開発途上国で子育てをされる方へ~赴任先に応じた予防接種をしよう~

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日本でほとんど発生しない感染症が流行している場所も

海外駐在の可能性が多くの方にある現在、海外赴任の辞令が出た場合でも焦らずに情報収集することが大切です。駐在する可能性がある国・地域が決まった後、その国の概況や治安情勢を調べるという作業をおススメしてきました。また、情報収集に役に立つリンクもご紹介していますので、まだご覧になっていない方はぜひ「開発途上国で子育てをされる方へ」シリーズをご覧ください。

 

 

さて、情報収集シリーズの最終回は皆さんの健康管理に関するものです。開発途上国はもちろんのこと、世界各地には日本でほぼ根絶されてしまった感染症が発生しているという例が多々あります。

 

その一例が狂犬病ウイルスによって致死的な症状を発症する狂犬病です。日本政府厚生労働省が発表している世界各地の狂犬病発生状況を確認してみましょう。日本やイギリス、オーストラリア、ニュージーランド、北欧諸国は青く表示されていますね。これは厚生労働大臣が認定している狂犬病の「清浄国」を示します。これらの国ではほとんど狂犬病の発症事例がなく、万が一犬に噛まれても狂犬病ウイルスに感染する可能性が極めて低いとされる国です。

 

世界の大半がオレンジ(狂犬病発生地域で死亡推定者数が年100人未満)もしくは茶色(狂犬病発生地域で死亡推定者数が年100人以上)であることに気づかされます。日本では犬に噛まれても狂犬病を警戒する必要はなく、狂犬病の予防接種も必ずしも必要ではありません。しかしながら、世界の大部分の地域に狂犬病の予防接種を行わずに赴任することは危険な行為です。

 

普段我々は日本国内の衛生状況に合わせて生活環境を整えていますし、日々の行動を決定しているはずです。しかしながら、日本と前提条件が異なる海外に赴任する場合には、まず赴任先の国でどのような感染症が発生しているのか、を確認することが大切なのです。

 

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海外駐在する場合は事前の予防接種が必須

海外に長期間駐在する場合、安全対策と並んでご心配の種になるのは現地での体調管理ではないでしょうか?特に日本ではほとんど問題にならない感染症への対策が必要な国もありますので、ご注意ください。日々の体調管理を除き、日本国内で準備ができる感染症対策と言えば、ワクチンの予防接種です。まずは駐在される国、地域でどのような予防接種が必要か、確認してみましょう。

 

その際、正確かつ網羅的に確認できるサイトとして厚生労働省の検疫所HP(FORTH)をご紹介します。

 

 

こちらのトップページにある地図をクリックすると、駐在する可能性がある国を選べるようになっています。例えばインドを選択して表示された情報をお示しします。

具体的に現地の気候と気をつけるべき病気のリスト、そしてどのような予防接種を受けるとよいかまで丁寧に説明されています。こちらは日本政府厚生労働省の一部門が公開している情報です。日本語でまとめられた情報でこれ以上に信用できる情報はまずありませんので、海外駐在を検討される際、特に衛生環境や駐在前に必要な予防接種はこちらのページをぜひご確認ください。

 

 

 

なお、外務省の安全ホームページにも「感染症危険情報」という枠が設定されています。しかしながら、情報がない国の方が多いというのが実態です。いくつものサイトを確認しなければならないのは不便ですが、ここは日本政府の中でも医療、衛生を担当する厚生労働省のHPをご参照されることをおススメします。

 

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日本国内で一般的でない予防接種ができる病院

海外に赴任する際の下調べの一環で赴任先で発生している感染症を調べ、必要な予防接種を調べる、というご提案をさせていただいています。

実は、日本では通常接種しない予防接種はたくさんあります。特定の国・地域に行く場合、どんな予防接種が必要かの目安は前のページでご紹介しました。こちらでは、一般論として厚生労働省の検疫所が公開している予防接種の目安をご紹介しますので、こちらも参考にしてみてください。前のページでご紹介した、赴任先の衛生環境と必要な予防接種リストと一緒に確認すれば、赴任前に準備しておくべき予防接種関連の情報はばっちりということになります。

 

一般論として、どのようなケースで各予防接種が必要か厚生労働省検疫所が示している表

 

家族全員で駐在されるか決めかねているというケースもあろうかと思いますが、駐在する場合には渡航先の国・地域に対し推奨されているワクチンは必ず出国前に接種しておくことをおススメします。そして、複数の予防接種を済ませるためにはある程度計画的に接種を進めていかなければならないのです。

 

例えば、黄熱のようにワクチンを接種したことを証明するカードがなければ入国できない国もあります。また、黄熱ワクチンの場合、接種後27日間はほかのワクチンが接種できませんし、ワクチンが有効になる(入国が認められる)のはワクチン接種後10日目ですので、駐在するかどうかを検討している状況の時から、

 

「駐在するなら予防接種のスケジュールはこうなるね」

 

ということは同時並行で確認しておきたいところです。

 

 

ただしここで注意点が一つ。実は、日本国内で一般的ではない予防接種はどの病院でも受けられるとは限りません。海外渡航される方向けの予防接種に対応している近くの病院を探すヒントをお伝えしてこのページを終わりにしましょう。東京であれば、日比谷クリニック東京医科大学の渡航者医療センターが経験豊富で、たいていの国・地域に赴任する方に対応してくれるはずです。この両院は必要な予防接種の種類やスケジュール調整も相談に乗ってくれますので、関東近郊の方は検討されてみてはいかがでしょうか?

 

それ以外の地域では、対応している病院が多くないかもしれません。当HPも全国各地の予防接種対応病院を承知しているわけではないのです。ただし、厚生労働省検疫所のHPから予防接種が可能な医療機関が検索できるようになっています。また、「人の移動の安全と快適性を高める医学」を研究するための団体である日本旅行医学会(一般社団法人)が日本全国の海外渡航者向け予防接種対応病院のリストを公開しています。お住いの地域を選択して、お近くで相談できそうな病院を見つけていただければ幸いです。

 

 

この項終わり