(トップ画像は危機管理産業展公式ホームページより)
危機管理産業展(RISCON)について
お久しぶりです、代表の尾崎です。
危機管理・防災をテーマにした見本市としては日本最大となる危機管理産業展(RISCON)に今年も参加してきました。RISCONは例年秋に行われる危機管理や防災、BCP等に特化した見本市です。東京ビッグサイトの大きな会場に多数の出展者が集まり、関連セミナーも多く開催されます。今年の来場者数は3日間で19,622名と速報されており、注目度の高いイベントであることがお分かりいただけるのではないでしょうか?
例年尾崎は事務局長を務めるASIS日本支部(世界最大のセキュリティ人材ネットワーク)事務局長として主催者セミナーを担当させていただいており、今年も司会進行及びモデレーターとして登壇してきました。今年は初日があいにくの雨で、前年よりも来場者数が少ない一日でした。人数が少ない初日ではありましたが、世界全体の不穏な状況や、災害への備えへの関心の高まりもあってか会場の熱気、来場者の真剣な姿勢は大変印象的でした。
RISCONの特徴は1)防災・減災、2)BCP/事業リスク対策、3)セキュリティ、4)危機管理ドローン・ロボット、5)サイバーセキュリティ、6)スマートセーフティシティの6つのゾーンからなる危機管理の全体像が俯瞰できる見本市であることです。一般的に見れば日本企業では危機管理を担当する部署は災害、犯罪はもとよりIT関連、BCPやレピュテーションコントロールに至るまで事業に関わる外的リスクを一手に担当していることが多く、担当者はまったく別種のリスクそれぞれの基礎知識と関連商品・サービスをチェックしておかなければなりません。この点でRISCONは出展者にとっても来場者にとっても日本企業のニーズに合致した見本市であるといえるでしょう。
運営事務局によれば、今年も出展ブースは全て埋まっており、大変盛況だったとのこと。特に近年防災への関心が高まっているのか、防災ゾーンの充実ぶりは阪神大震災の生き残りである尾崎から見ても目を見張るものがあります。東京都や自衛隊といった災害発生時に対応する公的機関の出展も見どころがありますが、例えば永谷園やハウス食品といった大手食品メーカーによる在宅避難時の備蓄用食品などの出展も充実してきています。ご所属の企業とは別に災害大国日本に住む一人の国民としても来場して損はない企画展示コーナーがあることもお伝えしておきましょう。
飲食料品の備蓄や避難ルートの確認などは地震や台風の被害の多い日本で、チェックされている方も多いかもしれません。他方で、2024年1月1日、お正月真っただ中に発生した石川県能登半島地震のように、真冬に災害が発生した場合の防寒への備え、真夏に災害が発生し停電が生じた際の暑熱対策といった「盲点」になっている備えは間違いなくあります。
今回尾崎が視察した中で印象的だったのは非常用の圧縮毛布。足立織物という兵庫県の会社が東京ビッグサイトの会場に実物を運び込み、PRされていました。実際に触ってみると十分な温かさが確保できる普通の毛布が真空パックによりA4サイズの単行本くらいの大きさにまで圧縮されており、これは冬場の災害への備えとしては非常に有用に思います。ブースにいらっしゃった方にお話を伺うと既に学校や市役所等の備蓄で活用されている事例があるとのこと。四季のある日本では必要なものの、スペースの関係上なかなか備蓄しづらい毛布を機能を落とさずにここまで圧縮できている技術は素晴らしいなと感じました。
尾崎は1月17日、真冬に発生した阪神大震災で被災した経験があり、寒さの中で被災者として過ごすことの大変さを実感しています。この点で少し関心をもって毛布以外の類似商品がないか調べてみたところ、今回の出展者ではありませんが、スタイレム瀧定大阪というこれまた関西の会社がlil(リル)というおしゃれな圧縮タオルシリーズを販売していることに気づきました。被災してみると、日ごろ何気なく使っているハンドタオルやフェイスタオル、バスタオルがいかにありがたいか、ということに気づきます。特に勤務時間中に大きな災害が発生し「帰宅困難者」となった社員がたくさん出てしまった場合には、体を拭いたり、洗ったりできるタオルが一枚あるかないか、で快適さは違ってくるでしょう。
