開発途上国で選挙が行われる際のリスク
さて、なぜ開発途上国では選挙の開催が安全上のリスクにつながるのでしょうか?
日本にいると、選挙運動も平和裏に行われますし、投開票も極めてスムーズ、さらに開票結果を巡って
「開票が不適切だ!」
「そんな結果は受け入れられない!」
といったもめごとはごくごくまれです。
ただ、これは日本における民主主義制度が(少なくとも)候補者選定の面では成熟しており、また、国家を深刻に二分する争点も多くなく、また選挙管理委員会等選挙制度への信頼が強い、といった要因が影響しています。反対に、途上国では、こういった要因が揃っておらず、選挙によって深刻な影響を受ける特定のグループ、特定の業界などが文字通り暴力を含む「選挙戦」を戦うことがあるのです。
なかなか日本では想像しづらいでしょうが、一つ実例を挙げてみましょう。
2018年7月に大統領選挙を含む複数の選挙が開催された中米のメキシコ。日本からも進出している企業が多いですし、カンクンなどの世界的リゾートもある国ですが、この選挙は「歴史上最も暴力的な選挙」とまで称されました。
候補者ら次々殺害 メキシコの“命がけの選挙戦”(NHK)
選挙は無事終了していますが、選挙戦の間、麻薬組織や各地の犯罪組織が取り締まり強化を訴えた候補者などを次々と殺害。なんと選挙実施までに130名以上の候補者が殺される事態になっています。
メキシコに限らず、選挙が実施される際に、気にくわない立候補者、自分たちの利益を損なう立候補者の殺害は世界各地で発生しています。候補者だけが狙われるのであれば日本人への影響はごくごく小さいのですが、実態としては、選挙そのものの妨害を試みたり、対立する主張を持つ支持者らをまとめて殺害しようとしたり、立候補者が参加している政治集会等への襲撃により、より大きな社会不安を巻き起こそうとする事案も発生しており、「政治集会に近づくことがリスク」なのです。
短期間の出張や個人旅行の場合は、選挙日程を避けることが最善策です。どうしても日程を避けられない場合はとにかく政治活動や投票所には近づかないようにしてください。これだけで、随分と巻き添え被害を避けることができます。
駐在者がいる場合は選挙リスクの分析を!
それでは、選挙運動や投票日、開票日などの前後も含めて長期で滞在する場合、選挙実施国に海外拠点がある場合、駐在員がいる場合はどうすればよいのでしょうか?選挙があるからと言ってビジネスを止めていては、全く仕事になりませんよね。そのため、選挙リスクを踏まえた事前対応を構築することが必要です。
まずは、今回の選挙がどの程度混乱しそうかをチェックすることから始めましょう。以下に弊社がこれまでの経験に基づきまとめた選挙時のリスクが大きいか小さいかを判断する項目を並べました。
皆さんが海外拠点をお持ちの国、駐在員が滞在している国はどういった状況で選挙が行われるのかをまずは確認してみてください。過大評価・過小評価を防ぐために、できれば、駐在している方と日本の本社の方、両方の目線で確認してみることをおススメします。
次回後編では、選挙に向けてどのタイミングでどんな準備を進めるべきか、をご説明したいと思います。
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