留学したら…コレをやらなきゃ安心できない!

この記事のURLをコピーする

海外生活中の住民票に相当するのが「在留届」

新型コロナウイルス感染症の影響による国境封鎖や各種行動制限も収まってきた印象があります。もちろん中国を筆頭に、厳しい感染症対策を継続している国も一部残っていますし、日本も2022年5月下旬の時点では相対的に入国制限が厳しい国の一つと言えるでしょう。

しかしながら、2022年2月には文部科学省も感染症危険情報レベル2やレベル3の国であっても「各大学等において学生の安全確保に万全を期していただくことを前提」として一律の留学中止要請は行わない旨発表がありました。さらに2022年4月には外務省が発する「感染症危険情報」が106か国を対象に引き下げられており、少しずつ海外への学生派遣を再開している大学も増えてきています。

 

留学の行先として多いと思われるイギリスを含む欧州やアメリカでは我々の暮らす日本とはまたちょっと感染症への意識が異なります。こうした異文化、人生観を肌で感じることも留学の一つの要素かもしれませんね。海外留学は日本ではできないさまざまな体験ができますし、語学力や多様性のあるチーム内でのコミュニケーション力が培われて就職にもプラスに働く時代です。ぜひとも留学の機会を活用してみてください。このコラムでは、そんな留学中、留学検討中の皆様に向けてお届けします。

manchestercity-fan-nomask
プレミアリーグ、マンチェスターシティのサポーターらが勝利を祝ってグラウンドに立ち入った様子。マスクをしている人は見当たらない(英ガーディアンのウェブサイトよりキャプチャ)

さて、既に海外で留学生活を満喫されている皆さん、また近々海外留学が決まっている皆さん、そしてもう少しコロナウイルスの影響が収まったら海外留学したいなー、とお考えの皆さん。特に3ヶ月以上現地に滞在する方は必ずやっておかなければならないことがあります。これは皆さんの安心や安全に直結する行動であり、また法律で義務付けられているのですが何かわかりますか??

 

皆さんが日本で生活していた時にはお住いの自治体(市区町村)で住民登録されていたはずです。住民登録をすることによって『あなたはこの自治体の住民ですよ』、ということが証明されますので、税金を使って行う自治体のサービスを受けられるようになります。

この住民登録によって、行政手続きの際には住民票を取ることができますし、選挙の際の投票用紙も自動的に送られてきていました。アルバイト先への提出が必要だったり、公立図書館の利用のために登録が必要だったりもしますね。

 

住民票ほど知られていませんが、実は海外で生活する方も住民登録に相当する制度があるのです。それが今回ご紹介する「在留届」。ご自身が滞在している都市を管轄する日本国大使館もしくは領事館にこの「在留届」を提出することで、日本政府があなたの所在地を把握することができるのです。この「在留届」、旅券法(旅券=パスポート)という法律でも3か月以上滞在する人は提出が義務付けられていることもお伝えしておきます。

 

 

この「在留届」正確な統計はないようですが、私の体験からも、また外務省の担当者からの聞き取りからも、そして留学関連の仕事をしている友人の体験からも、企業から派遣される海外赴任者に比べて留学生の方はあまり手続きを行っていないようです。

 

海外安全メールマガジン登録

「在留届」はWebでも紙でも提出できる

では、この「在留届」どうやって提出するのでしょうか?滞在先が首都でも大都市でもなく、日本人がほとんどいない町だったらどうしたらいいのでしょうか?

ご心配なく。「在留届」の提出は大使館や領事館に直接持っていく必要はないのです。便利な世の中になったもので、外務省が運営するHPからオンラインで提出することができます。また、外務省が定める「在留届」書式のPDFに手書きで記入し、FAXやメールで送っても受け付けられます。

mofa-register-top
外務省が運営するオンライン在留届提出システムのトップ画像

こちらが「在留届」の提出フォーマット(部分抜粋)です。見ていただければわかる通り、記入する内容もそれほど複雑ではありません。飛行機の中で記入するような「入国カード」とそれほど変わらないのではないでしょうか。記入にそれほど時間を必要とするものではないのです。そして、当然のことながら在留届の提出にお金はかかりません。日本国内で引っ越しをした際に住民票移転の手続きをしてお金を取られることはないですよね?それと同じで登録だけなら何の金銭的負担もないんですよ!

実は、この何の変哲もない紙を留学直後に提出しておくかどうか、で皆さんの安心度合いは大きく変わるのです。タイトルにもある通り、留学したらまずコレをやらないと!というのは「在留届の提出」を意味しています。

そうはいっても何のために「在留届」出すんだ?

