日本政府外務省が運営する「たびレジ」システム
長く続いた新型コロナウイルスによる入国制限も欧米やアジア諸国を中心に少しずつ撤廃、緩和が目立ってきました。日本政府も3月には日本国内でのマスク着用の推奨を止めますし、5月には感染症法上の分類変更も検討されています。新型コロナウイルスへの対策緩和は日本人の日本への入国にも影響を及ぼしています。日本政府外務省は2022年10月19日に全世界すべての国を対象に、感染症危険情報を「レベル1:十分注意してください」に引き下げています。
過去二年以上海外への渡航が制限されていたこともあり、その間自由に行き来できなかった反動を指摘する声もあります。お仕事や留学、あるいは観光等の目的で海外渡航再開を検討されるという方も多いのではないでしょうか?日本政府観光庁(JNTO)の統計によれば、2022年一年間の日本人出国者がは227万人とのこと。コロナ前には毎月100万人以上(夏休み中などは200万人以上)が出国しており、それと比べると依然8割以上減っているとはいえ、実際の出国者統計でも少しずつ海外渡航が増えてきていることがうかがえますね。
他方で、コロナウイルス感染症が完全になくなったわけではありません。また、2022年はアメリカでの銃撃事案/犯罪件数は過去最悪と言っていいほど極めて高いレベルで推移していますし、その勢いは2023年も継続中です。加えて、世界的な経済の不安定さも相まって、世界各地で生活苦を訴えるデモや反政府抗議活動も相次いでいます。2022年、少し前まで人気の旅行先だったスリランカでは物価高騰に起因する政情不安が報告されています。
コロナウイルス感染症のニュースが大きく報じられる中、日本国内ではあまり報じられなくなりましたが少し前まで日本人が犠牲になる悲惨なテロも複数発生していました。先般無料セミナーでもお伝えした通り、テロの被害を避ける方法論はありますが、100%確実ではありません。状況によっては死にもつながりかねないテロの発生状況は日本出国前にちゃんと調べておきたい情報ですよね。
さらに2023年に入って日本政府外務省が管轄する世界各国の大使館・領事館からの情報だけでも日本人が被害を被った事例がいくつも報告されています
2023年2月タイ国内でのパスポート盗難/紛失事案急増への注意喚起
2023年2月キューバ国内での邦人犯罪被害増加、治安悪化への注意喚起
リスクを挙げはじめればきりはないのですが、新型コロナウイルスに身構えることがなくなったとしても安全対策/健康管理にはいくら気を配っても配りすぎることはありません。私共はせっかくの海外旅行、帰国されるまでテロや犯罪に巻き込まれないようにしていただきたいと切に願っています。テロや犯罪被害に遭わないための第一歩は渡航先の治安情勢について正確な情報を入手すること。しかしながら、ご自身で渡航先の最新治安情勢や政治情勢を調べるのはなかなか難しいのではないでしょうか?
そんな方のために、日本政府外務省は『たびレジ』というシステムを運営しています。この『たびレジ』こちらは東京にある外務省や世界各地の大使館・総領事館等が配信する日本人向けの安全情報提供サービスです。緊急事態の際にはメールで皆さんのお手元に、最新情報を届けてくれますので、情報収集の方法が分からない!という場合にはひとまずこちらをご登録いただければ十分です。
コロナ前には社内で海外渡航経験が豊富な方、あるいは一つ、二つ学年が上の先輩から海外渡航前の準備を細かく教えてもらえることができたかもしれません。しかしながら、ご承知のように過去二年間海外渡航が途絶えてしまっている現状、近くに海外渡航に役立つ情報を教えてくれる人が少なくなっている企業・学校・団体も少なくないでしょう。このコラムでは改めて日本政府外務省が運営し、無料で活用可能な情報収集元をご紹介したいと思います。
『たびレジ』登録のメリット
『たびレジ』に登録すると、具体的にどういう情報が配信されてくるのか確認してみましょう。
一つ目の事例はイタリア国内各地で発生した大規模な抗議活動への注意喚起です。関連の抗議活動が治安当局との衝突、暴力行為につながったことも踏まえ、丁寧に情報発信を行い、日本人の被害が生じないよう注意を呼び掛けていますね。日本人にとってイタリアは人気の渡航先の一つですが、治安に強い不安を持つ方はそれほどいないのではないかと思います。日本政府外務省がイタリア国内全土で日本人に注意喚起を行っている状況をしらないと思いがけない事態に巻き込まれかねません。
全世界の情報を集めている霞が関の外務省本部からでは見えづらい、地元警察当局のSNS情報まで確認し、その内容を現地に滞在中の日本人向けに発信してくれているからこそ最新の状況がよくわかりますね。
直近、イタリアだけでなく、インカ帝国の遺跡があるペルー全土、あるいはフランスの首都パリやスリランカのコロンボ等でもデモが発生しています。いずれも日本人に人気の観光地ですがもし「たびレジ」登録が済んでいなければ、何も知らず観光中、理由はよくわからないけれども群衆に囲まれてしまったらどうなるでしょうか?
