海外は本当に危ないのか? ― 外務省発表「海外邦人援護統計」から見える現実



国際比較で見える「日本の特殊さ」
さて、海外でどのくらいの日本人が犯罪被害に遭っているかを確認した上で、日本と海外では安全面にどれほど差があるのかを別の統計で確認してみましょう。
国際的に一定の信頼度がある統計としてここでは二つご紹介したいと思います。一つは世界平和指数(Global Peace Index)と呼ばれる統計で、世界163か国を対象に犯罪率、暴力、治安、紛争などを総合評価した指標です。日本は例年10位前後に位置しており、指標からみれば「世界でも有数の平和で安全な国」と評価されています。日本国内でも当然殺人や強盗は発生しているわけですが、人口10万人当たりの犯罪数で言えば他国よりもかなり少ないというのが評価されているポイントです。
もう一つの調査は、世論調査などを担当することの多いギャラップ社が実施しているGlobal Safety Reportです。こちらは客観的データというよりも各地で暮らす人々の本音を多数集めて分析したもの。世界約140か国以上で「夜道を一人で歩けるか」「警察を信頼できるか」といった質問を投げかけて、国民目線で自分の国が安全かどうかを指標化しています。本年9月に公表された2025年版の内容概説は当サイトでもコラムとしてご紹介させていただきました。
【参考コラム】Global Safety Report 2025 年版概説~日本との比較から考える海外安全対策
こうした統計での日本への評価を総合すると
夜に一人で歩いても大きな危険を感じない
落とした財布が戻ってくる
公共交通機関でスリを警戒する必要がほとんどない
こうした環境が当たり前になっています。日本では飲食店などでスマホや財布を席において注文カウンターに向かう方がほとんどです。国によっては貴重品から目を離した隙にあっというまに誰かに持っていかれてしまう、という現実もあります。海外では日本で当たり前になっている前提が通用しません。むしろ多くの国では、「油断している人から順に被害に遭う」というのが現実です。

海外でトラブルに遭う方が思いのほか多いのは、渡航者数の回復だけでなく、日本人が日本にいる時の感覚のまま海外に出てしまっているといった事情もありそうです。渡航先の国の気候に合わせて必要な衣類、防寒具等を用意するように、安全面でも現地の治安状況に合わせて準備と意識の切り替えをしなければならないのです。
まとめ:海外に出る時は「日本とは違う次元の自己防衛」を
冒頭ご紹介したように多くの方が海外旅行を楽しめる時代ですし、実際に1300人に1299人はそこまで深刻なトラブルには遭遇していません。紛争地の真っただ中に出かけていくならまだしも、一般的な旅行先であれば海外が危険だらけというわけではありません。ただし、「日本と同じ感覚で行動しても安全が保たれる国はほとんどない」という事実は、知っておく必要があります。
日本政府外務省が発表している邦人援護統計でトラブルに見舞われる人、犯罪被害に巻き込まれている人の数をあらためてご確認いただけたかと思います。おそらくは思っているほど人気の旅行先も安全とは言い切れないことを感じておられるのではないでしょうか?海外にいらっしゃる際に大切なのは、必要以上に恐れることではなく、世界の大部分では「日本とは安全の前提が違う」ことを理解したうえで、少しだけ自己防衛を意識することです。ほんの少しの情報収集と意識のあり方だけでも自分自身を守り、家族を守り、そして海外を安心して楽しむことができるのです。
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