そもそも

・ 「在留届」なんて言葉を聞いたことがない

・ 自分の先輩や友人で留学していた人も出していなかった

・ 「在留届」を出しても意味がないじゃないのか

とお考えかもしれませんね。

では、この「在留届」を提出したときにメリットはあるのでしょうか?はい、もちろんメリットがあります。メリットがたくさんありますが、デメリットはほぼありません。

 

海外安全セミナー

「在留届」を提出するとこんなメリットが!

ここまでご説明した通り、この「在留届」は各自治体の住民票に似ており、大使館や領事館が担当地域に何人日本人が住んでいるかを把握するためにも使われています。そして、その大使館や領事館が提供する(無料の)行政サービスを受けるためにはこの「在留届」は必須です。

具体的にサービスを列挙してみましょう。

 

・ 「緊急メール/総領事館からのお知らせメール」が配信される(当然日本語で!)

・ 万が一大規模災害やテロ等に巻き込まれた場合に日本政府の援護(国外退避の支援など)が受けられる

・ パスポートを万が一紛失した際の再発行や各種証明書の発行がスムーズに行える

 

一点目、皆さんの生活にも関わる現地留学ルールに関する緊急メールの事例を示しましょう。新型コロナウイルス感染症拡大の初期(2020年前半)は日本を含むどの国も入国制限や外国人へのビザ発給ルールを頻繁に変えていました。感染症の正体や危険性が十分にわかっていなかったが故の措置ですので致し方ない変更も多かったでしょう。しかしながら、勉強をしながらそうした出入国のルール変更、あるいは留学生としての滞在許可ルールの変更をすべて把握するのは至難の業。

ところが、こうした「在留届」(短期留学の方は「たびレジ」)に登録していた方は、現地の日本国大使館、あるいは総領事館から直接最新のルールが送られてくるようになっていました。感染症拡大の影響で不安、そして勉強もやらないと…という状況下でこうした情報を日本政府の管轄下にある組織からもらえると心強いでしょう。

sf-mail-mofa
2020年7月29日にアメリカ在住者向けに発信された米国の留学生入国に関する措置の最新情報

 

二点目は皆さんの安全にも関わるお話です。例えば2022年5月、長引くコロナ禍での経済停滞、行動制限等への不満も相まって労働者の権利を主張するメーデー前後に大規模な民衆集会/市内行進が行われました。

paris-demonstration-notice
2022年4月30日に配信されたパリ市内デモに関する注意喚起。 場所や時間、行進ルートなどが詳しく日本語で説明されている

集会会場は日本人もよく訪れる広場であったり、観光地付近の道路でした。もしこの情報を知らなければ大規模な群衆に取り囲まれてしまったり、交通規制の影響で思う通り移動できず、「身動きが取れない!」「暴動に巻き込まれた!」と最悪の状況になりかねません。英語やフランス語、現地の言葉ではなく、日本語で情報が入るのでこういった情報を受け取らない手はないでしょう。

このメールは事前に混乱が予想されるとして配信されたものですが、大規模なテロや自然災害が発生した場合には最新の被害状況や避難場所等の情報が日本語で送られてきます。何が起こっているか、正確に把握しきれていない状況で日本政府による日本語の情報が入手できることが、どれだけ安心材料になるか、想像していただければと思います。

 

三点目は万が一に備えたメリットです。日本では地震や洪水といった自然災害が一定の頻度で発生しています。その時自治体が避難所を設置し、救援物資を配ったりしていますが、あれは住民に対する行政サービスですので、本体住民登録されていなければそうしたサービスは受けられません。

では海外で自然災害やテロの被害に遭った場合はどうでしょうか?海外での自国民保護は日本政府の役割の一つであり、税金を用いて無料で各種のサービスが提供されています。当然、緊急事態の際の日本国民の保護も役割です。ただし、在留届を提出済みで、大使館・領事館が確認できる滞在者リストに載っている方とまったく初めて出会う方とどちらがスムーズに援護を受けられるでしょうか?そう、当然リストに載っている方です。

 

言葉や習慣が日本とは異なる中、異常事態が発生しているとどんな方でもパニックになります。そうした状況に遭遇したことをイメージしてみましょう。現地の言葉で案内される安全な場所への避難や飲食品の確保、怪我の治療などなど、すべて自力で対応できるでしょうか?

もし、日本語でいろいろと助けてもらえるなら、こんなにありがたいことはありません。到着直後にオンラインもしくは紙を一枚提出するだけで、万が一の際に大きな差が出るのです。

 

 

住民票と違い、「在留届」の提出は義務ではあるものの、罰則規定がありません。そのため、一般的に数年~10年程度駐在し、お仕事をされる方に比べて留学生のみなさんは「在留届」を出さないまま過ごされる方も多いようです。ただ、「在留届」を出す手間に比べて、得られるメリットは圧倒的に大きいのです。ぜひとも、到着直後に担当の大使館もしくは領事館に「在留届」を提出してください。

 

この項終わり