身動きが取れない!
観光どころじゃない!
群衆に囲まれて怖い思いをした!
なんてことになりかねませんね。日本での「デモ」という言葉に対するイメージと異なり、海外でのデモは店舗の略奪など一部を切り取った映像では内戦でも始まったのか、と見間違えるような状況にもなることだってあります。現地の日本政府公館(大使館や総領事館)から具体的なアドバイスがあれば、注意しなければならないポイントがはっきりわかり、安全なタイミングで可能な範囲の観光を楽しむことができます。
二つ目の事例は少し前ですが、2019年バングラデシュで発生した火災に伴う安否確認の連絡です。
現地に長期滞在されている『在留届』提出済みの方と『たびレジ』にてバングラデシュ滞在を届け出ている方に対して送信されたメールです。火災現場に近づかないよう注意喚起するとともに、もし連絡がつかない関係者がいれば大使館とも情報共有してくださいと記載されています。世界各地の大使館や領事館の役割の一つは邦人保護。日本政府として、その土地に滞在中の日本人の救援、救護を行うことになっています。『たびレジ』に登録していれば、万が一の際に大使館や領事館が助けてくれる可能性があるのです。
もし、『たびレジ』に登録していなかった場合には、現地の大使館、領事館は皆さんがその土地にいることを知る術がありません。万が一テロの標的となった建物で身動きが取れなくなっていても、大規模なデモ・暴動でケガをしていたとしても、皆さんがその国にいるかどうかを知らなければ救援、救護のしようがありません。そして、日本にいるご家族が旅行先の大使館、領事館に安否確認を依頼しても、『たびレジ』上に情報がなければさすがの日本政府も確認のしようがなく、ご家族には「わかりません」としか回答できません。
つまり、『たびレジ』に登録しておくことは皆さんご自身が万が一に備えると同時に日本にいるご家族やご親族の安心にもつながるのです。
『たびレジ』登録手続きガイド
それでは具体的に『たびレジ』で皆さんの海外旅行を登録してみましょう。『たびレジ』の登録手続きは10分あれば完了してしまいます。繰り返しになりますが、万が一の際には、この10分の準備が皆さんご自身の身の安全と留守家族の方の安心につながります。ぜひとも手間を惜しまず、以下の手順で登録を完了してからご出発なさってください。
(今回は旅行者向けの方のみへのご案内です。長期滞在の方はこちらをご参照下さい)
まずは外務省の『たびレジ』登録リンクにアクセスしてみてください。次のような画面が出るはずです。右側の在留届は長期滞在の方向けですので、左側の『たびレジに登録する』をクリックしてみましょう。メールアドレスを打ち込んでしばらくすると、『たびレジ』登録画面へのリンクが返信されてきます。
まず最初に登録するのは旅行中の滞在先と滞在日程(開始日と終了日)。ほとんどの場合ドロップダウンで選択できますので、時間はかからないはずです。何か所にも滞在する場合は滞在先を追加することもできます。念のため、『たびレジ』に登録する必要があるのは都市名までです。皆さんが今現在滞在都市のどこにいるか、までは把握しませんのでプライバシー面はご安心ください。また、『たびレジ』システムでは、登録された皆さんの名前やメールアドレスや滞在先情報は旅行終了日から一か月で消去される仕組みになっています。
これで、既に半分終了です!
『たびレジ』の登録を完了させよう!
滞在先と滞在都市名、滞在日程が登録できたら、次は皆さんご自身の情報です。
こちらも次のようなページが表示されますので、上から順番に入力するだけ。必要最小限の情報で外務省に旅行者情報が登録できるようになっています。
いよいよ最終項目です。登録したメールアドレス(『たびレジ』登録のためのリンクを受信したメールアドレス)以外にも現地の治安、災害、政治情報等を送付して欲しいメールアドレスや同行者の情報、利用する旅行会社の情報があれば入力します。
例えば日本に残るご家族の方にも自分と同じ情報が届くようにしたい時などはご家族のメールアドレスを登録しておくとよいかもしれませんね。
最後に、一番下の「登録」ボタンを押せば、登録は完了。皆さんが旅行される少し前から旅行終了日まで、関係する国の大使館・領事館から常に最新の情報がメールで送られてくるようになりました。
いかがでしょうか?おそらく10分もかからずに登録できたのではないかと思います。
繰り返しになりますが、皆さんが無事に日本まで戻ってきていただくことが当サイトの願いです。万が一の時頼れる日本政府外務省、現地の大使館や総領事館からの連絡を受け取れるようにしておくことは皆さんご自身はもちろんご家族の安心にもつながります。ぜひとも今後の海外旅行出発前に『たびレジ』にご登録なさって下さい。
この項終わり