海外で現金を持ち運ぶ時の3大注意点(+おまけ)解説

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現金の持ち運びは主要なリスク

現在の人間社会では、「お金」なしに生活することは難しい社会です。キャッシュレス決済という言葉が普及しつつありますが、それでもまだまだ海外で現金を使うシーンは多いのではないでしょうか?大都市への個人の旅行ならともかく、企業や組織で現地の方への給料支払いやちょっとした日用品の支払いには現金が必要なケースが多いです。

 

また、途上国と呼ばれるような国ではキャッシュレス決済が広がっていないケースも多々あります。さらに、本来キャッシュレス決済ができる場所であっても、機器が故障している、決済のタイミングで電気が止まっている、といった事情があれば、キャッシュレスでの支払いは不可能です。

 

万が一の際にモノを言うのはやはり「現金」ですので、どうしても旅行中、海外での駐在中現金を持たない、という選択肢は取りづらいのではないでしょうか。ただ、現金ほど使い勝手のよいものはありませんし、かつ盗む側から見ても足がつきにくいという点で、盗めるのであればなによりも現金という発想を持つ人が多いことも想定しておかなければなりません。

皆さんもご存じの通り新型コロナウイルス感染症の影響で経済活動が止まっているという国・地域も少なくありません。当然の帰結として生活に困窮する方もいる中で、手っ取り早く現金を確保する方法の一つが窃盗や強盗。新型コロナウイルス感染症の影響で短期の旅行に出られる方は大幅に減っていますが、直近では現地で長く暮らしている方の窃盗/強盗被害も複数報告されています。

 

実際に、日本政府外務省が発表している2019年の「海外邦人援護統計」で現金等を盗まれてしまった日本人の数を確認してみましょう。外務省が管轄する世界各地の大使館、領事館が把握しているだけでも強盗・強奪/窃盗の合計被害者数が4430人(2018年比約1.2倍)となっています。1日当たり12人以上が被害に遭っている計算になりますね。

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海外で日本人の方が直面するリスクの中でも現金の盗難リスクは主要なリスクの一つです。命の危険に直結することは少ないかもしれませんが、それでもなお、現金が手元になければ滞在が予定通りにいかなくなる点で、影響は大きいでしょう。

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ATMや銀行、両替所で外国人は「見られている」

現金の盗難リスクが最も高いのはいつでしょうか?いうまでもなく、現金を多く持っているシーンです。海外から到着したばかりの時は現金を多く持っているかもしれませんが、盗む側の人からすると、どの程度の金額を誰が持っているのか、は見通しづらいでしょう。

 

その反面、盗みを考えている側が簡単に現金を持っている人を判別できる方法があります。それは外国人と思しき人がATMや銀行、両替所などから出てきたシーンです。写真のように、ATMを利用した後というのは間違いなく、現金を保有していることがわかります。画面を操作しているうちに、後ろから来た窃盗犯にやすやすと鞄や財布ごと持っていかれるケースは本当に要注意です。

スペインカタルーニャ州警察が公開中のATM前強盗の犯行再現ビデオより

 

他方で、たいていのATMや銀行、両替所の前には警備員が立っていることも多いですね。そのため、上記画像のように現金を引き出した人にその場でかっぱらいに行く、というのは盗む側にとってリスクが高いことがあります。

そういう場合は、お金をおろした人を少し泳がせて、尾行するというケースがあります。警備員の目がなくなり、人けもなくなった路地などに入ってから鞄や財布を盗めば、つかまるリスクはより一層下がります。絶好のターゲットが目の前を通過していく、しかも人目はない、となれば、根っからの悪人でなくてもついていってお金を盗むことを考えついてもおかしくないですよね。

 

つまり、ATMや両替所を利用した直後はもちろん、そのまま現金を持ってショッピングやレストランに行く途中で狙われるというのは最も現金盗難リスクが高まるシーンと言えるのです。

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おススメの対応策3点とオマケ情報

さて、前のページまでで、現金を引き出した直後とその後現金を持ったまま移動する危険性をご理解いただけたのではないでしょうか?

 

最後のこのページでは現金をまったく持ち歩かないという選択肢がない場合(ほとんどの方がそうだと思いますが)、少しでも安全に現金を運ぶ三つの方法をお伝えしたいと思います。

その三つとはずばり

 

1)必要以上の現金を持ち歩かない

2)盗まれてもよい金額をぼろい財布に入れて出しやすい場所に入れておく

(持ち運ぶ現金を「分散」する/見せ金を用意しておく)

3)ATMや両替所に立ち寄った後は面倒でも一旦ホテルや出張先の事務所等に入る

です。

 

1)は言わずもがなですね。時計や装飾品なども華美になると悪目立ちしますので、こちらも併せてご注意ください。

 

2)について、金銭目的の強盗であれば、金が手に入ればできるだけ手っ取り早く逃げたいという犯人がほとんどです。つまり「まぁこんだけあればしょうがないか(もっと金持ってないのか!?と追及するより逃げよう)」と思われそうな金額を別口で用意し、いざというときはそれを渡して逃げてもらうというのも命を守るためには重要です。具体的には現地の人が現地食で2週間くらい食べられる金額があれば、それ以上深追いしてこないように誘導できそうです。地域にもよりますが例えば3000円前後であれば、盗まれてもまぁしょうがない(より深刻な被害を受けるよりはまし)、と諦められるのではないでしょうか。

 

3)は本当に面倒ですが、前のページでご説明した通り、外国人がATMや両替所に行くシーンは目立ちます。お金をおろしたな、と思われる場所やそのままショッピング、レストランに向かう途中が最も現金盗難リスクが高まっています。そのため、面倒でも、ATMや両替所からレストラン・ショッピングモールに直行するのではなく、「必要以上の金額を持ち歩いていないな」と思われるよう、宿泊先や現地拠点(事務所)等に立ち寄ることをおススメします。

 

この三つを常に意識して備えておくだけでも、大量の現金盗難という被害は防げるはずです。

 

また、企業のみなさんなど、現地法人、現地拠点で少しまとまったお金を銀行等から輸送する場合、現地の人たちに現金輸送スケジュールを知られないようにするテクニックもあります。

 

それは

・輸送時間や出発時間を本当の時間ではなく、例えば一時間ずつずらして電話で連絡する

・現金の金額(特にお金の単位)を暗号で連絡する

といった工夫です。

 

具体的には11時に事務所を出発して、銀行で100万トルコリラをおろし、12時過ぎには戻ってくる場合。

 

「12時に事務所を出発して、100本(⇒もし可能なら日本語で「ひゃっぽん」)ライラック(⇒リラの花)詰んできます。13時くらいには戻ってきます(銀行という言葉は使わないかこちらも隠語に変換する)」

 

といった具合で連絡しあえばこの約束事を知っている人以外には現金輸送の正確なスケジュールや金額を知ることはできません。

なんとも子供だましのようですが、こういった情報が事務所内外で漏れることも現金盗難リスクを高めると考えられる場合には、ちょっと使ってみてください。

この項終わり