2019年10月31日インドが実効支配しているカシミール地方がインド中央政府の直轄領になります。
8月に憲法改正案が承認され、同地方の自治権を定めた憲法条文が削除されました。本日から新憲法が適用され同地方をインド政府が直接統治できるようになります。具体的にはこれまで同地方への法律適用に当たってはジャンム・カシミール州の地方政府同意を得る必要がありましたが、今後は事前同意は不要で、インド中央政府が決定した法律がそのままカシミール地方でも適用されるようになります。
既にインド政府は「テロ活動」を抑制するため8月以降現地に駐留するインド軍を増員したり、携帯電話サービスを停止したり、様々な手段を講じてきています。他方で、一部の報道ではイスラム教徒の一般市民も含め突如逮捕され、人権が侵害されているとの主張も見受けられます。
憲法の条文削除が決定されただけではなく、その決定が実効化する本日以降、カシミール地方のイスラム教徒の間で更なる抵抗運動が発生してもおかしくはありません。現地での大規模デモやそれに伴う治安当局との衝突、突然の外出禁止令等には十分注意が必要です。加えてインド同様カシミール地方の支配権を主張する隣国パキスタンではインド政府に対し反発を強めており、インドとパキスタンの外交関係にも注意が必要です。(過去にインドとパキスタンは3回戦争を行っており、2000年代に入っても戦争を想定して両国国境にそれぞれ軍を配置するといった動きが観察された経緯があります)
今回インドが直轄領とするジャンム・カシミール州に対しては日本政府外務省は比較的高い危険情報を設定していますが、スリナガル周辺はレベル2、ラダック地方はレベル1となっており、渡航を強く差し止める情報にはなっていません。他方、当サイトとしては治安に影響を与える前提条件が急変する時期であることを理由として、今現地入りする強い理由がない限りは同地方への立ち入りはおススメしません。
アメリカ、イギリス、オーストラリア各政府も同地域周辺へのトラベルアドバイスを今後随時更新すると見られます。日本を含む四か国の最新注意喚起をまとめたページも併せてご覧ください。