「安全配慮義務」は企業・団体に課せられた義務
企業/団体が雇用関係にある関係者を労働させる場合、雇用者側は労働者が安全に、また健康的に働くことができるよう労働環境を整える義務を負います。これは「安全配慮義務」と呼ばれており、法律に明記されているわけではないものの、信義誠実の原則(信義則)として認められているものです。
これまで、大多数の「安全配慮義務違反」に問われたケースは以下の例のようなものです。
・工場内で稼働する機械類に巻き込まれて従業員が死亡してしまった
・建設現場で高所作業を行っていた際、転落して作業員が死亡してしまった
・長時間労働に伴う過労死(ないし過労自殺)が起こってしまった
・パワハラやセクハラ等の嫌がらせにより、従業員がうつ病に罹患してしまった
2019年4月に施行された「働き方改革関連法案」をはじめ、今後安全配慮義務の明文化は進んでいくと予想されます。しかしながら、現時点では信義則である以上企業/団体として、「これだけやっておけばOK」という整理ができない点は課題として残っています。
現在の日本の法律や制度上、あくまで事件や事故が起こった後に安全配慮義務違反の有無が議論になり、その後訴訟等で責任を問われます。言葉を替えればどこまでやれば責任を負わなくて済むのか、は明確ではないものの関係者の安全や健康に配慮しなければならない、という義務を企業/団体側が課せられているとも言えます。
このため、企業/団体にとって重要なのは
・まずなにより事件・事故を発生させないこと
・そのために想定できる事件・事故の芽を摘んでおくこと
・万が一事件・事故が発生しても、「被害を最小限にとどめた」と言えるような労働環境整備を行うこと
と言えますね。
国内では大手企業の過労死問題等もあり、かなり安全配慮義務の履行が進んできましたが、海外での労働環境整備はどのようになっているでしょうか?
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