Global Peace Index(世界平和指数)
2022年6月オーストラリアを拠点とするシンクタンク、Institute of Economics and Peace が「Global Peace Index (世界平和指数)」の最新版を発表しました。この指標は犯罪の発生率や暴力的なデモ、テロの発生率や件数のほかに治安当局の能力、核兵器の保有実態、国連の平和維持活動への資金提供等を指数化し、各国の平和度を総合的に評価したものです。
制度面や資金面を含む23の指標を基に計算されていますので、必ずしもその国の治安情勢や政治の安定度だけが評価されるわけではありません。しかしながら、概ね、世界中の安全とされる国が見えてくるという意味で参考になるランキングと言えるでしょう。
2022年版の世界平和指数上位国は次の画像の通り。最上位にランキングされたのは昨年に引き続きアイスランドでした。日本は世界で10位、アジアではニュージーランド、シンガポールに次いで第三位ということになります。全世界163ヶ国のうち上から10番目なのですからやはり世界的にみれば日本は「安全な国」と評価されていると言えるでしょう。
こうした国のランキングはあくまで目安ではありますが、なぜここでご紹介したかというと海外での安全対策の目安として便利だからです。我々が口を酸っぱくして、日本人の皆様に
「海外では日本と違って普段から安全対策を意識してください!」
と訴えているのかというと海外では日本よりもリスクが高いことが一般的だからです。世界平和指数だけを見ても、日本よりも安全とされている国は9つしかありません。世界はこれだけ広いのにたったの9、一桁です。ちなみに旅行者が多く、日本人の一般的なイメージとして「危険」だと思われていない国の指数はどのくらいかというとドイツが16位、台湾は30位、イギリスは34位、韓国が43位、ドバイのあるUAEは60位、フランスで65位となります。さらに下に目を移していくとタイが103位で、アメリカに至っては129位となっています。
海外での安全対策を考える際重要なのは「日本との比較」です。海外への旅行とはすなわち、日本と比べてリスクの高い場所に行くということ。普段の状況を当たり前だと思って、無防備に(日本と比べて相対的に危険な)海外に出かけていけば、予想していなかった危険な目に遭うこともあり得るわけです。海外に渡航する際には、日本国内で普段暮らしている時と違うレベルの心構えが必要になるということがわかっていただけますでしょうか?
日本は世界的に安全度の高い国(世界の都市安全指数)
せっかくなので、もう一つランキングをご紹介しましょう。
英エコノミスト誌の関連機関である、EIU(Economic Intelligence Unit)が発表している「Safe Cities Index」(世界の都市安全性指数)という都市別安全度合いランキングがあります。こちらの最新版は2021年8月下旬に発表されたものです。日本のNECが作成に関与していることもあり、世界全体の安全対策に日本語のページが用意されているのがありがたいですね。
こちらの調査は世界各地の60都市に対し、1)サイバーセキュリティ、2)医療・健康環境の安全性、3)インフラの安全性、4)個人の安全性、5)環境の安全性、のそれぞれの採点を行い、総合点順に並べたもの。日本の都市としては東京と大阪の2都市が調査の対象となっています。
こちらのランキングの結果だけを抜粋して紹介するとこのようになります。総合スコアの順番で行けば、東京が第5位、大阪が第17位。この調査は2015年の第一回から、17年、19年、21年と4回目の実施となります。過去3回、東京、大阪ともにトップ3位以内を維持してきたことを考えれば今回、特に大阪のランキングが大きく落ちているといえます。他方で、過去4回が1位、今回も5位以内をキープし、総合スコアも80点を確保している東京は世界的に見ても最も安全な都市のひとつと言えるでしょう。
参考までに、前回2019年版の上位も見ておきましょう。1位が東京、3位が大阪であることを確認していただければと思います。都市別で見れば、世界の主要な都市と比較して東京や大阪は極めて高く評価されていたわけです。
日本国内のニュースだけを見ていると
元首相を手製の銃で暗殺した
警官を襲い、拳銃を奪う事件が発生した
悲惨な交通事故が次々と起こっている
新幹線や列車の中、あるいは小学生の通学バス停での無差別殺人が発生した
小さい子供が犠牲になる事件が繰り返し報道される
ワクチン接種も遅いし、医療体制の整備も全然進んでいないのではないか?
