香港でのデモ活動が継続中
2019年6月中旬から香港では毎週末のように民衆による反政府デモが行われています。当初は香港行政府が「逃亡犯罪人条例」を改正し、香港警察が拘束した犯罪容疑者を中国本土にも引き渡せるようにしようとしたことへの反対運動でした。
香港が中国の一部でありながら、中国本土とは異なる環境を保っている背景、それは一国二制度という香港特有の要因にありました。逃亡犯罪人条例が改正され、香港警察が拘束中の犯罪容疑者を中国本土を含む、あちこちの国に引き渡すことを認めたらどうなるか。中国本土、共産党政府が弾圧したい香港在住のジャーナリストや思想家等が何らかの理由で香港警察に拘束させ、身柄引き渡しを要求することで事実上中国本土の警察による逮捕が現実となるのではないか。これが香港の一般市民が懸念した状況です。
自分たちが生活している社会全体が根底から覆されるのではないか?という想いから、普段政治とは関係が薄かった学生や商店主等までもが「逃亡犯罪人条例」改正に反対するグループに同調しました。
この「逃亡犯罪人条例」の改正中止を目的としたデモは香港行政当局の想像をはるかに超え、多くの市民の賛同を得ました。主催者発表では200万人、とされ、この数字を信じるならば香港の人口(約800万人)の4人に1人が参加したことになります。その後も民衆による反政府デモは収まらず、7月9日、香港行政府を率いるキャリー・ラム行政長官は「逃亡犯罪人条例改正案は死んだ」と記者会見で発表。事実上改正案の成立を断念する旨を発表するに至りました。
当初の目的を達したものの、香港でのデモは継続しています。今度は中国本土の影響力を低下させ、香港を民主化するよう要求するデモに変容しつつあります。しかしながら、この動きを妨害する勢力もあらわれており、混乱は継続中というのが現状です。
(日本政府外務省による8月2日付安全対策メッセージはこちらから)
香港のデモ参加者はどのくらいか?
さて、香港の現状をおさらいしたところで、デモの参加者数がどの程度だったのかを確認してみましょう。
先ほどのページでは、「主催者発表で200万人」とご紹介しました。この数字は6月16日のデモを呼び掛けた団体の一つ民間人権陣線による参加者推計です。確かに相当数が集結し、徐々に移動している様子が映像から伺えます。しかしながら、香港の住人の4人に1人が本当にこのデモに加わっていたのか、と言われればやや疑問が残る数字です。
6月16日の香港住民デモの移動ルート(ロイターのウェブサイトよりキャプチャ)
では、取り締まりを行っていた警察当局側はどうでしょうか?警察によると参加者数は338,000人。先ほどの主催者発表の約6分の1となっています。この数字はデモの映像と比べてもいかにも小さく発表されている印象です。通常治安当局が発表するデモ参加者数と主催者が発表するそれとは乖離があるとはいえ、さすがに香港における両者の参加者数推計は差が大きいですね。
香港大学では独自に人の動きなどからデモの参加者数を推計しており、概ね50万人~80万人が参加していたのではないかとみている様子。当サイトも映像の解析や現地情報から「デモ参加者数は100万人弱」との推測を行っていました。主催者発表と警察当局発表の中間あたり、当たらずとも遠からずではないかと自負しています。
【次ページでは・・・デモによる日本人、日本企業への影響を考えてみましょう】
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