日本人だけを狙ったテロはほとんど発生していない
世界中のあちこちでテロが発生する時代です。この10年ほどを振り返ってみても、日本人の方が死傷したテロ事件はいくつも発生しています。少し辛い情報ですが、以下にここ最近の主要なテロ事件をリストアップしてみましょう。
〇9.11アメリカ同時多発テロ
(邦人24名死亡、2001年)
〇インドムンバイ同時多発テロ
(邦人1名死亡、2008年)
〇アルジェリア日揮プラント襲撃事件
(邦人10名死亡、2013年)
〇ケニアショッピングモール襲撃事件
(邦人被害なし、2013年)
〇シリア邦人拘束・殺害事件
(邦人2名死亡、2015年)
〇チュニジア博物館襲撃事件
(邦人3名死亡、3名負傷、2015年)
〇パリ市内同時多発テロ事件
(邦人被害なし、2015年)
〇ジャカルタ市内多発テロ事件(日本人会事務局入居ビルを含む)
(邦人被害なし、2016年)
〇ダッカレストラン襲撃事件
(邦人7名死亡、1名負傷,2016年)
〇ベルギー・フランス等IS関連とみられる自爆テロ、銃撃、トラック突入等
(邦人被害なし、2016年)
〇トルコナイトクラブ襲撃事件
(邦人被害なし、2017年)
思っているよりも頻繁に主要なテロ事件が発生していることがわかるのではないでしょうか?ただし、日本人が被害に遭ったテロ事件は日揮が参加していたアルジェリアプラントを除けば、「無差別テロ」に分類される事件がほとんどです。そして日本国内では国際的テロ組織によるテロは発生していません。
つまり、日本国および日本人だけに敵意を向けるテロはこれまでほとんど発生していない、と言えます。こういった状況でテロの被害に遭わないためにまず考えるべきなのは
「巻き添えに遭わない」
ということです。
テロの巻き添え被害を防ぐことは海外に渡航した際、個人レベルでも実行可能な安全対策と言えます。自分が標的になっていない場合、テロの被害を避けるために具体的に注意が必要なポイントは三つあります。
1)空間:テロが起こりそうな空間に近づかない
2)時間:テロが起こりそうな時間を避ける
3)観察力:テロの予兆がないか観察する
まず、過激派や反政府勢力が襲撃や爆発の対象としそうな場所に近寄らなければ、巻き添え被害に遭うことはありません。例えば
宗教施設や宗教行事
軍・警察といった治安当局
政治家事務所や行政機関
など、近づかなくてよい場所には極力近づかないようにすれば、それだけでもリスクを下げられます。
しかしながら、上記の場所に近寄らないことにしたとしても、ホテルのレストランや劇場など、自分の目的地が無差別テロの標的となることはありえます。
そうした場合は場所ではなく、時間をずらしてリスクを低減しましょう。
人が大勢集まる時間を避ける
イスラム教で重要な金曜日を避ける
空港入り口等誰でも入れるエリアに長居しない
といった具合に、テロ事件が発生しそうな場所に行かざるを得なかったとしても、事件が発生するその瞬間に自分がいなければ何も被害はありません。空間と時間に十分気を付けて、行動予定を慎重に組み立てましょう。
最後は自分の周りに不審な人間、荷物等がないか、常時、できるだけ観察することです。
「あれ、おかしいぞ」
「なんかいやな予感がする」
のであれば、結果として無意味であってもその時点で考えられる回避行動を講じればよいのです。
前ページで、巻き添え被害を防ぐポイントをご紹介しました。
弊社ではこうした巻き添え被害を防ぐポイントを並べてコンビネーション型ダイヤルロックを開錠するようなものだとご説明しています。
次の図をご覧ください。
市販されている金庫のダイヤルロックは4つ程度の番号の組み合わせで開錠されることが一般的です。この場合、鍵の内部は4つの歯車が存在しており、それぞれの歯車にある穴が揃うと開錠される仕組みになっています。
(ダイヤルロックの内部の仕組みはこちらの動画で確認できます)
テロの巻き添え被害も似たような仕組みで発生しています。この場合の4つの歯車は
1)場所
2)時間
3)本人の違和感を感じとる力
4)運
の4枚です。普段はよほどのことがない限り、4つの歯車の「鍵穴」が揃うことはなく、それがゆえにテロの巻き添え被害にもめったなことでは遭いません。しかし、不注意や情報収集不足、そして運が悪いといった要素が重なった時には「鍵穴」が揃ってしまい、開錠されてしまう=テロの巻き添え被害に遭ってしまうということが起こり得るのです。
逆に言えば、4つの「鍵穴」が揃わないように、揃わないように、気を付けていればテロの巻き添え被害は極めて発生しにくくなる、ということです。特に1)場所、2)時間は事前にリスクが高いことが予測できるのであれば、歯車を意図的にずらすことが賢明でしょう。3)は周囲の観察力を磨くことで、歯車をずらすことが可能です。
4)の運は文字通り運ですので、どうにもならない部分ですが、少なくとも1)~3)を自分たちで工夫することがテロの巻き添え被害を避けるための方法なのです。
この項終わり