法制化されるから対応する、でよいのか?
話が少し遡りますが、平成最後の通常国会で対策の義務化が議論されるであろう各種ハラスメントの一番最初の事例はなんでしょうか?「セクシャルハラスメント(性的嫌がらせ)」という言葉が最初に話題になったのは1989年の話。この前後でセクハラに関連する裁判が行われており、流行語大賞(第六回)に選ばれたことで、言葉が世間に一気に広がりました。
では、「パワーハラスメント」という言葉が初めて誕生したのはいつかご存じでしょうか?こちらはセクハラよりもずっと新しく、その源流は私が知る限り2001年。クオレシーキューブという会社が「パワーハラスメント」という言葉を初めて生み出し、その対策や関連研修を細々と続けてこられたものと認識しています。
これ以外にも多くのハラスメントが存在する時代です。マタニティハラスメントやアカデミックハラスメントと言った言葉も徐々に世間に広まってきているように思います。が、いずれもセクハラやパワハラほどの歴史はありません。
つまり、平成最後の通常国会で法制化が議論されるテーマは、最も古いものでも平成元年に生まれた概念なのです。30年前と言えば、現在各企業の幹部の方が30代でばりばり働いていた頃です。(「24時間働けますか?」という言葉もありましたね)。これほどまでに新しい概念ですので、現在現役でご活躍中の方の中には各種ハラスメント行為に関し
「昔はこのくらい当たり前だった」
「自分もこうやって育てられたので、同じように指導する」
という感覚を覚えてしまうのも理解できなくはありません。
しかし、時代はどんどん変わっていくのです。厚生労働省の原案に近い形で法制化が決定されれば、多少の猶予期間はあっても近いうちに企業は対応を講じざるを得ません。法律で定められた対応をせずに、企業活動を続けるのは文字通り違法になってしまいます。
そのため、今セクハラやパワハラについて企業向け研修を行う団体や会社は大忙し。年間100回以上のセミナーが行われているようですが、いずれも定員超過で企業側がなんとか法制化前に対策を検討しようと躍起になっているようです。
各種セミナーを受けたり、担当者を急遽置いたり、という動きは必要だと思いますが、個人的には「泥棒を捕らえて縄をなう」やり方だなぁという気持ちを禁じえません。経営とは時代の少し先を読んで先行投資をしたり、問題を未然に防ぐことのはず。であれば、
「法制化されるから対応する」
ではなく、
「時代の変化に合わせこれまで通りの対応ではまずいから先手を打って対策を講じる」
という企業がもっとあってもよかったのに、と感じるのです。
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