大手メディア登場=精確な情報ではないという罠

この記事のURLをコピーする

大舞台、メディアへの連続登場

みなさん、いつも当サイトをご覧いただきありがとうございます。代表の尾崎です。おかげさまで、直近東京ビッグサイトで行われた危機管理産業展(RISCON)でのセミナー登壇やインターネットTV放送の生放送への連続出演など、比較的多くの方の目にとまる舞台へのお声掛けを頂くことが続きました。

危機管理産業展で登壇する尾崎(ステージ右)。左からASIS日本支部長、外務省邦人テロ対策室長

大きな会場でのセミナー登壇やメディアへの出演を目標にしているわけではありませんが、まだまだその必要性や大切なノウハウが人口に膾炙していない海外での安全管理を啓発する立場としては発信力のある舞台に立たせていただけること、大変ありがたい限りです。

特にインターネットTVのトップランナーであるAbemaプライムの生放送(収録はテレビ朝日)ではこれまで2度専門家としてお呼びいただきました。パトリック・ハーランさんやEXITのお二人(兼近さん/りんたろー。さん)ら人気の高い芸能人の方々とも共演させていただくことができ、尾崎登場コーナーの動画再生回数は合計で50万回を超えています。通常の我々の活動で50万人に声を届けるというのは相当な時間がかかりますので、テレビ局の配信する映像に取り上げて頂けなければ尾崎の活動に触れることがなかった方にも届けていただいた点、感謝しかありません。

【参考動画】

Abemaプライム 2023年10月16日 「ロサンゼルスで意識不明のアジア男性の正体は?所持品に日本円が?事件や事故に巻き込まれた?」

abema-cut
10月16日の出演シーンから一コマ(Abemaプライムの生放送画面より)

現在日本国内において、海外での安全管理業務を担当している方は非常に少数です。担当されている方の中には日本国内の治安維持や災害対応に強みを持つ警察や自衛隊ご出身の方、あるいは緊急事態の事後対応に詳しい保険会社の関係者といった方が対応されることが多いと言えます。一般論として紛争国や開発途上国で長期間の生活経験がある方で、さらに体系的にセキュリティマネジメントの理論をご存じの方はさらに希少です。ちなみに、尾崎自身はさらにコロナウイルスを含む人獣共通感染症に関する基礎知識を獣医学部で学んでいます。専門知識を踏まえ安全も健康も守備範囲である点が特長の一つであり、こうしたレアキャラ中のレアキャラであることも、大規模な見本市やメディアからお声掛け頂く理由の一つになっているのかもしれません。

 

ただし、尾崎自身あまり目立ちたいという欲求はありません。本サイトをたくさんご覧頂いている方や毎週月曜日配信のメルマガをご購読頂いている皆さんにはご理解頂けているのではないかと思いますが、当サイトで取り上げるニュースや記事は「バズる」ことを目的としていません。むしろ、退屈、地味、できれば読みたくない、といった世界各地の治安事案や災害、テロ等に関連する文章が淡々更新されていくウェブサイトです。

 

当サイトの目標である、「海外での安全管理を組織文化に!」「各企業/団体で自立的かつ持続可能な安全管理体制の確立を!」の実現に向けてキャッチーで耳障りのいい記事とは無縁です。日本語のメディアやネットニュースではなかなか報じられない世界各地の治安情勢のリアリティを正確に伝えることが第一。そして、世界に挑む日本人/日本企業の皆さまが志半ばで倒れないで済むよう知っていれば、ご自身の身を守れる基礎的な危機管理ノウハウをわかりやすくお伝えする、というのが我々の活動の本質でしょう。

むしろテレビ等に取り上げていただくにあたっては本来情報収集や分析に充てている時間を打ち合わせや収録に使うということを意味します。すなわち、メディア出演をすればするほど、尾崎が大切にしている海外安全管理の本質からは外れて行ってしまいます。我々の仕事はお客様の命を預かる仕事ですから、本質を外れた取り組みに時間を使いすぎることは好ましくありません。お客様の命を守る、毎日の当たり前を維持し続ける、が我々の責任であり社会貢献です。そのためには地味であっても、バズらなくても構わないので、謙虚に地道な取り組みを継続することを第一に考えております。

 

上述の通り、マスメディアに取り上げて頂くこと、あるいはいわゆる芸能人の方のお力も借りて海外のリアルな治安情報やセルフディフェンスの豆知識をお伝えすることはこれからもあり得ますが、メディア出演のためになんでもかんでも(守備範囲ではないテーマについても)コメントをするような活動は致しません。この点をご理解いただいた上でなお、海外の治安や安全管理について講演やセミナー/出演のお仕事を頂けるようであればぜひお問合せページからご依頼いただければと思います。

【参考動画】

Abemaプライム 2023年10月16日【体感治安】日本は危険?安全?犯罪件数は減ってる?メディアの伝え方が課題?ネットに過激な情報が溢れすぎる?

