【事案分析】ベルギー リエージュ警官襲撃事案

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事案の概要

〇5月29日(火)ベルギー東部のリエージュ市中心部で警官から銃を奪った犯人が警官2名を射殺する事案が発生

〇犯人は警官を殺害した後、近くに停車中の車両内の一般人も射殺

〇その後、人質として女性を拘束した上で学校に一時立てこもった

〇治安当局は立てこもり現場を包囲の上、最終的に発砲しながら逃走を試みた犯人を射殺

〇犯人はベンヤミン・ハーマン(36)。フランス西部ロシュフォール刑務所で服役中だったが、社会復帰プログラムの一環として月曜夜に一時釈放されていた

〇服役中のハーマンの罪状は窃盗、麻薬取引等

〇現地の証言によるとハーマンは銃を持って「神は偉大なり(Allahu Akbar)」と叫んでいたとのこと

〇現時点では犯行の動機は不明であり、ベルギー当局が背景を捜査中

〇現時点でIS等イスラム教過激派グループからの犯行声明は把握できていない

 

 

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簡易な分析コメント

本件は単独犯による小規模なテロ行為と言えます。現時点では詳細な背景は不明ですが、服役していた人物が警官から銃を奪い、その警官を射殺していることから、治安当局への敵意が犯行の発端となっている可能性が考えられます。

現地証言ではイスラム教の過激なグループがテロや襲撃実行時に発する「アラー・アクバル」との言葉を犯人が叫んでいたとの情報がありますが、現時点までIS等からの犯行声明は見つかっておらず、彼がIS等イスラム教過激派とつながりがあったのか、は不明です。(今後SNS等で犯行声明が出てきた場合でも信ぴょう性を確認することが難しい状況です)ただし、本事案がラマダン期間中に発生していることは事実です。

一週間ほど前、イラクで死刑宣告を受けたベルギー出身のIS司令官であるAbu Hamza al- BeijikiについてISが作成した動画が発表されており、この動画との関連を指摘する声もありますが、犯行状況から考えると弊社として、関連付けは難しいと考えています。

 

ベルギーでは2016年首都ブリュッセルの空港ロビーや地下鉄駅で爆弾テロが発生しているほか、2017年にも中央駅で爆発が発生しています。リエージュでは2011年12月クリスマスマーケット付近で手りゅう弾を用いた無差別テロが発生しており、依然として現地治安当局は戒厳体制を継続している中で発生した事案でした。

 

刑務所から一時釈放されていた犯人が精神的に不安定な状況下、その場で警官から武器を強奪した上で犯行に及んだものであり、本事案は十分に計画を練って実行したものとは言えません。類似の犯行を防ぐことは難しいと思われます。このため、読者の皆様は常時不審な動きがないか注意いただくことが最大の被害防止策となります。

万が一銃声や爆発音が聞こえた場合には素早く事件現場から逃げるか、逃げられない場合は厚いコンクリートや車両等の陰に低い姿勢で隠れるという対応をオススメします。