衝撃的な事件の裏側で…
みなさんこんにちは、代表の尾崎です。夏休み中の日本の8月、衝撃的な事件が日本で発生しました。埼玉県の中学生が包丁を含む3本もの刃物を持ち出し、東京渋谷付近で見ず知らずの親子連れを刺傷する事案です。被害にあった方お二人は突然見ず知らずの少女に刺されてしまい重傷を負われています。心より早期の回復を願うばかりです。
本事案は日本国内での事案であり、当サイトが本来取り上げる事案とは言えません。また、本件はいわゆる「テロ」として取り上げるにはちょっと性質が異なるため、尾崎の専門性とも少し違います。それでも、今回のコラムで本件を取り上げようと考えたのは、マスメディアが大きく取り上げていない日本国内の深刻な課題があるからです。
渋谷の事件では、犯人である中学生の支離滅裂とも言える供述が注目されており、精神的な問題や家庭環境については多くのコメントがなされています。もちろん、事件の全体像をとらえ、社会全体として類似の凶行を防ぐにはそういった視点も大切だと思います。他方で、尾崎が知る限り大手メディアやインターネットでほとんど触れられていない要素もあるのではないでしょうか?その課題とは…、犯人の少女が刃物3本を持ったまま、何のチェックもなしにJR東日本の路線を当たり前のように移動していたことです。
犯人の少女は警察の調べに対し、武蔵浦和駅から新宿まで電車で移動していたこと、被害者のお二人とは見ず知らずだったこと、人目のつかないところでたまたま二人を見つけた、と話しているそうです。ということは少女の気持ち一つで武蔵浦和駅から新宿の間に同じ車両にいた方、あるいは武蔵浦和や新宿周辺を歩いていた方などが刺されていてもおかしくなかったとも言えます。
もしかしたら今この記事を読んでくださっている方の中で8月20日、午後早い時間帯で埼京線に乗っていた方もいらっしゃるかもしれません。あるいはその日の夕方新宿から事件現場となった渋谷(神泉)付近を歩いていた方がいらっしゃるかもしれません。皆さんが刺されていてもおかしくはなかった、と言える事案ではないでしょうか?皆さんの何気ない日常のすぐそばに殺意を伴った刃物が存在していた可能性があるのです。
似たような事例が2022年7月7日~8日にかけて起こっています。日本はもちろん世界でも大々的に報じられた安倍元首相銃殺事案の犯人が手製の銃を持ち歩いてかなり広い範囲を動いていたことが判明していますよね。
包丁だけでなく、殺傷能力の強い銃を持った人間ですら皆さんとすれ違っている、あるいは電車の隣の席に座っている、という状況もあり得ることはわかっていただけるでしょうか?こちらの事案も現時点まで警備体制や安倍元首相の政治姿勢等へのコメントは多いですが、銃の公共交通機関への持ち込みについて指摘する声はほとんど聞こえてきていないように思います。
公共交通機関に乗る人の持ち物は不明
2022年7月、8月の事案を二つ紹介して事態の深刻さを強調していますが、これは決して2022年に突然表出した危険性ではありません。2012年5月には東京メトロの渋谷駅で、男性が刺される事案が発生しています。この時に用いられたのが刃渡り30センチほどのサバイバルナイフ。犯人はこのナイフをしばらく前からカバンに入れてずっと持ち歩いていた旨を供述しており、何度も何度も公共交通機関内に持ち込まれていたことは確実です。
もっと時間をさかのぼり、極端な事例を挙げるならば1995年の地下鉄サリン事件はどうでしょうか?既に歴史の教科書に載っているようなかなり古い事案ではありますが致死性の毒物を車内に持ち込んでテロ事案が起こった事例です。本事案は複数の人間が役割分担をして組織だった犯行を行っていますので、上記事例と単純に比較できるものではありません。それでも刃物や銃といった誰がどう見ても「武器」とわかる物品以外でも公共交通機関に持ち込み、多くの方を死傷させうることについて多くの日本人が認識したテロ事件と言えます。
【参考コラム】オウム真理教地下鉄下鉄サリン事件を振り返る
このように、海外はもちろんのこと、日本でも同じ車両に乗っている人、公共の場で近くにいる人が何を持っているか、はわかりません。刃物や銃、あるいは爆発物の持ち込みを完全に探知できる状況ではないからです。元首相が公衆の面前で銃撃され死亡する事案、そして見ず知らずの親子が中学生に刺されてしまうという事態を深刻に受け止め、今こそ社会をあげて危険な物品を持ち歩く人物の摘発、事件の未然防止を目指す必要があるのではないでしょうか?
2021年に相次いだ私鉄車内での刺傷・放火事件の後、国土交通省(鉄道会社を所管)を中心に監視カメラを各車両に必ず設置するという対応は行われています。が、監視カメラでは事件があったこと、何がどこで起こっているかを把握することはできても、事件を未然に防ぐことはできないのです。何か別の仕組みを考え、政府、公共交通機関の運営会社、そして利用者である我々も含めた対応の検討が急務なのではないかと考えます。
自分の身を守るための工夫を
とはいえ、事件を未然に防ぐための包括的な取り組みは関係者も多く、そう簡単にできるものではありません。そこで、この記事の最後では皆さんご自身が明日から、いや今この瞬間から取り組むことができる「自分の身を守るための取り組み」をご紹介したいと思います。これは本当に今すぐにでもできます。
それは、公共交通機関や不特定多数の人が多い場所ではスマホやイヤホンを極力使わない、という工夫。先日某私鉄内の同じ車両に乗った方を観察していたのですが、尾崎の目に入る方のうちスマホ等の画面を見ておらず、ヘッドホンも付けていない方はざっと数えられる範囲で53人中6人でした。もちろんこの一回だけで言い切るつもりはありませんが、私がチェックした瞬間は9割近い方が電車の中でそれほど周囲を警戒はしていなかった、とは言えるでしょう。
どれだけ、瞬発力や運動能力に自信がある方でも、異常に気付くのが遅れれば、不審人物や不審物から離れるだけの十分な時間は確保できず、結果最悪の事態にもつながりかねません。周囲の異変をいち早く察知するための最大の阻害要因はスマホやヘッドホンの使用ではないかと尾崎は考えています。
尾崎の専門である海外での安全管理に関していえば、海外の複数の日本国大使館、総領事館が
「歩きスマホやイヤホン使用など、犯罪者に対して自ら『どうぞ、盗ってください』と思わせるような隙のある行動はしないでください」
「公共の場所でスマートフォンを手に持って移動する、Uberなどの到着状況を確認するなど周囲に見える形で携行しない。」
といった注意喚起を繰り返し発しています。スマホの画面に夢中になっていれば近くで銃やナイフを持って近付いてもほとんど気づかないでしょう。直接ご自身に被害が及ぶ状況出なかったとしても、イヤホンで音楽等を聴いていれば悲鳴なども聞こえづらいでしょうから、事件現場から離れるタイミングが遅れることは間違いありません。
皆さんご自身が被害に遭う前に、今一度公共交通機関や不特定多数の人が行きかう場所で皆さんが自分の身を守るためにどうしたらいいか、を考え直していただければ幸いです。
以下、フリー画像から見つけた、街中の「あるある」映像です。普段何気なくやっている行為も実は安全確保の観点からは望ましくないこともある、ということを理解していただけばと思います。
この項終わり