こうしたかさばるものをコンパクトにして備えるという取り組みは災害大国の日本でも広がっていないように思います。他方、毛布やタオルは腐るものではないので、備蓄食品や飲料水等と違って買い替えも必要ありません。このコラムの読者皆様の企業あるいはご自宅で一セットだけでもとりあえず買っておく、というのはまさに「いざという時への投資」としてコストパフォーマンスが高いだろうな、と危機管理の専門家として感じました。

ちなみに常夏の楽園のイメージがあり、日本ほど冬が寒くないグアムでも政府が推奨する「非常持ち出し袋に入れておくとよいもの」の中に毛布は含まれています。ご存じの通り、日本も同じ国からミサイルを撃ち込まれる事案が発生してもおかしくない状態ではありますので、防災に留まらず当サイトが担当する海外発の緊急事態においてもこうしたコンパクトな毛布やタオルの備えは必要である点は追記しておきましょう。
【参考コラム】北朝鮮からのミサイル攻撃脅迫を受けた際のグアム政府推奨「非常持ち出し袋」の中身
ASISセミナー登壇
さて、尾崎が担当したセミナーについても少し触れておきましょう。
尾崎は世界最大のセキュリティ人材ネットワーク(会員数約4万人)のASIS会員の一人であり、日本支部の事務局長としてさまざまなセキュリティ関連情報のハブとなっています。また会員間の研鑽やセキュリティ人材のネットワーキングイベントの企画や立案を担当する役割を担わせてもらっており、例年RISCON事務局からのご依頼を受け、ASISとしてセミナーを提供させていただいております。
昨年2024年は企業におけるスパイ対策を、今年はボディーガードの実態から一般企業におけるセキュリティを考えるという先進的なテーマを取り上げました。2025年、今回のセミナーでは日本におけるボディーガード業界の第一人者小山内氏による基調講演の後、ASIS日本支部長畑、事務局長尾崎を交えたディスカッション、そして参加者皆様からの質問回答セッションを行いました。あいにくの雨の日ではありましたが会場には多数のお客様が詰めかけ、特に自衛隊や警察の関係者はもちろんのこと、一般企業の方も多数熱心に聞き入っていただきました。90分間という長時間のセッションでしたが、ご参加いただいた皆様は講演中そして質疑応答中にも大きくうなずきながら、あるいはメモを取りながら聞いていただいた方も多くいらっしゃったのが印象的でした。

ASIS日本支部ではグローバル企業では広く取り組まれているにも関わらず、日本企業では大企業ですら取り組みがなされていない、あるいは遅れているテーマを取り上げるように心がけています。世界の中で相対的に安全な国である日本を拠点に事業を行う皆様にとって盲点となっている視点を提供すべく、私尾崎及びASISとして取り組んでいきたいと意を新たにした一日でした。
災害はもちろんのこと、危機はいつ、どこで、どんな形で起きるか分かりません。日本で暮らす以上防災はもちろん、世界的に不穏な現下の情勢において過去数十年間経験したことがない「もしも」への備えは必要不可欠です。一般の方になじみは薄いかもしれませんがRISCONはその「もしも」に備えるための知恵と技術が集まる場所です。毛布やタオルの備えから、グローバル企業と日本企業の危機管理体制の差まで、そのカバーする範囲・レベルが非常に広く、どなたにとっても有用な視点が得られる機会だと感じています。
既に何度か来場されている危機管理の専門家やご担当者にはもちろんのこと、一般の方こそ一度足を運んでみる価値がある展示会と言えますし、実際にどなたでも参加が可能な見本市です。「危機管理」と聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、実際には「家族を守るための準備」や「会社の備えを見直すきっかけ」として、誰にとっても身近なテーマです。是非、来年のRISCON(2026年9月30日~10月2日、東京ビッグサイトにて開催予定)もご注目いただければと思います。
この項終わり