「これまで大丈夫だったから」は通用しない
次のグラフは「一般社団法人日本能率協会」が定期的に行っている日本企業の経営課題調査結果概要です。毎年企業経営者にアンケートを郵送し、得られた回答を分析して発表しているもの。昨年2018年10月に発表された最新の調査は39回目という歴史のある調査です。
最新の経営課題調査で、最上位に挙げられているのは「収益性向上」で三年連続トップとなっています。企業が存続するためには当然利益を上げ続ける必要があるので、これは当然のことかもしれません。
さて、注目すべきは二年連続数値が大きく向上している経営課題です。
それは「働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上」です。3年前の調査で経営課題と掲げていた経営者はわずか5%にも満たなかったのですが、最新の調査では12%以上の経営者が課題として掲げています。それだけ社会が変化していると言えそうです。
この「働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上」というのは具体的に言えば労働環境の整備や従業員へのモチベーションの与え方ということでしょう。例えば
労働時間が適正であるかどうか(過労死などもってのほか)
子育てや介護などの事情がある場合に働きやすいかどうか
パワハラやセクハラといった嫌がらせが存在していないか
会社を通じて社会に役に立っているという感覚が得られるかどうか
を経営者が重視し始めたと考えられます。
確かに、新聞やインターネット上のニュースなどを見ていても「働き方改革」であるとか「多様性のある働き方」といった文言が踊らない日はありません。数年前まで、このような施策が話題に上ることがほとんどなかったことを考えれば隔世の感があります。
なぜ、こういった課題が出てきたのかと言えば、やはり人材不足が根本にあるのではないでしょうか?他社よりも働きやすい、働きがいがある、と思ってもらえなければいくら時給が良かったとしても人は集まらない。まして優秀な人を集めようとすれば、お金だけでは限界がある、というのが最新の社会環境の変化なのではないかと思います。
新しく経営課題としてこの項目を挙げられる方の中には
「これまで大丈夫だったはずなのに」
「自分が若い時は〇時間ぶっ通しで働くのは当たり前だった」
「この程度の指導をして問題になるなんて・・・」
という感覚をお持ちの方もおられるかもしれません。社会環境がまさに変わる過渡期ですので、皆さんの常識と社会環境にギャップがある部分が残っていても仕方ないでしょう。
しかしながら、調査結果からは「これまで大丈夫だったから」は通用しないと経営者の皆さんが感じられていることがよくわかりますね。
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