【事案分析・補足】「トレンド転換期」は最も慎重に

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 インドネシア スラバヤ周辺の連続テロ概要

〇インドネシア第二の都市スラバヤ周辺で自爆テロ(未遂含む)が連続発生

〇一件目は13日(日)早朝、三件連続でキリスト教教会三か所で自爆

13人が死亡、31人が負傷。

〇二件目は13日(日)夕方、スラバヤの南側シドアルジョのアパートでテロ未遂

治安当局の摘発捜査中に一家が自爆したため、一般人に死傷者なし

〇三件目は14日(月)早朝、地元警察本部ビル入り口で自爆

警官4名と民間人6名が負傷

〇いずれも女性を含む家族による「一家総出」のテロ行為

〇上記三件の事件後も、現地治安当局はスラバヤおよびシドアルジョで過激派グループJAD(Jamaah Anshar Daulah)関係者の摘発を実施し、少なくとも6名を逮捕し、2名を殺害(ジャカルタポストより)

〇ISはアマク通信上で1件目と3件目について犯行声明を発表

 

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簡易な分析コメント(追加)

一件目の事件が発生した後に公開した前回記事でも述べましたが、二件目、三件目の事案まで立て続けに近隣で発生していることを踏まえれば、一連の事件は大きな同時多発テロもしくは連続テロとして計画されたと考えるほうが自然です。

また、一件目、三件目については事案発生からすぐにISがアラビア語でも犯行声明を発表しており、また現地治安当局からも実行犯らは指導者がISに忠誠を誓っているJAD関係者であると発表がありました。断定はできませんが、IS中枢もしくはISに関連する地元の過激派組織からの支援を受けて、それぞれの家族が犯行を実行したものと想定できます。

 

一件目の標的は明らかにキリスト教の教会であり、三件目の標的は明らかに警察本部です。標的そのものは明確であり、これまで世界各地で発生したイスラム教過激派が頻繁に狙ってきた種類の施設でした。こちらも断定はできませんが、「異教徒」(不信心者)であるキリスト教徒への攻撃、(IS流の解釈に基づく)イスラム教らしからぬ統治を行う政府機関・治安組織への攻撃を狙っていたものと想定されます。

 

また、一連の事件発生のタイミングはラマダン開始直前であり、かつアメリカの在イスラエル大使館がエルサレムに移転する記念式典が開かれる日(14日)当日の事件も含まれています。各種メディアが関連付けて報道することも想定して、計画立案者が実施日を決めている可能性も否定できません。

 

 

 

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インドネシアではテロの「トレンド転換」が発生した可能性アリ

一連の事案で最も注目すべきは三つの事件ともに、女性(母親、娘)を含む一家総出で自爆を計画、実施していた点です。これまで東南アジアでは女性の自爆犯によるこの種の犯行は観察されてきませんでした。一件目の事件で自爆した母親は「インドネシア初の女性自爆犯」としてメディアでも報じられています。

 

一般的にテロのリスク分析を行う際、

「これまで発生してきた事案と異なる点」

が生じた場合、しばらくの間は十分に警戒を強めなければならない、と言われています。弊社では「トレンド転換」という言葉を用いています。

 

今回の事例で言えば、女性の自爆犯、家族総出での自爆、という手段はこれまでになかったものです。それが(一件は未遂に終わったとは言え)三件も同時に発生したことは、今後も類似の事件が続発する可能性がある、と考えられます。

なぜ、これが十分な警戒を必要とするのでしょうか?

それは治安当局や情報機関の対策は過去に発生してきた事件を想定し、そうした事態を未然に防ぐために計画、実施されているからです。つまり、これまで男性しかテロの実行犯でなかったという事実を踏まえ、治安当局は不審な男性がいないかをマークしていれば、テロ実行前にある程度対策を講じることができました。しかしながら、今後は家族連れや女性のみでもテロが行われるとなれば、これまで積み重ねてきたノウハウが通じません。また、より広い範囲の捜査、監視を行わざるを得ず、必然的に当面の間は対応が後手にまわらざるをえないのです。

 

爆発現場の写真を見る限り、今回用いられた爆発物の威力はそれほど強力ではなさそうです。また、発生場所も公共の場所(一般の道路上、もしくは自宅)であることから、テロ行為の難易度としてはそれほど高くありません。

 

しかしながら、テロの「トレンド転換」が発生していると思われる今、これまで通りの守り方ではテロが防げず、さらに予測していないような事案が発生することも想定しておくほうが安全です。弊社では向こう3か月程度はインドネシアに限らず、東南アジア各地で  類似の犯行(女性も含む自爆犯によるテロ)に十分注意が必要と考えています。

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過去の「トレンド転換」事例を踏まえて

2016年7月1日に発生した、バングラデシュの首都ダッカでのレストラン襲撃事件の直前には同国でのテロ件数が急増していたという背景がありました。(全世界的なテロ件数統計では目立ちませんが、同国内での過去の件数と比較すると2015年のテロ件数が急激に増えていました)

 

また、アフリカのブルキナファソでは2016年に比較して、2017年のテロ件数が急増していました。その流れの中で、本年3月には首都ワガドゥグの軍本部やフランス大使館への襲撃事件が発生しています。

 

 

テロは100%予測できるものでは当然ありませんが、何らかインパクトの大きな事件が起こる前には、それなりに「予兆」があります。今回のインドネシアでの自爆テロへの女性の参加もより大きな被害が生じるテロの「予兆」でしかなかった、というシナリオも念頭に、十分な警戒をオススメします。

 

本日より約1ヶ月のラマダン期間中、全世界で活躍される皆様はぜひとも安全第一でお過ごしください。