世界は日本の治安をどう見ているか2024

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日本に住む外国人の本音アンケート

2024年3月下旬、日本国内各地で英会話学校の講師として活動している外国人を対象にしたアンケートの結果が発表されました。287名もの外国人英語講師から回答を得た日本の魅力や好きなポイントを聞いた結果をまとめたものです。多くの英会話教室を運営している株式会社NOVAのホームページに結果が公表されています
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既に日本国内で一定期間暮らし、日本人と多く触れ合っている方々だけを対象としたアンケートですので日本びいきになりがちなのは致し方ないのですが、「安全」に対する高い評価はその他の項目を大きく引き離し極めて高い評価がなされていると言っても過言ではありません。

回答にあたって寄せられたコメントを見ていても大変興味深いのですね。アメリカやイギリス(ロンドン)と言った「先進国」から日本に来られている方が母国と比較して日本の安全性を強調されています。決して紛争の当事国や開発途上国との比較で安全性が評価されているわけではないのです。

またここに記載されていないコメントでも「銃や麻薬を心配する必要がありません」「海外では日常でも危険を経験しますが、日本ではあまり心配せずに自由に生きることができます。」といった日本で生まれ育ち日本で暮らしている日本人には比較の前提が違うんだな、ということも伝わってきます。外国が評価の基準になっている方にとっては、普段我々が認知できないレベルで安全性を感じるシーンが多いのかもしれませんね。

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Global Peace Index(世界平和指数)

オーストラリアを拠点とするシンクタンク、Institute of Economics and Peace は例年「Global Peace Index (世界平和指数)」を発表しています。この指標は犯罪の発生率や暴力的なデモ、テロの発生率や件数のほかに治安当局の能力、核兵器の保有実態、国連の平和維持活動への資金提供等を指数化し、各国の平和度を総合的に評価したものです。制度面や資金面を含む23の指標を基に計算されていますので、必ずしもその国の治安情勢や政治の安定度だけが評価されるわけではありません。しかしながら、概ね、世界中の安全とされる国が見えてくるという意味で参考になるランキングと言えるでしょう。

 

現時点での最新報告書である2023年版の世界平和指数上位国は次の画像の通り。最上位にランキングされたのは昨年に引き続きアイスランドでした。日本は世界で9位、アジアではニュージーランド、シンガポールに次いで第三位ということになります。評価対象である全世界163ヶ国のうち上から9番目なのですからやはり世界的にみれば日本は「かなり安全な国」と評価されていると言えるでしょう。

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こうした国のランキングはあくまで目安ではありますが、なぜここでご紹介したかというと海外での安全対策の目安として便利だからです。我々が口を酸っぱくして、日本人の皆様に

 

「海外では日本と違って普段から安全対策を意識してください!」

 

と訴えているのかというと海外では日本よりもリスクが高いことが一般的だからです。世界平和指数だけを見ても、日本よりも安全とされている国は8つしかありません。世界はこれだけ広いのにたったの8!ちなみに旅行者が多く、日本人の一般的なイメージとして「危険」だと思われていない国の指数はどのくらいかというとドイツが15位、台湾は33位、イギリスは37位、韓国が43位、フランスが67位ドバイのあるUAEは75位となります。さらに下に目を移していくとタイが92位で、アメリカに至っては131位となっています。(アメリカは銃乱射が極めて多い点、当サイトでも繰り返し注意喚起していますね)

 

海外での安全対策を考える際重要なのは「日本との比較」です。海外への旅行とはすなわち、日本と比べてリスクの高い場所に行くということ。普段の状況を当たり前だと思って、無防備に(日本と比べて相対的に危険な)海外に出かけていけば、予想していなかった危険な目に遭うこともあり得るわけです。海外に渡航する際には、日本国内で普段暮らしている時と違うレベルの心構えが必要になるということがわかっていただけますでしょうか?

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日本の都市も世界的に安全度が高い

せっかくなので、もう一つランキングをご紹介しましょう。

英エコノミスト誌の関連機関である、EIU(Economic Intelligence Unit)が発表している「Safe Cities Index」(世界の都市安全性指数)という都市別安全度合いランキングがあります。こちらの最新版は2021年8月下旬に発表されたものです。日本のNECが作成に関与していることもあり、世界全体の安全対策に日本語のページが用意されているのがありがたいですね。

こちらの調査は世界各地の60都市に対し、1)サイバーセキュリティ、2)医療・健康環境の安全性、3)インフラの安全性、4)個人の安全性、5)環境の安全性、のそれぞれの採点を行い、総合点順に並べたもの。日本の都市としては東京と大阪の2都市が調査の対象となっています。

 

こちらのランキングの結果だけを抜粋して紹介するとこのようになります。総合スコアの順番で行けば、東京が第5位、大阪が第17位。この調査は2015年の第一回から、17年、19年、21年と4回目の実施となります。過去3回、東京、大阪ともにトップ3位以内を維持してきたことを考えれば今回、特に大阪のランキングが大きく落ちているといえます。他方で、過去4回が1位、今回も5位以内をキープし、総合スコアも80点を確保している東京は世界的に見ても最も安全な都市のひとつと言えるでしょう。

参考までに、前回2019年版の上位も見ておきましょう。1位が東京、3位が大阪であることを確認していただければと思います。都市別で見れば、世界の主要な都市と比較して東京や大阪は極めて高く評価されていたわけです。

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日本国内のニュースだけを見ていると

 

