トップ画像はASISニュースレターよりキャプチャ(写真はゲッティイメージ)
アメリカで相次ぐ公職者への襲撃事案
統計からみる「構造的な危機」の構図
Impact Project の統計によれば、2015〜2025年の10年間で、公職者への暴力的脅威は約20倍、家族への脅威は37倍超に増加しています。これは単発の事件が積み重なった結果ではなく、社会構造そのものが「公職者を守りにくい方向」へ変化していることを示しています
アメリカでは政治的分断が深刻化し、相手を「敵」とみなす風潮が強まっています。SNSを中心としたオンライン空間では、政治的主張や陰謀論が短期間で拡散し、個人が急速に過激化するプロセスが確認されています。ASISの記事でも、脅威の多くが組織的テロではなく個人による突発的攻撃である点が強調されていました。
こうした状況を裏付けるように、米国国土安全保障省(DHS)とFBIは、近年の脅威の中心が 「個人化した暴力(Lone Actor Violence)」 に移行していると繰り返し警告しています。DHSは、単独犯による暴力は最も検知が難しく、最も防ぎにくい脅威であると位置づけ、政治的・宗教的・社会的な不満を抱えた個人がオンラインで急速に過激化し、突発的に攻撃へ移行する傾向が強まっていると指摘しています。
FBIも同様に、公務員や政治家に対する脅迫件数が増加していると報告しており、特に選挙管理職員や地方議員への脅迫が顕著に増えています。FBIは「公職者への脅迫は民主主義の根幹を揺るがす重大な脅威」と位置づけ、従来の警備手法では対応しきれない状況にあると警鐘を鳴らしています。
さらに、名誉毀損防止同盟(Anti Defarmation League = ADL)は、政治的暴力やヘイト犯罪がオンライン空間で急速に拡散していると指摘しています。特に2023年以降、反ユダヤ主義的な脅威や攻撃が急増し、ADLは「オンライン上の憎悪の拡散が、現実世界の暴力を直接刺激している」と警告しています。SNS上での扇動やデマ情報が、個人の暴力行動を後押しする構造が明確になってきています。

また、アメリカでは公職者の住所や家族構成がオンラインで容易に特定できる環境があり、生活圏そのものが脅威にさらされています。銃器へのアクセスの容易さも、攻撃のハードルを下げる要因となっています。公共サービスへの不信感や行政への怒りが個人に向かいやすい社会構造も背景にあります。
こうした複数の要因が重なり、脅威の裾野が広がり、動機が多様化し、攻撃のハードルが下がっています。まさに「構造的な危機」と呼ぶべき状況であり、従来の警備や危機管理の延長線では守り切れない段階に入っていると言えます。
アメリカで事業展開する日本企業への示唆と従業員への注意喚起例
- 政治的イベントやデモには近づかない、
- 不用意に宗教行事や宗教施設に立ち寄らない、
- 不特定多数が集まるイベント(地元のお祭り、スポーツイベント、クリスマスマーケットなど)に参加する際には周囲の状況に常に注意を払う、
- SNSでの政治的発言を控える、
- 自宅住所や家族構成が推測される情報をオンラインに残さない、






