公共交通機関経営者の安全観
代表の尾崎です。
ここ何週間か移動しながら各地でお仕事をさせていただいております。
移動の合間には本を読むことが多いのですが、先日手に取った本にいたく感動したので、本日はこちらをご紹介させていただきたいと思います。もちろん単なる書評ではなく、「安全」に深く関わる内容ですので最後までお読みいただければ幸甚です。
今回読んだのはJR九州の会長である唐池恒二さんが著された「感動経営」という本。唐池さんは旧国鉄に入社し、民営化・分社化(JR発足)と同時にJR九州に所属を移されました。当時新幹線や大都市圏を抱えていたJR東日本、JR西日本、JR東海の三社はともかくとして「三島会社」と呼ばれていたJR北海道、JR四国、JR九州の三社は赤字から抜け出せない、株式上場(完全民営化)など絵空事、と言われていました。
しかしながら、現在いわゆる「三島会社」のうちの一つだったJR九州は完全なる黒字体質に成長した上、2016年には東証一部に上場し、当初絵空事と言われていた完全民営化を達成しました。唐池さんはJR九州の経営多角化、経営安定化、黒字体質化に深く関与され、現在は会長として重責を担われています。
こういった経営多角化や黒字化のストーリーをまとめたビジネス本の場合、ほとんどのケースではいかに新事業を立ち上げたのか、困難にどのように立ち向かったのか、どのように従業員のモチベーションをあげたのか、などが話題の中心になります。もちろん、そういった成功に至るまでのアプローチは大変勉強になるのですが、どちらかというと「攻め」の話になります。しかし、そういった「攻め」の姿勢はよかったにも関わらず、「守り」が甘かったがゆえに成功に至らず、失敗をしてしまった企業もたくさんありますよね。最近では人気タレントをCMで起用して破竹の勢いだった仮想通貨業者などは目立つ事例でしょうか。
この本がビジネス書として素晴らしいのは経営多角化したとはいえ、本質は公共交通機関であり、安全を決してないがしろにしない、むしろ常に最優先課題である、という経営トップの姿勢も明確に記されている点です。
こうした問題意識は、安全な移動を提供する企業だけの課題ではありません。海外で従業員やお客様が事件や事故に巻き込まれた場合に、経営上大きな問題になることは明白です。海外展開するということはそうしたリスクを背負うことでもあるのですが、残念ながら日本の多くの企業ではこの部分の「守り」はまだ十分とは思えません。
その点、唐池さんは「攻め」にスポットライトが当たるこの本でも「守り」の重要性を強調されており、大変印象に残りました。
【次ページでは・・・唐池さんの著書から海外展開中、計画中の企業経営者皆様に読んでいただきたい一節をご紹介します】
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