元首相を手製の銃で暗殺した

警官を襲い、拳銃を奪う事件が発生した

悲惨な交通事故が次々と起こっている

小さい子供が犠牲になる事件が繰り返し報道される

大規模な自然災害が次々と起こっている

 

といった暗いニュースが多い今日この頃。こんなに悲しいニュースが毎日起こっているのに、日本が治安がいいなんてことあるのか?、とお感じになるかもしれません。が、世界的でも、同じような暗いニュース、安全や健康の確保ができていない状況は各国、各地で発生しています。

 

国境を越えた武力紛争が一年も二年も続いている

政治的背景から学生ら数百人が学校から連れ去られた

ギャングの抗争に巻き込まれお母さんと小さい子供たちが巻き込まれて死んだ

麻薬組織と思われるグループがある村落を壊滅させた際の大量の死体が農場から発掘された

コンサートホールや学校、政府庁舎等で銃の乱射事件が発生した

宗教行事やイベント等を狙った爆弾テロが続いている

武装勢力が支配している土地で別の武装勢力がテロを継続している

 

など、一般の方向けに詳しく説明することがためらわれるような残念なニュースが日々我々の手元に入ってきているのです。日本に不幸な事件・事故が全くないわけでは決してありませんが、相対的に見ればやはり日本は平和で安全な国なのです。世界全体で見れば安全とされる日本の常識に基づいて手荷物や行動計画を立てていると、渡航先の治安情勢・社会環境によって命にも危険があることになりますね。

 

日本から一歩外に出るとき、つまり海外に渡航する時には、

 「いつも暮らしている日本よりもリスクが高い場所に行くのだ。用心しなければ。」

ということを改めて認識していただきたいのです。

 

これは例えて言うならばエアコンの効いた快適な環境で過ごすときの服装や装備のまま、灼熱の砂漠や極寒の高山帯に行ったら命が危ないのと同じです。たとえコンビニと言えども真冬の深夜にTシャツ、短パンで外出することは避けたいと皆さんも思われるのではないでしょうか?サンダル履きで富士山に登るという友人がいたら「いや、登山靴用意しないとダメじゃない?」と再考を促しませんか?皆さん基準で快適な「部屋着」のままでは心身に悪い影響が出る環境も当然あります。皆さんが行く環境に合わせて服装を決める、これが安全対策においても当てはまるのです。世界の中で日本はかなり安全な国であるがゆえに海外に出る際にはその国・地域がどんな環境なのかを出発前に調べていただくことが重要なのです。

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諸外国の日本向けトラベルアドバイスを比較する

我々は普段、日本で勤務されている方に対して海外に渡航する際、

 

 「いつもよりリスクの高い地域に出るので普段よりも用心してください」

 

というアドバイスを行っています。

 

では、反対に日本よりも治安が悪いと評価されている外国の方が日本にやってくるときにはどのようなアドバイスがなされているのでしょうか?日本政府外務省が海外に旅行する日本人に向けたトラベルアドバイスを提供しているのと同様、世界の主要国で外務省に相当する政府機関も自国民向けのトラベルアドバイスを公開しています。そうしたトラベルアドバイスを確認すれば、世界の国が日本という国の治安をどのように見ているのか、また日本を訪れる人が注意すべき点としてどんなことが書かれているのか確認ができるのです。

 

海外になどもいらっしゃっている方の中には日本政府外務省のページはよくチェックしているよ、とおっしゃる方は多いかもしれませんが、ではアメリカ政府国務省が日本の治安情勢をどのように見ているか、ホームページでチェックされている方はほとんどおられないように思います。同様にイギリス政府やオーストラリア政府も独自の視点で日本の治安情勢を踏まえたリスク評価をしているのですがその内容ご存じでしょうか?

 

ということで、アメリカ・イギリス・オーストラリアの三か国がそれぞれ自国民向けに発表しているトラベルアドバイスを日本語で簡単にまとめてみました。日本人が日本国内を旅行する際に治安等のリスクを気にすることはほとんどないでしょうし、まして外国の政府ページで日本の情報を確認することなどまず想像できません。ですので、こうした情報を日本人である皆様が普段チェックすることはないと思いますが、それゆえ興味深い情報になっているのではないかと思います。

 

全世界が影響を受け、各国が国境封鎖なども辞さなかった新型コロナウイルス感染症についてみると多くの国で日本も入国規制の対象となりました。特に厳しかったオーストラリアでは自国民であるオーストラリア人を含めすべての人の海外からの入国を一時ストップしたほど。この時は日本も「Do not Travel」のリスクレベルが設定されていましたが、現在はほぼすべての国で日本との往来に規制はありません。

では、オーストラリア政府が今日本に設定しているリスクレベルはどうなっているでしょうか?現時点でのリスクマップは次の通りです。大部分は強い注意喚起のない「一般的な注意を払ってください:Exercise normal safety precautions」となっており、リスクの最初に記載されているのは地震と火山噴火であり治安に関しては「low crime rate(犯罪発生率が低い)」との記載があります。

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ただし、日本人以上に福島第一原子力発電所周辺の放射線物質について特記事項が設定されています。実はアメリカ、イギリス、オーストラリアの三か国に留まらず、世界各国も日本の原発事故の影響には懸念を有しています。日本国内では日頃あまり大きく報じられませんが、日本産食品に何らかの輸入規制をかけている国は原発事故から13年以上が経過した今でも7ヶ国存在しています(2024年4月時点)。

「日本は旅行するにはおおむね安全な国だけれども、原発事故の影響は心配」

これが、世界から見た日本の現状である、と言えそうです。

各国政府日本治安最新情報(2024年4月)/海外安全.jp

この項終わり