といった暗いニュースが多い今日この頃。こんなに悲しいニュースが毎日起こっているのに、日本が治安がいいなんてことあるのか?、まして医療・健康環境の安全性が高いなんて本当?とお感じになるかもしれません。が、世界的でも、同じような暗いニュース、安全や健康の確保ができていない状況は各国、各地で発生しています。
ギャングの抗争に巻き込まれお母さんと小さい子供たちが巻き込まれて死んだ
麻薬組織と思われるグループがある村落を壊滅させた際の大量の死体が農場から発掘された
学校やレストラン、政府庁舎等で銃の乱射事件が発生した
宗教行事やイベント等を狙った爆弾テロが続いている
隣国の武装勢力が民間の飛行機も使う空港にロケット砲を打ち込んだ
など、詳しく書くのもはばかられるようなニュースは日々我々の手元に入ってきているのです。日本に不幸な事件・事故が全くないわけでは決してありませんが、相対的に見ればやはり日本は平和で安全な国なのです。エアコンの効いた快適な環境で過ごすときの服装や装備のまま、灼熱の砂漠や極寒の高山帯に行ったら命が危ないのは言うまでもありません。同様に世界全体で見れば安全とされる日本の常識に基づいて手荷物や行動計画を立てていると、渡航先の治安情勢・社会環境によって命にも危険があることになりますね。
その分、日本から一歩外に出るとき、つまり海外に渡航する時には、
「いつも暮らしている日本よりもリスクが高い場所に行くのだ。用心しなければ。」
ということを改めて認識していただきたいのです。
諸外国の日本向けトラベルアドバイスを比較する
日本人が海外に旅行する際には、
「いつもよりリスクの高い地域に出るので普段よりも用心してください」
というアドバイスが必要です。
では、反対に日本よりも治安が悪いと評価されている外国の方が日本にやってくるときにはどのようなアドバイスがなされているのでしょうか?日本政府外務省が海外に旅行する日本人に向けたトラベルアドバイスを提供しているのと同様、世界の主要国で外務省に相当する政府機関も自国民向けのトラベルアドバイスを公開しています。そうしたトラベルアドバイスを確認すれば、世界の国が日本という国の治安をどのように見ているのか、また日本を訪れる人が注意すべき点としてどんなことが書かれているのか確認ができるのです。
海外になどもいらっしゃっている方の中には日本政府外務省のページはよくチェックしているよ、とおっしゃる方は多いかもしれませんが、ではアメリカ政府国務省が日本の治安情勢をどのように見ているか、ホームページでチェックされている方はほとんどおられないように思います。同様にイギリス政府やオーストラリア政府も独自の視点で日本の治安情勢を踏まえたリスク評価をしているのですがその内容ご存じでしょうか?
ということで、アメリカ・イギリス・オーストラリアの三か国がそれぞれ自国民向けに発表しているトラベルアドバイスを日本語で簡単にまとめてみました。日本人が日本国内を旅行する際に治安等のリスクを気にすることはほとんどないでしょうし、まして外国の政府ページで日本の情報を確認することなどまず想像できません。ですので、こうした情報を日本人である皆様が普段チェックすることはないと思いますが、それゆえ興味深い情報になっているのではないかと思います。
新型コロナウイルス感染症についていえば、イギリスは2021年10月以降、日本からの旅行者に対しワクチン接種が証明されれば入国前の検査や自主隔離期間は不要であるとして非常に緩和的な入国措置を取っています。自国民であるオーストラリア人を含めすべての人の海外からの入国を一時ストップし、またオーストラリア在住のオーストラリア人には全世界すべての国に対し「Do not Travel」を設定していたオーストラリアも現在ではワクチン接種証明書の提示なしで日本から入国が可能です。今主要国の間では新型コロナウイルス感染症を含む感染症を理由に日本への渡航制限を設定する動きはありません。
いかがでしたでしょうか?予想通り「日本は安全に旅行できる国」と評価されていましたね。これは我々が繰り返し
「海外では日本と違って普段から安全対策を意識してください!」
とお伝えする背景です。
ただし、日本人以上に福島第一原子力発電所周辺の放射線物質について特記事項が設定されています。実はアメリカ、イギリス、オーストラリアの三か国に留まらず、世界各国も日本の原発事故の影響には懸念を有しています。日本国内では日頃あまり大きく報じられませんが、日本産食品に何らかの輸入規制をかけている国は原発事故から10年以上が経過した今でも13ヶ国存在しています。
「日本は旅行するにはおおむね安全な国だけれども、原発事故の影響は心配」
「新型コロナウイルス感染症についても、全世界共通のパンデミックリスクに注意すべきだが、日本だけが特段リスクが高いわけではない」
これが、世界から見た日本の現状である、と言えそうです。
各国政府日本治安最新情報(2022年7月)/海外安全.jp
https://kaigaianzen.jp/asia/japan/
この項終わり