高市首相も連呼『危機管理投資』を今まさに考えるべき3つの理由~情勢不安定化・投資効率・人材確保~

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衆院選で明らかになった「危機管理投資」の国家政策化

皆さんも既にお気づきの通り、2020年以降、特に2025年、2026年と国際情勢は大きく揺れ動いています。それ以前であればまず起こらないだろうという出来事が次々に起こっているだけでなく、様々な国が「外国の主権、領土を軍事力で威嚇したり、現状を変更したりする」といった動きが続いています。これに伴って、皆さんご自身、あるいは企業・団体の従業員/関係者に対する安全管理や危機管理という言葉が示す範囲も10年前とは大きく変わりつつあります。10年前の危機管理と言えば地震や台風、事件・事故といった起こってしまった突発的事象への初動対応が中心でした。しかし近年は、国際情勢の不安定化や技術覇権争い、サプライチェーンの脆弱化など、国家の根幹に関わる領域にまで範囲が広がっています。しかも、これらのリスクは事後対応ではコントロールしきれず、事前の備えこそが被害を最小化する唯一の手段となりつつあります。

 

その象徴ともいえる出来事が2026年1月27日、衆議院選挙公示後の高市総理第一声で確認されました。「危機管理投資」という言葉が10回以上登場し選挙の争点であることが明確になりました。演説の内容は、危機管理を単なる防災や治安維持の枠にとどめず、国家の成長戦略と結びつけて捉える必要性を強調するものでした。何かが起こってから対応するのでは間に合わない。危機管理を未来への投資として位置づける発想が、国家だけでなく民間にも求められる時代に入ったことを示唆しています。高市総理の演説全文は自民党のHPで公開されていますが、危機管理が単なる防災や治安維持の枠を超え、国家の成長戦略と結びつき始めていることを示しています。何かが起こってから対応するのでは間に合わない、そして危機管理を未来への投資として位置づける発想が、国家だけではなく民間にも求められる時代であることに明確に触れた演説でした。

 

主要メディアもこの変化を報じています。日経新聞は1月30日付の記事で、日本の危機管理体制が災害を中心としたものから経済安全保障・技術投資へと拡張している現状を指摘しました。危機管理の司令塔となる官邸ポストに防衛・安保の専門家が起用されるなど、体制そのものが再編されつつあることも紹介されています。加えて日本経済の成長基盤としての危機管理体制再構築が必要であるとも言及しています。危機管理が国家の競争力を支える基盤として扱われ始めたことは、これまでの日本の危機管理観から見れば大きな転換点と言えるでしょう。

 

こうした動きは、国家だけの話ではありません。企業、自治体、教育機関、そして個人に至るまで、社会全体が「危機を前提とした運営」に移行しつつあります。危機管理はもはや専門部署だけの仕事ではなく、経営戦略そのものに組み込むべきテーマになっているのです。本日開票された衆議院選挙の結果からはこうした「危機管理投資」を訴える高市総理および彼女が率いる自民党が大勝している点で、国民の多数もこうした観点が必要であろうとみていると解釈できるように思います。

 

当サイト「海外安全.jp」では2020年から一貫して、「危機管理はコストではなく投資である」という観点を提示してきました。一見売り上げの拡大にもつながらないし、製造原価の圧縮やバックオフィスの効率化といった費用の節減にも役に立たない。むしろ見た目には費用が膨らむ方向のお金の使い方であることは間違いありません。加えて危機管理の成果は「何も起こらないこと」であるため、短期的には費用対効果が見えにくく、どうしても後回しにされがちです。しかし、未来の損失を考えれば、危機管理ほど投資効率の高い分野はありません。これは高市総理が「危機管理投資」という言葉を繰り返し用いていることからも間接的に示されているのではないでしょうか。

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危機管理への投資効率は急上昇中。着手するなら今

危機管理関連の投資を新規に始める/増やす意味合いを考えるために、具体的に投資効果をイメージしてみましょう。例えば、1時間のシステム停止で数億円の損失が発生する企業も今や珍しくありません。製造業の皆さんにとってサプライチェーンの寸断が数ヶ月の納品遅延につながることもあります。安全トラブルが一度起きれば、企業ブランドは長期的に毀損します。海外拠点で混乱が生じれば、事業継続そのものが不可能になることもあります。こうした損失を防げるなら、危機管理投資は投資額の数十倍、場合によっては数百倍のリターンを生むことになります。行ってみれば危機管理投資とは、「何も起こらない未来」を今の時点で買う行為だと言い換えることができます。

 

