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世界が不安定化する今、差をつける側なのは安全対策投資済みの組織

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気が付いた時には差がついている投資効果

こんにちは、代表の尾崎です。
久しぶりに代表のつぶやきで取り上げたいトピックを見つけましたので本日はそのご紹介をしてみたいと思います。

6月28日日本経済新聞に直近の株式の値上がりの効果が世代や金融資産の保有状況によって格差があるという記事を掲載しました。

「株高の恩恵、高齢層に 資産効果で格差7.5倍」

本記事によれば、金融資産を持っている金額が比較的大きい60歳台以上の世帯では、株価指数が100円上がるごとに消費が6円増加するとのこと。一方で、金融資産が少ない59歳以下の世帯では株価指数が100円上がっても消費の増加はわずか0.8円であり、実に7.5倍もの格差があるとしています。

金融資産に過去ある程度の資産を配分してきた(購入してきた)方はかなりの利益を得ていることは間違いありません。個別銘柄では上昇率に差はありますが、日経平均株価指数は1980年代後半のバブル期を超える史上最高値水準です。米国のダウ平均株価指数等に連動するような資産の場合は円安ドル高も相まって、見た目の資産額は急激に膨らんでいるでしょう。

他方、このような金融資産を購入してこなかった方々からすれば、株価指数が上昇しても、影響を受けません。株価が低迷している時期は金融資産の有無で差がつくことはありませんでしたが、直近だけを見れば、金融資産を持っている方が圧倒的に得をしているといえます。

ただ、実際には金融資産を持っている方でも60歳以上の方は「値上がりした分はそのまま消費に使ってしまおう」と考えがちなのに対して、現役世代は消費を増やすよりは「含み益を含めて将来使う資金にしよう」と考えがちです。結果として、若い世代ほど金融資産の値上がりの恩恵を受けていたとしてもすぐに消費に回らない、という解釈をしておいた方がよいかもしれませんね。
このため、尾崎自身は株価上昇に伴う世代間の恩恵格差が7.5倍もあるようには思っていません。ただ、金融資産を持っている方と持っていない方とで明確に今の資産状況や金銭面を踏まえた精神安定度に差がある、という点には異論ありません。

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過去の自分の行動が変化の時代に格差となって現れる

さて、金融資産を持っているか、持っていないかで大きな格差がついていることはわかっていただけたと思います。ただ、この格差はこの3年程度で急速に広がった事象である点に尾崎は注目します。

ご存じの通り、1990年代から2020年ごろまでは「失われた30年」と呼ばれ日本の経済成長は低調でした。このため、金融資産を持っているか、いないかで経済状況には差がつかず、同じような地域に住み、同等程度の教育を受け、給与水準が同じくらいの会社にいれば生活水準はほぼ同じだったわけです。

言葉を替えれば実際には金融資産保有の有無や多寡に差があったとしても「隠しパラメータ」のように表面的には差が見えないということですね。円預金も株式も債券も値上がりがほとんどない、という状況であればどの形で保有していても結局価値が増えないわけですから、投資をしていようがしていまいが差は出ません。

ところが、時代が移り、金融商品の価値が急激に上がるようになると円預金が大半だった方と株式が主たる金融資産だった方の羽振りは大きく変わってきます。円預金は相変わらずの低金利な一方で、株式は数年前の価値から1.5倍ないし10倍以上に膨れ上がっているわけですから。(2020年末から2024年6月末の3年半で日経平均株価指数は約1.5倍になっています)今まで同じレベルの経済状況だと思っていた方同士でも「隠しパラメータ」が生きる環境になった瞬間に全然ステータスが違ってくる、という現象が今、まさに起きているのです。

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日経新聞電子版よりキャプチャ

 

これはベクトルこそ逆ですが、有名なアメリカの投資家、ウォーレン・バフェット氏の言葉

You only find out who is swimming naked when the tide goes out.

引き潮になった時初めて、誰がハダカで泳いでいたか分かる

とも考え方は似ているかもしれません。株価が好調で多くの銘柄で値段が上がっているときには誰もが危機管理を忘れて株価上昇に酔いますが、ひとたび下落が始まると(引き潮になると)株価下落に備えられていた人と備えられていなかった人が明確になるのです。

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安全対策への投資も「潮目が変わった」瞬間に格差が生じる

同じことが安全対策でも起こります。世の中がある程度安定している時は安全対策にかけるコストや時間、人員とその成果がそれほど比例しません。なぜなら、海外でなんらかの事件・事故・テロ等に巻き込まれる方が少ないですし、万が一被害が発生しても企業・組織の責任が深く追求されにくいからです。

 

ただ、ご存じのように2022年以降世界では国家間紛争が複数同時並行で継続しています。フランスやイギリス、アメリカといった先進国・主要国でも政治的な分断から混乱が発生することも珍しくなくなりました。日本語メディアではほとんど報じられていませんが、クーデター/クーデター未遂がこの1,2年で発生した国も多くあります。第二次世界大戦後では今が最も治安や政治が不安定化しているとの指摘すらある時代です。

 

潮目が変わるとそれまで「隠しパラメータ」だった安全対策への備え=組織的な体制構築、予算配分、人材育成=に取り組んできた組織とそうでない組織に明確な差が生まれるのは自明です。何らかの被害に遭う方は変化に伴いおのずと増加傾向になるでしょう。加えて、世の中の変化を踏まえずに従業員・関係者を派遣していた企業・団体側の不作為として安全配慮義務違反の責任追及されうる変化です。


2020年以前「このくらい覚えておけば大丈夫だから」「安全対策に金をかけるのはただのコストだよ」といった感覚で海外事業展開を進める企業・団体も、「万が一があってはいけないからコストはかかるが安全対策に投資しておこう」「緊急時他の際は会社が従業員・関係者を守る」という意識で取り組んできた企業・団体も表向き差はありませんでした。むしろ後者のグループはコスト面や人件費の面で損をしていたともいえます。ただ、時代と状況が変わればこれまでの投資が効いてきます。世の中が不安定になればなるほど、これまで安全対策に投資してきた企業・団体のレジリエンスが他企業との差となって輝きを増すことになるでしょう。

 

この項終わり