護身術はあくまで逃げるための時間と距離を稼ぐもの
尾崎によるとこの講座で講師である軍人が繰り返し発言していたというセリフがコチラ。
「この講座を受けたからと言って君たちが無敵になるわけじゃない。
今日学んだ護身術は相手を倒すためのものではない。
あくまで君たちが逃げる時間と距離を稼ぐためのものでしかないことを忘れるな。
戦場ではこんな護身術は単なる気休めでしかない。
君たちは軍人ではないので、万が一爆発や襲撃に晒されたら『逃げる』の一択だ」
なんと、教えている軍人自らが「護身術は気休めでしかない」と発言しているそうです。確かに、相手がライフル銃や爆弾を持っていて、こちらが素手なら勝ち目はありません。とにかく捕まらないように、その場で殺されないようになんとか武装グループから距離を置くしかなさそうですね。
いわゆる武道、武術、格闘技等の場合、自分も相手もほぼ同じ条件で戦うことになっています。たいていの場合は素手もしくは竹刀かせいぜい木刀同士の戦いです。そして審判が「はじめ!」と言うまでは戦いは始まりませんし、「やめ!」と言われればその時点で戦いは終わります。
他方で、武力紛争や頻発するテロでは相手が素手ということはありえません。不意にナイフや銃、ライフルで襲われることもありますし、そもそも襲われる場所もタイミングも事前にわからないことがほとんどです。
そのため、武道や武術、格闘技がどれだけ得意であっても、そもそも役に立たない可能性があるのです。まして、本来の専門が人道支援や開発支援である人々が一時間やそこらで学べる護身術などまったく役に立たないといっても過言ではありません。むしろ護身術を学ぶことで自分は強くなった、映画のヒーローのように戦うことができる!などと思い込むことのほうが危険かもしれませんね。
ですので、護身術を教える軍人も口を酸っぱく、
「護身術はあくまで時間と距離を稼ぐために学ぶのだ」
と伝えているのでしょう。
世界各地でご活躍される読者の皆様のことです。体力に自信があるかたもおられるでしょうし、柔道や空手の有段者、テコンドーの国体出場者などもおられるかもしれません。ただ、お伝えしているように、アメリカの軍人ですら「戦場では護身術は気休め」と発言しているのです。
この発言を重く受け止め、決してご自身の体力、武道などを過信せず、海外での非常事態の際はあくまで逃げることを最優先してください。
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