アフガニスタンが安定化すれば万事解決か?
最後に、アフガニスタンが幸運にも安定化し、ISやアルカイダが同国から追い出されたとしても世界各地のテロがなくなるわけではないと考えられる要素をご紹介します。以下の通り、先週ロシア外務省の定例記者会見の様子が報じられています。この記者会見のポイントは
・先般パキスタンからタジキスタンにIS幹部が移動したとのロシア外務省高官発言はパキスタンではなく、アフガニスタンの言い間違い
・パキスタンとロシアはテロ対策に関し緊密に連携しており地域の安定に貢献している
・アフガニスタンからのテロリスト流出は長年同国に駐留しているNATO軍の問題であり、ロシアの責任ではない
というもの。パキスタンからであれ、アフガニスタンからであれISの幹部がタジキスタンに移動している可能性がロシア外務省の公式記者会見でも語られているのは注目すべき点です。
アメリカがタリバンに要求している「アフガニスタンをISやアルカイダの拠点にさせない」という状況がもし実現したとして(当サイトではこの約束遵守がそもそも困難と考えています)、その場合はISやアルカイダの拠点がタジキスタン等周辺国に移動するだけ、という可能性も否定できません。
周囲を海で囲まれ、かなり明確に「国境」が決まっている日本では想像が難しいと思いますが、パキスタンとアフガニスタン、アフガニスタンとタジキスタン、アフガニスタンとイランといった山岳部の国境はあってないようなもの。世界のナンバーワン国であるアメリカですらメキシコからの不法移民を止められない状況です。アフガニスタンを含む周辺国が山岳地帯の長い国境を完全に管理することは期待できません。
政治的要素や地理的条件を考えれば、アフガニスタンが平和になれば問題解決ではないことは明白でしょう。
アフガニスタンからISやアルカイダといった国際テロ組織の拠点が移動するのか、
移動するとすればどこなのか?
移動した先の国では国際テロ組織を抑え込むことができるのか?
こうした点を踏まえて、当サイトでは、アフガニスタンの和平協議進展とともに、周辺地域の治安情勢も俯瞰しなければならないと考えています。
この項終わり