テロや襲撃以上に身近なリスクに備えていますか?
当サイトでは日頃テロや襲撃、もしくは銃器などを用いた凶悪犯罪を主たるテーマに取り上げています。こうした事態は日本ではほとんど経験することがなく、大多数の日本人/日本企業の皆さんがイメージしづらいはずです。このため、安全対策も後手に回ることが多く、準備が十分でないケースも散見されます。
このため、当サイトでは、海外では日本と違いテロや襲撃、凶悪犯罪のリスクがあること、そしてその対策方法についてわかりやすく解説するように心がけています。他方で、我々がおろそかにしているのは日本でも海外でも共通して発生するリスク。例えば火災や地震です。こうしたリスクは人間が意図的に暴力行為を行わずとも発生しうるため、日本ではテロや襲撃と比して圧倒的に発生頻度が高いです。
直近多く発生しているアメリカでの銃撃事案やテロなどで「〇人死亡!」といったインパクトのある見出しがつくニュースにつられ海外での安全対策といえばテロ、襲撃、拳銃強盗と思いがちですが、日本でも身近なリスクも忘れずに備える必要があるのです。
海外の事務所や拠点で火災や地震被害に遭うとどうなる?
日本では火災や地震による被害はある程度想定されているはずです。消防法により、オフィスビルでは消火器の設置や避難経路の確保が義務付けられています。時には以下のように避難経路や非常口が荷物でふさがってしまっているシーンを見かけることがあります。この場合はビルの管理会社が巡回点検の際、テナントに改善指導を行うように義務付けられています。
地震については皆さんもご存じの通り、過去の大きな地震の教訓を踏まえて、保育園や小学校のころから繰り返し避難訓練がなされています。また、いわゆる「帰宅難民」の対応も進んでいます。具体的には都心のビルや学校では帰れなくなった無関係の人にも提供できる量の食料や水、毛布などを用意するといった取り組みも始まっています。
ただ、これはあくまで日本のお話。過去の火災や地震の教訓を踏まえ、法律を整え、官民、個人をあげて対策を進めているのが日本という国。たとえ火災や地震が発生しても、その場その場で対応しているだけの国は実はたくさんあるのです。
消防車も救急車もなかなか来ない
建物の中に消火器がない
避難経路には書類や荷物が山積み
そういった国では日本のようなスムーズな消火活動や避難は期待できません。まして途上国で長持ちする食料や水、簡易トイレなどまで用意している事務所はあるでしょうか?日本でなぜこのようなものを用意しているか、を考えれば海外で火災や地震の被害に遭遇した時にどのような結果となるのか皆さんは想像に難くないはずです。
具体的な事例を取り上げましょう。2019年南アジアのバングラデシュという国の首都ダッカで発生したビル火災では避難経路の扉にカギがかかっていたり、消火器やスプリンクラーがそもそも設置されていなかったり、といった事情も相まって25名が死亡、70名が負傷しています。実はこのビルには日本企業も入居していましたが、幸いにして関係者が不在だったため被害は発生していません。
避難経路確保、避難訓練は低コスト、効果大!
海外で火災や地震の被害に遭うと、日本のオフィスビルとは違うレベルの被害が発生しうることがご理解いただけましたでしょうか?
すでに海外拠点をお持ちの企業・団体の方はまず日本と同程度の消火器が設置されているか、避難経路が確保されているか、など確認してみてはいかがでしょうか?テロや襲撃対策のために強固な壁や屈強な警備員を配置にコストをかけていたとしても、火災や地震で逃げ遅れ犠牲者が出てしまっては元も子もありません。特に避難経路の確保は、万が一襲撃犯がオフィスに押し寄せた際にも関係者が避難できるかどうかにも影響します。
海外拠点では人も少なく、「総務部」に相当する部署を充実させることも難しいと思います。日本と違い、ビル管理会社や地域の警察・消防の指導が頻繁に入ることもないはずです。ですので、忙しさにかまけて日本のようにオフィスの整理整頓が後回しになり、結果的に避難経路がふさがってしまっていないでしょうか?避難経路の確保は初期投資がほぼゼロです。火災や地震等、万が一の襲撃に備えた関係者の安全確保策として避難経路の再確認をご提案します。
加えて当サイトでおススメしたいのは日本式の定期的な「避難訓練」の実施です。海外拠点では忙しさや日本のような厳しい法規制がないため、定期的な避難訓練は自分たちで企画、実行しなければならないと思います。しかしながら、年に一度避難訓練を行うだけで、海外拠点で働くすべての方の安全に大きく寄与します。
火災であれ、地震であれ、突然の侵入者であれ、緊急事態が発生した際にパニックにならない人はいません。パニックになった状態で、これまで一度も練習したことがない避難をスムーズにできるでしょうか?初期消火やけが人の救助、地元警察や警備会社への応援要請、本部への緊急連絡は?
パニックにならないことが不可避なのであれば、せめて平常時、冷静な状態で最低限の練習をしておくことに意味があるはずです。日本人はもちろん、海外進出先で雇用された方も一緒に避難訓練することで、企業・団体としての「安全配慮義務」を果たすこともできるはずです。
さらに強調したいのは、避難訓練に必要なコストがほぼゼロであるということ。避難経路の確保と同様、人手を増やす必要もなければ設備投資を行う必要もありません。一度、シナリオを描いて訓練すれば、来年も再来年も、ほんの少しのアレンジで訓練ができるため運営維持管理費なども実質的にはゼロです。安全対策にはお金がかかるという先入観をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、まずはコストをかけずにできることもある、ということをご理解いただければ幸いです。
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