灰色のサイは何頭いる?

この記事のURLをコピーする

「灰色のサイ」はまだまだいる

新型コロナウイルスは一部の専門家の間で、その発生可能性、またパンデミックの危険性が指摘されていたにも関わらず、世界全体を巻き込んだ大騒動になるまで見過ごされてきた「灰色のサイ」でした。日本政府外務省が2020年6月時点で全世界のほとんどの国・地域に対し「感染症危険情報レベル3(渡航中止勧告)」を適用する事態は当の外務省ですら想定していなかったのではないかと思います。

 

desease-risk-level

 

しかしながら、「灰色のサイ」は新型コロナウイルス感染症の一頭しかいないわけでは決してありません。むしろ、その反対にかなりの数の「灰色のサイ」がいると考えた方がよいでしょう。

もう一度「灰色のサイ」の定義を振り返ってみましょう。「将来大きな問題を引き起こす可能性が高いにもかかわらず、その時点で軽視されがちな潜在的リスク」。

みなさんの事業にも大きく影響しうるリスクがいくつか思い浮かぶのではないでしょうか?理屈の上ではリスクではあるけど、まさかそんなことが本当に起こるわけないし、杞憂でしょ!?とお考えですか?新型コロナウイルス感染症で、信じられない規模の経済封鎖、都市封鎖が起こった直後です。もし、「灰色のサイ」を想定するならばそれは今なのではないでしょうか?

 

例えば尾崎が想定しているのは以下のようなリスク。いずれもそう簡単に起こらないとは思いますが、実際問題過去に発生したことがわかっているリスクです。これまで皆さんご自身が直接影響を受けていなくとも、人類の歴史上間違いなく影響を受けたことがあるリスク、もしくは他の企業・団体が甚大な影響を被った記録が残っているリスクは確実に存在しているはずです。

 

もし、進出先の長期政権が急速に崩壊したら・・・(『アラブの春』という言葉はもう死語でしょうか??)

もし、大国同士の戦争が世界大戦に発展したら・・・(過去に二回も起こっています)

もし、先進国のどこかで「革命」が起こったら・・・(フランス革命は絵画や演劇等の格好のテーマです)

もし、急速な気候変動により酷暑や氷河期が訪れたら・・・(数万年単位の気候変動も研究されています)

もし、隕石が地球に衝突したら・・・(恐竜が絶滅した背景の仮説の一つであることはよく知られています)

もし、大量の顧客情報漏れや長期のシステムダウンが発生したら・・・(日本の超大企業が何社もトラブっています)

 

prise-de -la-Bastille
今生きている我々は経験していなくても、芸術等に過去の教訓が残っているかもしれません(「バスティーユ襲撃」ジャン・ピエール・ウエル)

 

「灰色のサイ」に備えていても、何事もおこらなければその備えは無駄になるかもしれません。しかし、今回の新型コロナウイルス感染症のように、いざリスクが現実のものとなり、大勢が影響を受けた時、多少なりとも備えがあり対処できる人や組織とそうでない人や組織の間には厳然たる差が生じるに違いありません。まずは影響を受けかねないリスクを想像してみることが大事なのではないでしょうか?

 

 

もう一つ金融の世界の格言をご紹介してこの項を終わります。投資の世界では名高いウォーレン・バフェット氏の言葉です。

「Only when the tide goes out do you discover who’s been swimming naked.」

(潮が引いた時、初めて誰が裸で泳いでいたのかがわかる)

危機的状況が何もなければ誰が/どの組織がリスクに対して無防備なのかはわかりません。しかしながら、いざ危機が発生した場合には、リスクに対して備えができている人は一目でわかるのです。

 

この項終わり