残る可能性もありますね。
語学力やチャレンジ精神を筆頭とする諸々の能力を発揮する期間はごく短期ではありません。前例がなく、また日本と比べれば思うに任せないことが多い環境下での仕事ですから、腰を据えて取り組み続ける必要があります。国際的に活躍したい、と考える方は是非長期間、安定的に能力を発揮するために自らの心身を守る能力を大前提として身に着けていただきたいと考えます。
個人を雇用して海外に派遣する企業・団体から見てみるとどうでしょうか?実際に心身に影響が出てしまった社員/関係者のケアはもちろんのこと、代替人員の手配や着任までの間の業務代行体制構築など、業務面でも大きな影響がでますよね。また、経営者にとってさらに大きなダメージになるのは
「海外に人を派遣するのに安全配慮義務も満たせていないし、バックアップもない。ブラック企業だな」
と言った企業・団体のレピュテーション(評判)に傷がつくことでしょうか?今の時代過重労働やセクハラ・パワハラといった「ブラック企業」の噂が広がってしまうと人材採用もままなりません。まして、日本国内だけでなく、海外でも活躍できるような人材はより待遇・労働環境のいいところを選びやすいハズ。日本政府文部科学省が中心になってまとめた「グローバル人材」の要素を持っている人に長く、働き続けてもらおうとすれば自ずとそうした人物を企業・団体として守る必要があります。そして上記に掲げるような能力をお持ちの方はより安全配慮義務を順守し、皆さんの心身の安全を守ることをないがしろにしない企業・団体でご活躍いただきたいと思います。
国際的に活躍したい方向けのジョブイベント
もし、皆さんが国際的に活躍できる人材になりたいとお考えならば・・・。
また、国際的に活躍できる人材になるために必要な能力を実体験から学びたいと感じておられるなら・・・。
より、日本人として生活の適応が難しい開発途上国で日々仕事をされている方々との接点を持ってみてはいかがでしょうか?いわゆる「就職活動サイト」「人材マッチングイベント」ではそうした方と直接お話できることは稀だと思います。例えば国連関係の機関、世界銀行やアフリカ開発銀行、国際協力機構と言った日ごろから開発途上国や紛争地での活動も行っている企業・団体でお仕事をされている方と対話できる機会はそう多くないのではないでしょうか?そうした方は海外で自分の身を守れるのは当たり前、その上で異文化での暮らしを楽しみながら、多様な価値観を持つ上司・同僚・部下と困難なミッションに挑んできた人たちです。
どのようにして厳しい環境下で心身の健康を保っているのか?
どのように様々なリスクに対処しているのか?
その上でどうやって業務に必要な能力を磨いてきたのか?
日々の暮らしですら厳しそうな国・地域でやりがいを感じられる瞬間はどんな時だろうか?
などなどを率直に質問できる機会があれば皆さんにとって具体的に目標に近づくイベントとなるのではないかと思います。もし読者の皆様の中に国際的に活躍できる人材になりたい、グローバル人材を目指したい、という方がいらっしゃれば、例えば「国際協力キャリアフェア」といったやや特殊なマッチングイベントを活用してみてはどうでしょうか?
既にご説明した通り、日本国内の業務ではあまり求められない=日本国内ではあまり出会えない「その国・地域で生き残る能力」を身に着けた方に出会えるチャンスです。テレビCMなども行っている大手就職情報提供企業と比べればあまり知られていないイベントかもしれませんが、その分本当に貴重な機会になっていると感じています。
なお、最近は開発途上国での青年海外協力隊経験や活動経験を自社の海外事業展開で活かして欲しい!という民間企業も増えてきています。国際協力キャリアフェアに集まる方々は一般のジョブフェア等に比べて途上国経験の多い個人の方が集まる傾向にあります。もし、海外事業展開を目指すべく、開発途上国でも生き残れる能力のある方を中心に採用したい、とお考えの企業・団体の方は主催社、関連団体をご紹介しますのでお気軽にお問合せ下さい(ご紹介だけであれば特段の費用は頂きません)。
この項終わり