海外安全メールマガジン登録

目立つことと情報収集力/分析力とは別

さて、尾崎自身、立て続けに大きな舞台に立たせていただいて感じたことを一つだけお伝えしたいと思います。それは、東京ビッグサイトのような数万人が集まるイベント会場で講演の機会を頂いたり、六本木のきらびやかなテレビ局スタジオでお話させていただいたり、その他多くの方の目につく活動をしたからと言って尾崎の実力が変わるわけではない、ということ。読者/視聴者の皆さんの目線に立てば「メディアでよく見るからと言ってその人の信頼性や情報の精確さを過信してはいけない」ということです。

 

尾崎自身が自覚をしていますが、世界各地の治安情報収集能力や集めた情報の分析能力と大きな舞台での目につく活動との間に関連性はありません。大きな舞台に立たせていただくまでに一定程度の能力とそれを証明する実績は必要でしょうけれども、新聞やテレビに出たからと言ってその方の情報がより一層精確になるというわけではないからです。大手新聞やテレビ番組で取り上げられる方の言うことなので間違いないだろう、多くの人が一目置く存在なのだからその情報・分析は正しいハズだ、という思い込みはむしろ過ちの原因にもなりかねません。

 

一つ例を挙げてみましょう。日本経済新聞社関連の記事にも多く登場し、アメリカでも一目置かれているユーラシアグループが昨年末発表した「2023年10大リスク」にはどこにも「イスラエル」あるいは「パレスチナ」といった言葉が出てきません。アメリカのメディアはもちろん日本でもNHKを筆頭にテレビ局からの取材も多い同グループ、イアン・ブレマー氏をもってしても未来を精確に読み切ることは困難なのです。これは新型コロナウイルス感染症の対策に大わらわだった2020年~2022年を思い起こして頂いても、「たしかに」と納得して頂けるかもしれませんね。

(同グループあるいは代表のイアン・ブレマー氏の名誉のために…。現下の世界情勢はVUCAそのものであり、予測が極めて困難であるという点は申し添えます。同グループ以外でイスラエルとパレスチナ間の緊張の高まりがここまで世界的に大きな影響を及ぼすようなレベルになると予想していたチームはほぼありませんでしたので。)

 

eurasiagroup-10-risks
ユーラシアグループ「世界10大リスク2023」の目次

つまり、様々な専門家の意見は確認しつつも、その信ぴょう性や未来予測は皆さんご自身でしっかりと評価し、活用方法を考えなければならないのです。尾崎は大手新聞やテレビに出ている方、あるいは業界の専門的なセミナー等で登壇していることだけを根拠として、彼/彼女らを盲信することはおススメしません。これは当然尾崎自身にも当てはまるので、競合他社/類似業務を行っている方への批判ではありません。尾崎自身もメディアに取り上げていただいたからと言って、2024年の世界情勢予測が当たるようになるわけでは当然ありません。メディアに出ているから信用してくれ、というのも本末転倒であろう、と考えています。

 

もう一つ「専門家」の意見をメディアを通じて受けられる皆さんには頭の片隅に置いていただきたいことがあります。先ほどお伝えしたように、大きな舞台に呼ばれる前に時間をかけて取り組むことができていた情報収集や分析の時間は対外的な活動が増えるにつれ削られてしまいます。講演が増えれば増えるほど、メディア出演が増えれば増えるほど、自分が責任をもって取り組む情報収集や分析といった本質的な活動は縮小し「過去の貯金」を食いつぶさざるを得ない、というのががこの2-3週間での尾崎体験談です。つまり、メディアに多く登場している人ほど、目につく活動を開始する前ほどの専門性、アップデートされた知識・データ・ノウハウを維持するのが困難ということです。

 

ということで、このページをお読みの皆さまには

 

メディアによく登場している人の発言に依存しすぎてはいけない

目につく活動をされている時間が長い人ほど、自分自身で本質的な専門性深化/維持のための時間は作れない

 

という二点、ご理解を頂けると業務にも役立つのではないかと思います。

 

尾崎自身は決して目立ちたいタイプではありません。むしろできれば一人でニュースをチェックしたり、各国の政府機関やシンクタンク等の報告書・分析レポートを時間をかけて読みこみたい人間です。海外での安全管理ノウハウを広め、より多くの日本人に世界でご活躍頂くことに資する活動であればご依頼にはできる限りお応えしますが、あくまで自分の本分は情報収集と分析、そしてそれらの地道な発信にある、と考えます。

直近、ありがたいことに連続して大きな舞台に立たせていただいておりますが、人目につく仕事を体験させていただいたことに浮かれず、これからも謙虚に、地道に精進したいと思います。

ss-seminar-ozaki
日経新聞社が主催する日経メッセ「セキュリティショー」での講演の様子(2021年)

この項終わり