今後の交渉で焦点となりうるポイント
せっかく明るいニュースが報じられたのですが、これにて一件落着と行かないのもまた事実。外国軍の撤退やタリバンによる攻撃の停止が議論され始めてはいますが、その詳細は全く決まっていない様子。特に以下のポイントは今後の交渉での課題とされています。
・アフガニスタンをISやアルカイダの拠点にさせないための方策
・タリバンが攻撃を止める条件
・アメリカ軍を含む外国軍の撤退時期や撤退のプロセス
・アフガニスタン国内の和平協議の進め方
特に多くの識者、研究者が指摘しているのは
「アフガニスタン政府とタリバンによる協議がどのように行われるのかが決まらなければアフガニスタンの安定は実現しない」
という点です。長年アフガニスタンを含む南アジアを研究し、アフガニスタンに関する著作を複数世に送り出しているバーネット・ルービン氏もワシントンポストへの寄稿記事で次のように指摘しています。
As of this week, a framework agreement on U.S. troop withdrawal and Taliban counterterrorism guarantees seems to be emerging from the talks.
But avoiding the recurrence of bloodshed will require more than that agreement and the negotiations with the Afghan government that must follow. It will also depend on reliable international assistance and cooperation with Afghanistan’s neighbors. Those might be more challenging than negotiating with the Taliban.
2001年12月、アフガニスタンの国土90%以上支配していたタリバン政権(アフガニスタン・イスラム首長国)が崩壊して以降、同国はアメリカを中心とする外国軍の後ろ盾のある政権が支配してきました。しかし、カルザイ前大統領にせよ、ガニ現大統領にせよ、外国の支えがなければアフガニスタンという大国を支配することは不可能だったのです。このためタリバンはアフガニスタン政府を長年「アメリカによる傀儡政権」と表現しています。
むしろ、タリバンが地方部を中心に住民からも一定の支持を得ている環境下では「アフガニスタンを支配している」という表現そのものが正確ではないかもしれません。以下の地図にも表現されている通り、外国の支援を受けているアフガニスタン政府、外国軍に支えられたアフガン軍がしっかりと支配できているのは国土全体の4割弱でしかないのです。より重要なのはタリバンとアフガン政府が競い合っている(contested)土地が全土の半分以上であるということ。
つまり現状はアフガニスタン政府とタリバンの勢力が拮抗している状況なのです。多数の識者が指摘する通り、タリバンとアメリカが和平に向けた合意をすることもさることながら、アフガニスタン政府とタリバンが和平について合意できるのか、が焦点になるのは間違いありません。
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