【事案分析】大人数集結イベントでのテロ・襲撃の復活傾向

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アメリカ銃乱射事案の続発

2023年6月、アメリカ国内の異なる場所で、大勢の人が集まっていたイベントで銃乱射事件が3件立て続けに発生しました。

 

1)西部ワシントン州では17日音楽フェスティバルの開催地であるキャンプ場で集まっていた群衆に乱射。少なくとも2名が死亡しました。

2)北西部イリノイ州のシカゴ近郊では奴隷解放記念日の祝日式典に対し銃乱射事案が発生。少なくとも1名が死亡し、20名以上が負傷する大きな事案となりました。なお本件を含め先週末シカゴ周辺では3件の銃乱射事案が発生し合計で12名が死亡、100名以上が負傷しています。

3)中西部ミズーリ州の中心都市セントルイスでは市民が行っていたパーティー会場に対し銃撃事案が発生しました。こちらも少なくとも1名が死亡し、10名以上が負傷しています。

 

いずれも地理的には離れており事件同士の関連性はありません。ただし、いずれも特定の標的だけを狙った「殺人」というよりも不特定多数の人に対する無差別銃撃が行われているという点で共通項があります。過去3年、コロナ禍でイベントや祝祭日の式典等が開催されていなかったので、この手の事件が目立つことはありませんでした。しかしながら大勢の人が集まるイベントの数が急増する中で、この手の無差別銃撃の発生数も多く確認されるようになってきています。

 

なお、全米に対象を広げると11の銃乱射事案が発生しているとされています。

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オーストリアでのテロ未遂事案

不特定多数を標的とした銃乱射事件やテロ事件の増加はアメリカだけの現象なのでしょうか?アメリカ国内の銃撃事件数統計はこの2年高止まりしており、世界的に見てもかなり銃撃事件数が多いことは間違いありません。しかしながらアメリカ以外の先進国が多い欧州であれば安心か、というと実はそうでもないのです。

 

当サイトのニュースページでも取り上げましたが6月17日オーストリア首都ウィーンで行われたLGBTQ+プライドパレードへの襲撃を計画していたとして、ISISの支持者である3人が逮捕されました。本件はテロ未遂で終わったことが何よりですが、容疑者らが自宅で所持していたのは次の画像のような武器。これはオーストリア治安当局による家宅捜索の結果を受け、正式に公開されている押収品の写真です。本物かどうかはこれだけでは判断つきませんが、斧、ナイフ、ライフル銃、小銃に手りゅう弾のようなものまで含まれています。もし本格的にテロを実行するということであれば、かなり規模の大きなテロができてしまってもおかしくはなかったと言えるでしょう。

オーストリア首都ウイーンでのテロを計画していたとされる犯人グループが所持していた武器。現地警察の発表資料

こちらの標的は毎年恒例で行われているウイーン市内のプライドパレード。2022年から大規模なイベントとして復活しており、コロナ禍後初めての大規模イベントというわけではありませんが、日時が公表され、大規模な参加っが呼び掛けられているイベントを標的とした可能性は否定できません。

 

欧米を中心として、全世界で大規模なイベントや祝祭日のセレモニー、あるいは民間団体が行うフェス、スポーツ観戦の機会などが増えている点には警戒が必要でしょう。

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「リベンジ消費型テロ」本格化には備えておくべし

なぜ当サイトであえて無関係とも思える4つの事案を並べたのでしょうか?

それはいずれも「人流が戻りつつある今だからこそ起こった事案」だと考えているからです。長かったコロナ禍、日本だけではなく世界中で店舗の営業規制や大規模イベントの開催が行われていました。テロや無差別銃撃を行う側からすると「そもそも狙う相手がいない」という状況が長く続いたということになります。

 

ところが、感染症対策の様々な規制が解除されて約1年。今はあちこちで様々なイベントが開かれ、大勢の人が集まる光景がよく見られるようになりました。コロナによるパンデミックが始まって以降海外に出ていない、という方も日本国内の通勤電車や商業施設の混み具合、あるいは野球やサッカーの中継映像などから人流の復活は感じておられると思います。

 

このような人流の復活はテロを起こす側から見れば格好の「標的」と言えるでしょう。加えて各国の出入国制限が緩和されている今は、少し前と比べれば戦闘員/実行犯の移動も武器・弾薬の輸送もハードルが下がっています。数年間やろうと思ってもできなかったテロ/襲撃を再開するなら今!という状況ですね。そう、これはまさに「リベンジ消費」「リベンジ旅行」と相似形の動きであり、過去数年間溜まっていたテロ計画が再稼働しつつある時期と捉えられなくもないのです。

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2022年9月に開催した「世界情勢の展望と見通し」セミナーで当サイト代表が最も警戒が必要として挙げたリスクが「テロ再稼働」

 

当サイトではこうした事情も踏まえ、昨年後半から「要注意リスク」の筆頭に「テロ再稼働」を挙げて説明してまいりました。まさに、今当サイトの「予測」が減少として表出してきている印象を持っています。北半球ではこれから夏を迎え、大勢の人が集まるイベントもさらに多くなると見込まれます。

 

テロを起こす側からすると「リベンジ消費型テロ」のターゲットが増え、未使用の銃や弾薬・爆発物の使い道を検討したくなるタイミングです。各種イベントに参加しないでくださいとは言いませんが、こうした動きがあることを踏まえ、テロや銃撃時巻き込まれた際の回避行動は覚えておくようにおススメしたい時期です。

【参考コラム】テロは〇〇〇〇に似ている!?

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