「現地の治安情勢」が変われば必要な安全対策も変わる
前のページでは必要な安全対策のレベルを山の環境と装備、バックアップ体制になぞらえました。しかしながら、登山と安全管理では決定的に異なる点があります。それは万が一への備えを考える際の「前提条件」がガラッと変わってしまうことがあるということ。
通常登山の難易度は山によってほぼ固定されています。天気の良しあしや冬山などの季節的な難しさ、といった変動要因はあるものの、その変動要因は織り込めるはずです。山自体が大きく動かない以上、備えておかなければいけないリスク(天候リスク、滑落リスク、迷うリスク等)はほとんど変わりません。
しかしながら、海外における安全対策の場合は、国内の情勢が大きく変わり、「前提条件」がそれまでと全く変わってしまう、ということもしばしば。例えば、
政治情勢の急変に伴い、与野党の支持者同士が衝突する
国際的なテロ集団が国内での活動を活発化させ始める
経済状況の悪化に伴い、一般犯罪が急増し始める
といった変化があれば、当然安全対策のレベルも変えなければいけません。
イメージとしては次の図のようになります。同じ国・地域であっても治安情勢に変化があり、対象国の脅威度(赤い丸)が大きくなったのであれば、許容できるリスクまでの差である「必要な安全対策」(青い矢印)を大きく・太くする必要があるのです。
【次ページでは・・・安全対策を見直すきっかけはどのように把握すればよいのか、具体的にご説明します】