海外での安全管理は実地経験を持つ人に相談すべき
海外での安全対策をアドバイスするセキュリティコンサルタントと呼ばれる会社は日本にも複数存在しています。中には世界的なセキュリティ企業と連携し、各国の退役軍人なども雇用しながらコンサルティングを行っている大手も存在しています。そうしたセキュリティコンサルタント会社はは海外に進出している商社やプラント会社などの防御を担ってきた実績も有しています。
ただし、そうした実績はどちらかというと特定の拠点(大使館やプラントなど)を守るためのノウハウや要人警護の経験です。こうした実績が通用しないような田舎町での草の根活動や個人旅行の場合の安全対策も適切なアドバイスが得られるでしょうか?
大使館やプラントを守るのと同じレベルで防弾扉を事業拠点ごとに設置できればいいですが、実態はそうではないでしょう。SDGsなどに関連する業務を行っておられる場合は大都市から乗り合いバスで数時間移動してはじめてプロジェクト現場に到着する、といった事例もあります。道中武装警備員とずっと一緒に移動できるでしょうか?また、移動したとして、お客様であるはずの地元の人たちは(銃を持った人間と一緒に来る)皆さんに本音で話をしてくれるでしょうか?
もう一つ、考えていただきたいのは日本国内での警察官や自衛官としての勤務経験だけで世界各地の安全対策を十分に練られるか、という点です。日本のセキュリティコンサルタントに多いのは元警察官や元自衛官。しかしながら、彼らの日本国内でのご経験では当たり前となっている「前提条件」が皆さんの事業現場では当たり前ではない、というケースも多々あるのです。
海外での防犯対策、テロ対策、情報収集経験のないまま、(場合によっては現地語はもとより英語やフランス語ができず、地元の方と十分に意思疎通できない方もおられるでしょう)皆さんの安全対策を一手に任せてしまっているのであれば今一度検討が必要ではないかと思います。
もちろん、ご活躍されている日本人のセキュリティコンサルタントの皆さんはそれぞれの分野でのノウハウ、ご経験は非常に特殊で高い専門性をお持ちです。元警察官の方で、「ひったくりに遭いにくいカバンの持ち方」「簡単に侵入されないドアの守り方」といった実践的な防犯アドバイスをされている方もいらっしゃいます。が、海外で活動される皆さん自身こそ、本当の意味で事業現場の状況をよく理解しているはず。海外の活動拠点や事業現場で本当に意味のある安全対策を講じるためには、実際にその地で活動されている方の基礎知識と安全対策の専門知識の両方が必要なのです。
犯罪者の行動や思考回路を理解せずに監視カメラだけを設置しても意味がないのと同様、海外の事業現場のリアリティを踏まえずに、各種安全対策を講じても意味がないかもしれません。「ワインを飲んだことのないソムリエにワインのお薦めを聞き、そのお薦めを盲信していないか」。海外でご活躍されている皆さんが本当に安全でいられるように、そして重要な海外での挑戦を持続可能なものにするために、今一度ご確認いただきたいと思います。