安全管理担当者が最初に覚えるべき二つのこと

この記事のURLをコピーする

安全管理担当者に指名されたら

新型コロナウイルス感染症の影響は依然続いていますが、各国の出入国規制はどんどんと撤廃されています。日本政府も9月7日からはワクチン接種者に限り、海外駐在や出張先から日本へ戻る際の出発前検査を不要とする方針を示しました。経済界からは入出国の事実上のハードルの一つとして批判されていた外国での出発前検査が緩和されることによりいよいよ海外事業展開の再開、規模拡大が現実的になってきたといえるかと思います。

他方で、2020年以降約3年近くにわたって海外への人の出入りが縮小していたことも事実。数年前までは海外に渡航される方々の工夫、ノウハウが引き継がれていたかもしれませんが、それが一時断絶している面は否めません。加えてまたコロナ禍やウクライナ危機を経て改めて各企業・団体内で海外に従業員・関係者を派遣する際の安全対策や健康管理体制を強化しようという動きも強化されていると聞きます。

海外に長く進出している企業には安全管理を担当する部署もしくは担当者の方がいらっしゃるはずです。また、海外の事務所や支社があるならば、そういった拠点にも日々の安全管理や緊急時の対応を担当される方がいらっしゃるかもしれませんね。もしそういった担当者がいないのであればーーーたとえ外部のセキュリティコンサルタントと契約していたとしてもーー今すぐ担当者を置くことをおススメします。そういった外部のセキュリティコンサルタントはアドバイスをくれたとしても最後の決断(退避するか否か、死傷者が出てしまった際の責任分担や 事業継続可否等)は皆さんの会社で行わなければならないからです。

 

さて、コロナ禍を経て新たにいわゆる「安全対策担当者」に指名されたとして、皆さんはスムーズに業務に着手できるでしょうか?特に過去2-3年の実務例が限られていますので、参考にできる社内マニュアル、虎の巻などがあまりないかもしれません。もしコロナ禍を経て新たに「安全対策担当者」が任命された場合、そしてそれが皆さんだった場合そもそも実務の参考になる先例がほぼない状態のはず。こうなってしまうと、実務担当者としては困ってしまいますよね。

 

ということで、今回は人事異動の結果、安全対策を担う部署に異動された方がスムーズに業務に取り掛かれるようヒントをお伝えしましょう。ズバリ「安全管理担当者が最初に覚えるべきたった二つのこと」。一般的な企業では、経験者が少なくまた何をやったらよいのんかよくわからない安全管理業務ですが、最初に覚えることは二つだけ。

 

この二つさえ覚えてしまえば、途方に暮れることはなくなります!

途方に暮れるの図・・・。二つだけ覚えればこんなことにはなりません

 

海外安全メールマガジン登録

現時点で海外に関係者が何人いるのか?

最初に覚えておくべきことは、そもそも自分が安全管理を任されている人数が何人なのか、ということ。

 

何人を守らなければいけないのかがわかっていなければ、何をやればいいのか以前の問題です。誰を守らなければいけないのかがわかって初めて「何をやればいいか」を考えることができるのです。つまり、その時点で自社/自団体の関係者何人が海外にいるのかを把握する=誰を守る必要があるか自覚することが第一歩。

 

これは安全管理というよりもむしろ労務管理の一環です。海外のどの国に何人長期駐在者がいるのか、何人が海外に出張しているのか?できれば安全管理を担う部門(総務部や人事部、海外事業部等でしょうか)が一元的に把握しておくことが望ましいでしょう。

万が一、海外事業の展開先でテロや大規模な自然災害等が発生したというニュースを把握しても、そこに何人が駐在・出張しているかわからなければ対応など取れませんよね。人数が多ければ当然テロや犯罪、自然災害の被害に遭う確率が高くなりますし、万が一国外に避難するといった事態になった際には航空券や国外の宿泊先の確保等対応すべき項目だって増えるのです。

 

ということで、安全管理担当になった方が最初に覚えるべきことは、「海外滞在中の従業員/関係者の人数」なのです。

 

理想的には国・地域ごとの緊急連絡網が整備されているとよいですが、人数把握の方が優先ですのでこちらはまた別の機会に。ご関心ある方はこちらの記事(「連絡網更新を止めるな!」)もお読みください。

 

海外安全セミナー

自社/自団体の海外事業国の主要な地名を覚える

 

さて、海外にいる自社/自団体の関係者の人数把握の重要性を覚えていただけましたでしょうか?次に覚えていただくのは何でしょうか?

 

アルカイダやISIS等国際テロ組織の最新動向?

各国の警察や軍の実力?

海外で使われている武器の種類や実弾の威力?

各国の政治不安定度とその理由?

 

もちろん、こうした情報もいずれは安全管理担当者として覚えていただくに越したことはありません。がこういう情報は二の次、三の次です。人数の次に大切なのは皆さんの関係者が多く滞在する都市や頻繁に訪問する都市の名前です。

たとえ関係者が滞在・出張している国であっても、大都市から遠く離れた地方部での地元部族と治安当局との衝にはそこまで警戒する必要はありません。また、関係者が滅多に(ほぼ絶対に)行かない都市や地域での凶悪犯罪にもいちいち反応する必要はありません。この辺りまで日々チェックしていては、他の国の安全管理業務すらできなくなってしまいます。

 

自社/自団体の関係者が本当に危険にさらされているか、気にすべきは関係者が多く滞在する都市や頻繁に訪問する都市で発生したテロや凶悪犯罪、もしくは大規模な政治デモ、自然災害などです。

 

インドネシアであればジャカルタやスラバヤ、マカッサル等主要都市や関係する工場や農場の所在地。メキシコであればメキシコシティ、グアダラハラ、レオン、ティフアナ等の大都市に加えてアカプルコやカンクンといったリゾート地。

 

こうした関係者が滞在している都市の名前と位置関係から覚えるようにしてください。ここを覚えていただければ海外事業展開中の国・地域での事件すべてに神経をすり減らす必要がなくなるのです。

 

 

ということで、海外事業の安全管理を初めて担当される方にまず覚えていただきたいのは次の二つでした。

1)海外に滞在中の自社・自団体の関係者数、

2)自社・自団体の関係者が駐在・出張している都市や場所の名前と位置関係

 

この項終わり