より身近な事例、そして当サイトの専門分野で危機管理投資の効果が及ぶ3つの経路を図示してみました。企業・団体の規模にもよりますが、それぞれの効果は数百万円から数億円に上るため、年間数十万円から数百万円の投資は決して過大な負担ではありません。

第一に、海外に派遣している駐在者や出張者が死傷した場合の直接的な補償費用です。これは一件あたり1億円前後に達することも珍しくありません。さらに、今の時代、海外ビジネスを任せられる後任人材を確保するための採用・育成コストも無視できません。
第二に、海外で従業員や関係者が危機的状況に巻き込まれた場合、企業は一時的に通常業務を止め、緊急対応モードに人員を割かざるを得ません。その間の業務停滞や逸失利益はどれほどになるでしょうか。危機対応に追われる数日間、あるいは数週間の損失は、平時の想定をはるかに超える規模になります。

第三に、海外展開をしているにもかかわらず、安全配慮義務を満たしていない企業だと指摘された場合のレピュテーションリスクです。今の時代、企業の社会的責任に対する目は厳しく、レピュテーションの毀損は取引停止、採用難、株価下落など、連鎖的な経済的損害を引き起こします。ブランド価値の低下は、直接的な損失以上に長期的な影響を企業にもたらします。

 

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さらに、危機管理投資には人材確保という一見するとわかりにくいものの、極めて重要な効果があります。優秀な人材ほど、自分の働く環境が安全であるか、組織が危機に強いかを重視します。これは以前は危機管理と結びつけて語られることが少なかった領域ですが、今や企業の競争力を左右する決定的な要素になりました。優秀な人材ほど、自分の働く環境が安全であるか、組織が危機に強いかを重視します。危機対応が遅れたり、情報共有が不十分だったりする企業は、どれだけ給与や福利厚生を整えても人材が定着しません。逆に、危機管理がしっかりしている企業は、安心して働ける環境として選ばれ、結果として採用コストの削減、離職率の低下、生産性の向上といった「副次的なリターン」まで得られます。危機管理投資は、企業の魅力そのものを底上げする投資でもあるのです。

 

こうして見ていくと、危機管理投資のパフォーマンスが急拡大している理由は明らかです。危機管理は、もはや保険ではなく、企業価値を守り、未来の成長を支えるための戦略的投資なのです。2026年の現在、危機対応は「いつか起こるものに後から対応すればいい」ではなく、「既に進行している前提条件に今まさに向き合うための取り組み」になっています。この理解に基づいて考えれば、これまで一般的だった事後的な危機管理ではもう時すでに遅し。今我々が直面している危機的状況に対し、事業継続と将来の発展を生むための投資こそが求められるのです。そしてこの重要性に時の首相も気づき、選挙の第一声で連呼したのではないでしょうか。

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2030年、危機管理投資のない企業は絶滅している!?

2030年の企業環境を考えると、2026年時点での危機管理投資の有無は「生き残りの分岐点」になるのではないか、と当サイトは考えています。既に皆さんが日本でも把握されているレベルの世界各地における危機は今後も頻度、規模ともにほぼ確実に増大します。気候変動、地政学リスク、サイバー攻撃、国際物流の不安定化、感染症リスク。これらも今後も増加し、企業活動に直接的な影響を与え続けます。危機管理投資を怠る企業は、事業継続そのものが困難になるでしょう。

また、取引先や投資家が「危機管理の有無」を評価する時代が到来しています。ESG投資の流れの中で、レジリエンス(回復力)は企業評価の重要な指標になりました。危機管理が弱い企業は、調達から外され、投資対象から外れ、取引条件が厳しくなる可能性があります。危機管理は、企業の信用力そのものを左右する要素になりつつあります。さらに、労働者が「より安全な企業」「危機に強い企業」を選ぶ時代が来ています。2030年の労働市場では、安全、透明性、迅速な対応力が企業選びの基準になります。危機管理が弱い企業は、優秀な人材から選ばれなくなり、結果として競争力を失います。危機管理投資の有無は、企業の未来を左右する決定的な要素になるのです。

危機管理投資は、目に見えにくく、成果が数字になりにくい。そのため特に営利を目的とした民間企業では後回しにされがちです。しかし、危機が常態化する時代において、「何も起こらない未来」をつくることこそ、最も価値の高い投資です。国家レベルで危機管理投資が政策化されつつある今、企業もまた、危機管理を「コスト」ではなく「未来への投資」として捉え直す必要があります。

2030年、危機管理投資を行っている企業と、そうでない企業の差は、単なる競争力の差ではなく、生存可能性の差として現れるでしょう。危機管理投資とは、未来を守るための最も確実な成長戦略なのです。
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