西日本豪雨 実際に避難した人の割合
7月上旬、西日本を襲った豪雨の被害は8月の声が聞こえてきている今もまだまだ深刻です。台風12号による被害の拡大も心配され、被災地の皆様には心よりお見舞い申し上げます。
さて、甚大な被害をもたらした西日本豪雨ですが、ある意味では非常に興味深い、そしてまた深く考えさせられる広島県の調査結果が発表されました。それは行政側として災害の発生を予見し、避難を「指示」した対象者217万人のうち、実際に避難所に避難していた人数が6,000人だったとのこと。
7月6日の午後9時台に広島県呉市の約20万人、福山市の約47万人に対して避難指示が出たのを皮切りに、午後10時30分の時点では、避難指示の対象は217万人に広がっていました。ところが、午後10時30分の時点で各地行政機関が用意した避難所に避難してきていた数として広島県が取りまとめた数値が6,000人だったそうです。割合にして0.27%。
広島県としては、夜9時を過ぎてからの避難指示では遅かったのではないか、避難場所の指定が適切だったのか、など当時の気象条件などを踏まえながら再検討し、改善を検討したいとのこと。これまでに107人の死亡が確認されている広島県として、
まだなにかできたのではないか
今後県民の犠牲者を減らしたい
という意図を感じます。貴重なデータの提供に感謝するとともに、ぜひとも全国に教訓や改善点を広めていただきたいと考えます。
「安全第一」はみな理解している
他方、行政側の反省や将来の改善と同時に、そこで暮らす我々も強く心にとどめておかねばならないことがありそうです。先日ご紹介した倉敷市のハザードマップの話に加えて今回の広島県の発表からも自然災害による被害を「自分ごと」として捉えることの重要性を示しています。
今回の広島県の発表で尾崎が感じたのは、
・危ないから気を付けようね
・危なくなる前に避難しましょう
・自分の安全が最優先ですよ
・最悪の場合はここまで水が来るかもしれませんよ
といった注意喚起だけでは、避難には至らないのだ、ということ。
上に挙げた四項目を聞いたら誰もが
「そりゃそうだよね」
「うんうん、気を付けよう!」
と頭で理解されるはず。
ただ、豪雨の際、避難された方は0.3%にも満たない、つまり理解が実践につながった方はごくわずかでした。頭でわかっているということと実践することは違う、ということを改めて痛感させられますね。
「実践」しなければ安全は確保できない
海外で、特に一般犯罪の被害に遭うケースではその半分以上がご自身の不注意です。
例えば、レストランや空港・駅等で荷物から目を離してしまった、財布を抜かれやすいポケットに入れていた、という事情で被害に遭うケース。出発前にガイドブックや外務省のHP等でも気を付けて、と書かれていたのは読んでいたけれども・・・という方もいらっしゃいます。
必要な注意喚起を読んでいたにも関わらず、被害に遭ってしまった。被害に遭った後で
「自分だけは大丈夫だと思っていた」
「このくらいなら問題ないか、とついやってしまった」
「日本で普段何気なくやっていたので・・」
と後悔された、という話もよく伺います。
日本国内の災害被害でも、海外での安全管理でも、最後に自分の身を守れるのはご自身です。防災の専門家や行政機関、また我々のようなセキュリティコンサルタントが想定される被害や対策方法を推奨しても、皆さんそれらを「実践」しなければ安全は確保できないのです。注意喚起を読んだよ、安全対策のセミナーで聞いたよ、という「理解」のレベルではなく、皆さんご自身の安全を守るための「実践」に結び付けるようにお願いします。
場合によってはこの程度のことで過剰反応じゃないのか?、臆病過ぎないか?、という気持ちになることもあるかもしれません。特に海外での安全管理についていえば、お金や手間をかけても「何も起こらなかった」ということがほとんど。結果的に対策が無駄になったな、と感じることもあり得ます。そして、時間を遡れない以上対策を講じる手間を惜しんでいたら被害に遭っていたかもしれない、ということを実証することも不可能です。対策を講じたけれども何も起こらない、が繰り返されるとだんだんと対策のレベルを下げたくなるのが人間の性。
ただ、「臆病」と言われるくらいに常に安全対策を実践している人が、被害を受けにくいのもまた事実です。災害の際も海外安全についても、皆さん自身が必要な安全対策を(理解にとどめるのでなく)「実践」していただくことが、生き残る確率、被害に遭う確率を格段に下げることにつながると考えています。