留学先に到着後はすぐ『在留届』を提出しよう

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海外生活中の住民票に相当するのが「在留届」

まだまだ暑い日が続きますが、いよいよ8月も終わりが近づいてきました。9月からは海外、特に欧米の大学や大学院の新学期が始まる、という国・地域も多いですね。筆者の周辺でも一定期間社会人として働いた後、退職してインド留学に行くかたや会社の研修の一環としてイギリスに専門分野の勉強をしに行く、という友人が何人かいます。海外留学は日本ではできないさまざまな体験ができますし、語学力や異文化理解力が培われて就職や更なるキャリアアップにもプラスに働く時代です。ぜひとも留学の機会を活用してみてください。

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MBAや専門分野について留学、となると1年~2年現地にお住いになると思います。また、そこまで長期での滞在にならない大学生・大学院生の交換留学等でも一学期分=約半年の留学にご出発される方が増えるのが8月~10月のこの時期。このコラムでは、そういった長期海外居住の時、現地到着直後にやっておくとよい「在留届」の提出について改めてご説明します。大学を含む教育機関で送り出す立場の皆さんも是非ご参考になさってください。

 

さて、日本で生活していた時にはお住いの自治体(市区町村)で住民登録されていたはずです。住民登録をすることによって『あなたはこの自治体の住民ですよ』、ということが証明されますので、税金を使って行う自治体のサービスを受けられるようになります。この住民登録によって、行政手続きの際には住民票を取ることができますし、選挙の際の投票用紙も自動的に送られてきていました。アルバイト先への提出が必要だったり、公立図書館やスポーツ施設の利用のために登録が必要だったりもしますね。

 

住民票ほど知られていませんが、実は海外で生活する方も住民登録に相当する制度があるのです。それが今回ご紹介する「在留届」。ご自身が滞在している都市を管轄する日本国大使館もしくは領事館にこの「在留届」を提出することで、日本政府があなたの所在地を把握することができるのです。この「在留届」、旅券法(旅券=パスポート)という法律でも3か月以上滞在する人は提出が義務付けられていることもお伝えしておきます。

この「在留届」正確な統計はないようですが、外務省から伺った話によると留学生の提出率がそれほど高くはないとのこと。私の聞き取り調査や留学関連の仕事をしている方からお伺いした話からも、企業から派遣される海外赴任者に比べて大学や大学院からの留学生の方はほとんど手続きを行っていないようです。

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「在留届」はWebでも紙でも提出できる

では、この「在留届」どうやって提出するのでしょうか?滞在先が首都でも大都市でもなく、日本人がほとんどいない町だったらどうしたらいいのでしょうか?

ご心配なく。「在留届」の提出は大使館や領事館に直接持っていく必要はないのです。便利な世の中になったもので、外務省が運営するHPからオンラインで提出することができます。また、外務省が定める「在留届」書式のPDFに手書きで記入し、FAXやメールで送っても受け付けられます。

外務省が運営する「オンライン在留届」申請システム

 

こちらが「在留届」の提出フォーマット(部分抜粋)です。見ていただければわかる通り、記入する内容もそれほど複雑ではありません。飛行機の中で記入するような「入国カード」とそれほど変わらないのではないでしょうか。記入にそれほど時間を必要とするものではないのです。

 

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「在留届」を提出するとこんなメリットが!

そうはいっても何のために「在留届」出すんだ?

そもそも

 

・ 「在留届」なんて言葉を聞いたことがない

・ 自分の先輩や友人で留学していた人も出していなかった

・ 「在留届」を出しても意味がないじゃないのか

 

とお考えかもしれませんね。

では、この「在留届」を提出したときにメリットはあるのでしょうか?はい、もちろんメリットがあります。

 

ご説明した通り、この「在留届」は各自治体の住民票に似ており、大使館や領事館が担当地域に何人日本人が住んでいるかを把握するためにも使われています。そして、その大使館や領事館が提供する(無料の)行政サービスを受けるためにはこの「在留届」は必須です。

具体的にサービスを列挙してみましょう。

 

・ 「緊急メール/総領事館からのお知らせメール」が配信される(当然日本語で!)

・ 万が一大規模災害やテロ等に巻き込まれた場合に日本政府の援護(国外退避の支援など)が受けられる

・ パスポートを万が一紛失した際の再発行や各種証明書の発行がスムーズに行える

 

一点目、皆さんの安全にも関わる緊急メールの事例を示しましょう。数日後に国際空港で大規模なデモが行われること、不用意に会場に近づかないほうがよいことやあらかじめフライト状況の確認が推奨される旨が書かれていますね。もしこの情報を知らなければ抗議を行う群衆に取り囲まれてしまい、「身動きが取れない!」「衝突に巻き込まれた!」といった最悪の状況になりかねません。

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現地の言葉ではなく、日本語で情報が入るのでこういった情報を受け取らない手はないでしょう。

 

二点目は万が一に備えたメリットです。日本では地震や洪水といった自然災害が一定の頻度で発生しています。その時自治体が避難所を設置し、救援物資を配ったりしていますが、あれは住民に対する行政サービスですので、本体住民登録されていなければそうしたサービスは受けられません。

では海外で自然災害やテロの被害に遭った場合はどうでしょうか?海外での自国民保護は日本政府の役割の一つであり、税金を用いて無料で各種のサービスが提供されています。当然、緊急事態の際の日本国民の保護も役割です。ただし、在留届を提出済みで、大使館・領事館が確認できる滞在者リストに載っている方とまったく初めて出会う方とどちらがスムーズに援護を受けられるでしょうか?そう、当然リストに載っている方です。

 

言葉や習慣が日本とは異なる中、異常事態が発生しているとどんな方でもパニックになります。そうした状況に遭遇したことをイメージしてみましょう。現地の言葉で案内される安全な場所への避難や飲食品の確保、怪我の治療などなど、すべて自力で対応できるでしょうか?もし、日本語でいろいろと助けてもらえるなら、こんなにありがたいことはありませんよね。到着直後にオンラインもしくは紙を一枚提出するだけで、万が一の際に大きな差が出るのです。

住民票と違い、「在留届」の提出は義務ではあるものの、罰則規定がありません。そのため、一般的に数年~10年程度駐在し、お仕事をされる方に比べて留学生のみなさんは「在留届」を出さないまま過ごされる方も多いようです。ただ、「在留届」を出す手間に比べて、得られるメリットは圧倒的に大きいのです。ぜひとも、到着直後に担当の大使館もしくは領事館に「在留届」を提出してください。

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