日本人は3日に2件、海外で強盗被害に遭っている
日本にいると、「強盗被害」に遭うことはあまりないように思います。警視庁の統計によると平成29年に日本国内で発生した強盗件数は約1800件。1億2500万人が暮らす国の中で発生する事件数としては非常に少ない発生件数です。
一方、外務省海外邦人援護統計によれば、同じ平成29年(2019年)に海外で日本人が強盗・強奪の被害にあった件数は270件。単純計算すると3日に2回、日本人が世界のどこかで強盗被害に遭っていることになりますね。各種統計によれば、海外で長期滞在されている方は130万人程度、旅行者(出国者)は1700万人程度。海外にいらっしゃる日本人の大多数は短期滞在であるにも関わらず、この数字です。海外で強盗被害に遭う割合がいかに大きいかわかりますね。
発生件数が少ないことに加えて、日本での強盗の特徴がもう一つ。それは他国の強盗と比べて銃が使われるケースが極めて限られているということ。日本国内で一般的に銃は流通しておらず、アメリカや世界各地途上国とは状況が異なります。銃がない場合、武器はせいぜいナイフですので数メートル離れれば、致死的な傷を受けることはありません。では銃があればどうでしょうか?撃ちなれている犯人であれば最も威力の小さい拳銃でも20メートル程度までは致死的なダメージを与えることができてしまいます。
海外での強盗被害は日本よりも発生確率が高く、また金品被害のみならず身体への影響の深刻さも日本とは比べ物にならない、ということですね。
絶対に盗まれてはいけない「もの」はなにか?
強盗被害を避けるために、財布や持ち物を不用意に出さない、周囲に不審人物がいないかよく気を付けて行動する、といった予防措置はありますが、強盗被害を100%防ぐことは難しいです。もし強盗被害に遭ってしまった時、どのように行動すればよいでしょうか?
急に荷物を引っ張られ、奪われた。
日本と違い相手が銃を持っていてもおかしくはない。
そんな緊迫した状態ではとっさの行動が皆さんの生死を分けることもあります。強盗被害を受けた時、皆さんはどんな反応をするでしょうか?
盗まれた金品を奪い返そうとしますか?
逃走した犯人を追いかけて捕まえようとしますか?
護身術に心得がある方は相手をぶちのめそうとしますか?
残念ながらそういった対応方法はオススメできません。被害が金品だけで済んでいたはずのところを命まで奪われる結果になってしまうこともあるのです。結果が非常に残念ですが、こちらの記事も参考になさってください。
コロンビアでの強盗被害⇒追跡⇒殺人被害の事例(日本経済新聞)
間違ってはいけないことは、金品も重要ですが、それ以上に皆さんご自身の命はもっと大切です、ということ。金品は失っても生きていけますし、周囲の人や日本国大使館などが何らか助けてくれます。ただ、命を失ってしまっては、そこから先は何もなく、残るのはご家族の悲しみだけです。
どれだけ多くの金額が財布に入っていても、どんな高価な物品を奪われたとしても・・・
絶対に盗まれてはいけないのはあなたの命、これはとっさの反応でも忘れないようにしてください。
金品目当ての強盗には無抵抗・命を狙われる場合は死に物狂いで抵抗
とはいえ、とっさの行動は頭で考えるよりも先に、事実上無意識で進んでしまうもの。頭でわかってはいるけど、ついつい盗られた荷物を奪い返そうとしてしまった、というのはよくあるパターンです。ただ、それをやってしまうと、ご紹介した通り、命まで奪われてしまうことだってあるのです。
では、とっさの行動で、強盗に反抗したり、荷物を取り返そうとしたり、というNG行動を割けるにはどうしたらいいでしょうか?
実は、普段からなんらかの被害に遭った時を想像し、「イメージトレーニング」をすることで、無意識に出てしまうとっさの行動をある程度コントロールできるようにすると生き残る可能性を高められます。
・荷物を強い力で引っ張られたらそれ以上の抵抗はやめて手離す
・万が一貴重な金品が入っていても諦める(諦められるように金品は簡単に盗られないところに入れておく)
といったイメージトレーニングです。
本当にイメージトレーニングで無意識の行動を変えられるの?と思われるかもしれませんが、日本人が小さいころから訓練している通り、地震が来たらすぐ机の下に潜る、という行動はほぼ無意識にできることを思い出してください。無意識の行動も、日ごろから訓練すると思っている以上にコントロールが可能なのです。
そこで、このコラムの最後に強盗被害に遭った時のシンプルな行動原則(イメージトレーニングのヒント)をお伝えします。
それは海外で金品目的の強盗被害に遭ったら無抵抗に徹するということ。前のページでもご説明した通り、絶対に盗られてはいけないものは皆さんの命です。強盗の狙いはあくまで金品。ですので、強く抵抗されたり、追跡されたりしない限り、命まで盗ろうとは思っていないことがほとんどです。つまり、金品を諦めてしまえば、命だけは助かる可能性が高まるのです。
ただし、テロや襲撃など、金品ではなく、あなたの命を奪うことが目的だと考えられる場合は無抵抗のままでは100%殺されてしまいます。ですので、この場合は死に物狂いで抵抗することが必要です。こちらは過去のコラムにも書いた「緊急事態が起こった際の三原則」(RUN・HIDE・FIGHT)も参考にしてください。
これから夏休みを迎え、海外に旅行される方が増える時期です。ぜひとも多くの方に覚えていただきたいシンプルな原則は以下の通り。
海外で「ヤバイ!」という状況になってしまったら・・・
金品目当ての強盗には無抵抗!
命を狙われる場合は死に物狂いで抵抗!
どうぞみなさま海外での旅行を楽しんで、無事に日本にお戻りください。
こちらのコラムは今年初めて海外に行く方や海外旅行初心者の方にも読んでいただきたいと思っています。ご家族やご友人にもぜひとも記事を共有いただき、少しでも日本人が命を落とすような事態が避けられると嬉しく思います。
この項終わり