海外での安全配慮義務を履行するために(後編)

海外出張(転勤)と国内出張(転勤)は全く別物

前回のコラムで企業・団体には雇用関係等にある関係者が安全かつ健康に業務ができるよう労働環境を整える義務があることをお伝えしました。日本国内では工場や建設現場などで安全帽や安全帯の着用を義務付ける、熱中症対策として定期的に休憩を取らせるといった対策が広まりつつあります。

 

また、最近では過労死やうつ病などの対策のために超過勤務が長くなりすぎていないか、指導の行きすぎなどがないか等記録を残すように工夫している企業・団体も増えてきています。産業医を雇用して関係者がいつでも健康状態を相談できるようにしておく、というのも企業・団体側が安全配慮義務を満たそうとしている一つの取り組みでしょう。

 

日本国内であれば、上記のような取り組みをしていれば、著しく安全配慮義務不履行を問われることはないように思います。しかしながら、海外に関係者を派遣するうえで、日本国内と同じ取り組みしかしていませんでした、ではマズいのです。なぜなら日本の常識が海外で全く通用しないケースの方が多いからです。

 

日本ではそもそも「リスク」が存在していないといっても過言ではないテロや銃器を用いた凶悪犯罪への備えは必要ありません。たとえ日本国内で関係者がこのような事態に巻き込まれても企業・団体の責任を問われることはないでしょう。しかしながら、海外ではこうしたリスクが存在していることは外務省等が明確に公表しています。

 

日本の常識が海外でも通用する、と考えてしまえば、国内出張と同じ手続き、準備で海外出張を命じてしまいがち。もしくは国内での人事異動と同じような感覚で海外への駐在を発令してしまうこともあるかもしれません。万が一、海外のリスクを知らないまま関係者を派遣し、現地で事件や事故に巻き込まれた場合、

 

「なんで日本と同じレベルの対策しかしていなかったのですか?」

 

と安全配慮義務違反に問われる可能性は免れません。

「温泉(Hot spring)」として紹介された濁った温いお湯だまり(カリブ海に浮かぶドミニカ連邦にて)。日本の温泉とは全く別物。

 

【次ページでは・・・関係者を海外に派遣する際の具体的な安全配慮取り組みをご紹介します】