お盆休み前後、世界で相次ぐ天災被害
お久しぶりです、海外安全管理本部代表の尾崎です。
日本は本当に暑いですね。普段から炎天下で練習しているはずの高校球児ですら甲子園球場で熱中症になるほどの暑さ。一般の方も大勢熱中症で病院に運ばれているそうですし、皆さんもどうぞお体ご自愛ください。
そして、直近では日本を含め世界各地で天災被害が相次いでいます。台風6号による猛烈な雨、風で停電や物流が一時止まった沖縄はもちろんのこと、その台風6号が直撃した韓国も死者が出ています。北欧では低気圧’Hans’による洪水被害、ハワイのマウイ島ではハリケーンによる強風に煽られ全島で大火災に見舞われ50人以上が死亡する近年最悪の天災被害が発生しました。他にもカナダの山火事や洪水、アメリカや南欧での異常な高温で死者が複数報告されています。
例年と大きくかけ離れた自然災害が発生した場合、「100年に1度の災害」としてたまたま今年は天災被害がひどかったね‥と語られることが多かったのですが、この数年の間は毎年のように「100年に1度の災害」が発生していますよね。こうなってくると例外的な災害が来ることを前提に日々の生活を備えざるを得ません。
日本ではお盆休みの時期で今週、来週は少し長い連休をとられる方も多いように思います。しかしながら、自然災害には休みはありません。夏休みであろうが、クリスマスであろうが、年末年始であろうが、自然災害は思いがけない時に発生して、繰り返し我々人類の生活を脅かしています。そして、長期休暇の際普段暮らしなれた土地を離れて休暇モードで過ごしている時に災害に遭ってしまうと被害は一層拡大してしまいます。
【参考コラム】災害への備えができない旅行先ではみな「災害弱者」になる
テロや犯罪にも休みはない
同じようなことがテロや犯罪にも言えます。バカンスシーズンやクリスマス・年末年始の休暇のシーズンに合わせてテロや犯罪が少なくなるという統計はありません。むしろそうした休暇をとる方が多い時期ほど、犯罪件数が増えることの方が一般的です。これはなぜでしょうか?せっかくの祝日なのですから、犯罪を企てる人・組織もお休みにしてもおかしくないのですが…。
テロや犯罪が休暇シーズンに増える理由の一つは、警戒心が薄い人が多く集まりやすいということが挙げられます。例えば、クリスマスマーケットや酉の市等気分が高揚した状態でお金を使う気のある方が集まる場所は財布や携帯等を盗むにはもってこいの状況です。
こうした状況を見逃さない人たちもいます。そう、スリやひったくり等の一般犯罪を試みる人達にとってクリスマス~年末年始はかきいれ時といっても過言ではありません。そういった人たちにとって、レストランやカフェでスマホや荷物で席を確保する人たちはどのように映るでしょうか?ズボンのポケットから財布が飛び出ている人は?歩きスマホで周囲を全く警戒していない人は?ATMや銀行でそれなりの金額の現金を下ろしてそのまま買い物に行く人は??
普段以上に「獲物」を狙っている人がイベント会場周辺等に集まっている状況では、警戒心の薄い人から順番に狙われていきます。警戒心の薄い人上位に入らないよう、たとえ休暇中、長期のお休み中でも最低限の警戒心を解かないようおススメします。
テロはどうでしょうか?テロリストのよくある思考回路としてテロ行為によってより多くの方を死傷させたり、目立つ場所・タイミングで人が多く集まる場所でテロを成功させれば自分たちの存在感を増すことができると考えます。多くの人が集まるイベント会場や、宗教施設、あるいは特定の国のランドマーク的な建物がテロの標的となるのはこのためです。
不特定多数の人が集まっており周囲の人の多少の不審な行動にもそれほど注意を払わないような場面、幸せな雰囲気で周囲への注意力が散漫になるシーズン、そして贈り物等の箱を持っていることが全く不自然ではない状況は爆発物や銃等の入ったカバンや箱も目立ちません。
テロや犯罪にお休みがないように見える理由を掴んでいただけたでしょうか?テロにせよ、犯罪にせよ多くの方がお休みされているタイミングで不意打ちを食うことが被害を深刻化させる要因の一つなのです。
リスク対策担当者は一般業務者と逆の精神状態で
いつ発生するかわからない自然災害はもちろん、多くの方が油断しがちなタイミングを狙って計画されがちなテロや一般犯罪はしばしば思いがけない被害を生じさせます。皆さんの普段の生活の中でも、何かにぶつかると事前に察知できた時にはとっさに回避行動をとったり、ぶつかりそうな部分の筋肉に力を入れることでダメージを軽減しているはずです。しかしながら、まったくの不意打ちで人や物にぶつかってしまった場合には想像以上に痛い思いをしたり、予想外に転倒してしまったり、という経験はありませんか?同じ勢いでぶつかっても準備ができている時とできていない時で結果が異なるのは体験的にご存じのはずです。
リスク管理もこの現象と似たところがあります。海外に駐在されている方や出張・留学で現地に入られる方が油断しているかいないか、万が一に備えた心構えができているかどうか、で同じ状況でも被害の度合いが変わることがありうるのです。このため、リスク管理を担当する方、安全・健康管理の啓発をされる皆さんに置かれては海外に送り出される方が油断しないように注意喚起を行うことが非常に重要になりますね。
ただ、いつもいつも「あれをやってはダメ!」「これをやってはダメ!」というのではなかなか効果が上がりません。日々本業で忙しい人々にはメリハリをつけた注意喚起出なければなかなか聞いてもらえないでしょう。このため、私尾崎がよくアドバイスしているのは
海外に渡航されている方がある程度注意しよう、というタイミングではそれ以上声掛けをしない
逆に、現地にいる方が油断しているタイミングではあえて大げさに注意喚起を行う
といった「逆張り」対応です。海外到着直後や、自分が被害を受けていない凶悪犯罪等が起こった直後などは大抵の方が自分から「気を付けよう」と思うもの。こういうタイミングではあえて安全管理担当者として追加の注意事項を言わなくても皆さん思った以上にご自身の安全に気を配ってくれます。なのでこういう時はそれほど強く注意喚起をしなくても問題ありません。
むしろ、しばらく当該国で治安事案が増えていない時、テロがしばらく発生していないタイミングでは現地で日々暮らされている方が「まぁここのところ安全だからちょっとくらいはいいか」と安全確保上必要なルールを破ったり、日々の備蓄等を怠ったり、というケースが散見されます。こういうしばらく当たり前の毎日が続いているこそ安全対策担当者としては危機意識を高めるべき時です。
「天災は忘れた頃にやってくる」という有名な言葉がありますが、まさにこれ。海外での安全対策上大きなリスクである自然災害も、テロも、日本人への犯罪被害も忘れた頃、油断した頃に発生するとその被害が深刻になりがち。安全対策担当は海外の事業現場で活躍する関係者や留学生と常に「逆張り」して注意力を維持することをおススメします。
この項終わり