開発途上国で子育てをされる方へ~海外駐在の実態~

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海外進出増は「既に起こった未来」

海外赴任の辞令を受けて、家族全員で赴任するかを考える前に、海外駐在の実態をデータから俯瞰してみましょう。

 

新聞やテレビ等で話題になっている通り、日本国内の人口は減っていくことが確定的です。また、人口が減るだけでなく、高齢化も急激に進みます。経済学的な解説はここでは省きますが、日本国内だけで商売をしていては、どの企業も成長しないことはイメージできるのではないでしょうか?

 

「このまま日本国内にいる人だけを相手にしていた商売では会社が成長できないどころか、経営が行き詰ってしまう・・・。」

 

経営者の皆さんはこのようにして海外進出という選択肢を取ります(取らざるを得ません)。

 

つまり、日本の少子高齢化は「既に起こった未来」であり、その結果として想定される日本企業各社の海外進出増も「既に起こった未来」と言えます。そして、当然ながら日本企業の海外進出が増えれば増えるほど、企業で雇用されている従業員の海外赴任も増えるのです。

 

これは机上の空論ではありません。次の図をご覧ください。これは日本政府外務省が毎年発表している海外在留邦人数調査統計を基に当サイトが作成したものです。毎年海外に長期間滞在する日本人の数、そして日本企業の海外現地拠点数が増えていることが一目でわかります。

 

このトレンドは日本の人口動態を考えてもそう簡単に変わりそうにありません。このため、以下のような順で、海外での子育てをされる方も今まで以上に増えていくことは間違いない、と当サイトでは考えています。

 

 海外で仕事をされる日本人の方が増える

        ↓

 海外で生活する日本人世帯が増える

        ↓

 海外で子育てをする親御さんが増える

 

つまり、日本人の働き盛り世代(20代~40代)で海外での仕事を経験する方の割合は右肩上がりで増えていくことが想定されます。働き盛り世代の年齢層から考えれば、子育て中の方も多いでしょうから、海外での子育て経験を持つ日本の家庭もどんどん増えていくことになりますね。昔ほど海外駐在が稀ではなくなり、海外での子育てもレアではないという時代を我々は生きることになるのです。

 

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開発途上国への進出傾向が強まっている

企業の海外進出が増えますよ、従業員の海外赴任も増えますよ、ということは間違いないのですが、それでは今後どういった国・地域への進出が増えるのでしょうか?

 

次の表をご覧ください。こちらはJETRO(日本貿易振興機構)が実施した「2017年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート」の概要発表資料から抜粋したものです。

 

このアンケートから読み取れることは、日本企業の進出先が先進国と呼ばれるアメリカや西欧諸国から、東南アジア、南アジアをはじめとする発展開発途上国に移ってきていることです。

 

これまで日本企業の海外進出と言えば、既に一定規模の市場が現地に存在し、そこで日本の製品やサービスを売り出すための進出が多かったように思います。こうした海外進出ではある程度購買力を有する住民が多く住んでいる場所、つまりは先進国が最優先の進出先でした。しかしながら、先進国におけるシェア争いが激しくなった今日、現時点で市場が確立されていない、もしくは購買力がこれから伸びるであろう住民の将来需要を見込んだ進出が増えてきているといえます。

 

実際に東南アジアや南アジア、アフリカでも豊かさの指標になる一人当たりGDPは急速に伸びています。加えてそうした地域では日本と正反対に高齢者よりも若年世代の人口が圧倒的に多いため、これからますます消費が旺盛になることも予想されるのです。日本企業の経営者ならずとも、こうした「明日はもっといい暮らしをしたい、もっといいものを買えるようになりたい」と思っている人のいる国に進出を決めることは自然な成り行き。

 

こういった国・地域はその性質上発展途上ですので、日本とまったく同じ生活を求めることは難しいのが実態です。特に、生活に必須のインフラや衛生環境などが整っておらず、苦労するケースもしばしばです。そのため、

 

・そのまま飲める水が全国どこでも蛇口をひねるだけででてくる

・常時電気が自由に使える、好きなだけでも使える

・ガスがいつでも使えるだけでなく、いつでもお湯が使える状態にある

・公共交通機関はほぼダイヤどおりに毎日運航されている

・困ったことがあれば、電話相談窓口が用意されている

 

などなど、衛生的かつ快適な生活に慣れた日本の大人が生活するのも一苦労な環境で仕事をせざるを得ないことも起こりえるでしょう。

 

日本企業の海外進出先の動向を踏まえれば、そういった国への進出がますます増えることは想像に難くありません。そうした国・地域に赴任する日本人従業員も当然増えるはずです。プロローグでお伝えしたように

 

「今日辞令が出てさ、来月から◎◎(アジアやアフリカの開発途上国)に赴任することになった」

 

とご主人(もしくは奥様)が打ち明けることはどの家庭でも起こりうる事態なのです。

 

この項終わり