テロの発生傾向がある程度認識できる
前のページで国務省報告書の概要をお伝えしました。
最後は同報告書の付録として公表されている統計情報(STATISTICAL INFORMATION ON TERRORISM IN 2019)に記載されている表を見ながらテロの発生傾向を読み解いてみましょう。
2018年版に引き続き国務省報告書付録では攻撃主体者(perpetrator)別の被害者属性が分析されています。一口に「テロリストグループ」もしくは「過激派武装組織」でもその標的の傾向には大きな差が確認されています。
例えば、アフガニスタンを拠点とするタリバンは政府関係機関や軍を標的としていることが明確であり、民間人の被害が発生したのは全体の10%前後となっています。これに対し、ISISが実行したテロでは民間人が巻き込まれるケースが最も多く約35%に達しています。
似たような標的の違いはいずれもアフリカで活動が観察されているアルシャバーブとボコハラムの間でも観察されます。より軍関係者を狙い撃ちしようとしているのはソマリアを拠点にケニア等で活動を行うアルシャバーブですが、ボコハラムの方は民間人を巻き込んだテロが圧倒的に多く、同組織によるテロの60%で民間人が被害に遭っています。
なお、例年統計データの最後にテロ上位10ヶ国(アフガン、シリア、イラクetc)の国別分析がなされています。そのおまけ(?)としてついているサヘル地区(ブルキナファソ、マリ、ニジェール)で昨年比テロ件数が急増(50%増)という数字がなかなか印象的です。この地域での被害者属性分析によれば、民間人が最も多くなっており、巻き添え被害は深刻です。渡航される日本人、日本企業関係者は少ないかもしれませんがアフリカへの進出等を検討されている場合には治安の傾向に十分注意が必要といえます。
全世界をまとめた傾向ですので、あくまで一般論にはなるのですが、こういった傾向を知っているか知らないか、滞在地域でどういった組織の攻撃を受ける可能性があり、その標的はなんなのか?を把握するだけでも皆さんの命を守れる確率は上がるのです。
この項終わり