テロによる死者が発生した国は15年で約2倍に
さて、ここまで経営課題についてのお話をさせていただきました。当ホームページとどう関係するのか?とお感じの方もおられるかもしれません。そこでいまから安全対策の話をさせていただきます。
社会環境が変われば経営課題も変わることはご説明した通り。そして今まさに安全対策に関連して社会全体が大きく動いていること、つまり近い将来日本企業の経営課題として話題に上ってくるであろうという予測をご紹介します。
以前コチラのコラムでもご紹介したGlobal Terrorism Indexを2012年までさかのぼり、公表されているすべてのデータを取りまとめてみました。その過程で確認できた興味深い事実、それはテロによる死者数はここ数年減ってきているものの、その減少分のほとんどはアフガニスタン・イラク・ナイジェリアといった日本人/日本企業が日常的に行くとは言えない国でのものという点です。
具体的に数字を見てみましょう。2017年世界全体でのテロによる死者数は史上最悪だった2014年に比べ約4割減少し、18814人でした。ただし死者数の減少はイラク(5658人)、ナイジェリア(5980人)の2ヵ国に集中しています。こうした国に日常的にいらっしゃる方にとってみればテロに巻き込まれて死亡する可能性は減ってきているのかもしれません。
では、アメリカやヨーロッパ、東南アジアなど多くの日本人/日本企業が出張や駐在している国はどうでしょうか?残念ながらイラクやナイジェリア、アフガニスタンといった国以外の地域ではテロによる死者数はほとんど減っていません。むしろ2011年に3945人だった死者数は2017年には2倍以上の8358人に増加しているのです(2004年と比較すると約3倍の水準)。
さらに不都合な真実をお伝えします。2004年に1人以上テロによる死者が発生した国の数は39か国でした。この中にはもちろんアフガニスタンやイラク、ナイジェリアといったテロが頻発している国(日本人/日本企業がほとんど訪れない国)が含まれています。この「1人以上テロによる死者が発生する国」をカウントしてみると、なんと2016年は79か国、2017年は67か国となり15年間で約2倍になっていると言える状況です。
テロによる死者数の推移、そして死者が出るテロが発生する国の数の増加から、テロの脅威が世界中に拡散していることは明白です。この事実はこれまでテロへの警戒がそれほど必要なかった国・地域でもテロを警戒せざるを得なくなっていることを示唆しているのではないでしょうか?ビジネスを行う上で、明らかに社会環境が変わりつつあるのです。
思い起こせば労働時間の問題(過労死予防)やセクハラ・パワハラ問題も、社会環境の変化は問題が顕在化する前からじわじわと起こっていたはずです。海外で関係者の安全を確保できるかどうか、も水面下で経営課題の芽が育ちつつある時期なのかもしれません。
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