2~3か月前から選挙シナリオを想定しよう
選挙を実施するためには候補者の確定や投票所や投票用紙の準備に時間がかかります。そのため、どんな国でも
「明日選挙を行います!」
と発表することはあり得ません。選挙の少なくとも2~3か月前に投票日が決まることが一般的です。逆に言えば、投票日が発表されたころからカウントして2~3か月間、安全対策を考える時間的ゆとりがあるということですね。
まずやっていただきたいのは、今回の選挙がどのように進んでいきそうか、いくつかのシナリオを想定すること。現地の日本大使館やその国の政治評論家、警察関係者など、頼れそうな人から意見を聞きながら、どういった事態が起こり得るのか、最善のケース、最悪のケース、最も起こりそうなケース、などをイメージすることが最初です。
この時点でのシナリオ想定は2~3か月先のことですし、論文にする必要も、コンペのプレゼンで使うわけでもないので誰もが納得する正確無比の予測は全く必要ありません。ブレーンストーミングのようなレベルで十分です。経済や金融の専門家でも2~3か月後の株価や金利の動向、各国の財政政策を正確に予測できる人などいません。まして日本人/日本企業がこれまで対応しきれていなかった途上国の選挙シナリオを選挙運動開始以前から正確に予測することは困難ですので、あまり完璧を求めないでくださいね。
とはいえ、ブレーンストーミングにもヒントは必要だと思いますので、よくあるシナリオ事例をステージごとにお示ししておきます。
(1)選挙運動中~投票日
Aパターン:
・政治集会は概ね平穏に行われ、支持者同士の衝突等は発生しない
・投票も問題なく行われる
Bパターン:
・政治集会が一部騒乱に発展し、過激な支持者が暴力行為に訴える
・ただし混乱は拡大せず、投票は概ね平穏に終了する
Cパターン:
・政治集会の騒乱化が広がり、国内各地で騒然とした雰囲気が継続する
・ただし、投票は予定通り行われ、終了する
Dパターン:
・政治集会の騒乱化が拡大、深刻化し、治安当局が抑え込めなくなる
・選挙プロセスそのものが進められなくなり、投票も延期される
(2)投票日~結果発表後
Aパターン:
・与党(現職)が勝利
・野党は選挙結果を受け入れ、発表通り決着する
Bパターン:
・野党が勝利
・与党は選挙結果を受け入れ、発表通り決着する
Cパターン:
・与党(現職)が勝利したと発表される
・野党は選挙結果を受け入れず、裁判等に不正を訴える
Dパターン:
・与党(現職)が勝利したと発表される
・野党が選挙結果を受け入れず、暴力を含む抗議行動が発生する
Eパターン:
・野党が勝利したと発表される
・現職が居座り続ける等、選挙結果が履行されず、暴力を含む抗議行動が拡大する
【次ページでは・・・最悪のシナリオでも耐えうる具体的な対策事例をご紹介します】