AIやビッグデータは発展途上。人間の「使い方」が大切
金融分野で活用が進み、既に一般の顧客にも身近になっているAI。ではその未来予測の実力はいかほどなのでしょうか?
次のチャートは「ディープAI」が一般販売開始された後、2017年10月から2019年12月末までの値動きを示しています。投資信託の一般的な仕組みとして、売り出し時の価格は10000であり、チャートも10000からのスタートです。2019年末の基準価格は10571となっていますので、運用開始から約2年で57%上昇という成績です。しっかりと上昇していて、AIは着実に成績を上げているように見えます。
では同時期に日経平均株価指数の価格変動はどうだったのでしょうか?2017年10月時点での日経平均は20400円前後、2019年末の終値は23656円でした。そう、実は日本の株式市場全体の目安となる指標はAI運用のファンドが5.7%上昇している間に約15%上昇上昇していたことになります。
まだまだ黎明期ですので、たった2年の運用成績でAIによる運用の効果を判断するつもりはありません。ただ、「AIを活用すれば人間以上の成果が出る」と言い切れるわけではない、ことはよくわかるのではないでしょうか?
資産運用であれば、元本を大きく割り込まない限り、それほど問題にはならないでしょう。ただ、安全管理の分野でAIに預けるのは(投資に活用可能な)資金・資産ではなく、皆さんの命です。万が一失敗した場合に、「二度目」がない世界でもあります。
今後安全管理の分野でもAIを活用してさまざまな取り組みが進むとは思います。そして、過去のデータ分析などは人間とは比べ物にならない成果を生み出すことも想定されます。ただし、未来の予測については
「AIを活用していますので大丈夫です」
と言い切れる時代はそれほど近くないということも頭に入れておいたほうがよさそうですね。思えば、新薬開発などの分野でもAIの活用が始まっていますが、昨今の新型コロナウイルス感染症の広がりを正確に予測した報告はありませんでしたし、ワクチンや特効薬も開発されていませんでした。
安全管理分野でのAI等新技術の活用は、その予測精度や活用状況を確認しつつ、当面人間の頭で考えなければならない状況が続くのではないでしょうか。
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